○ 学習指導案    小学校第5学年 「 国語科 」


1  単元名 「森林早見図をつくろう」 (平成19年10月実施,38名)
        〜「森林のおくりもの」パワーアップ大作戦!〜

授業実践者 : T1坂元 俊文  T2中島正敏 

2 単元とその指導について

  本学級では、9割を超える児童が図書の本を読むことを好んでいる。また、読み取ったことを図や表、絵などに表現する図鑑づくりやパンフレットづくりについては、7割を超える児童が楽しいと感じている。しかし、これまでの説明的文章の学習においては、何が書かれてあるかといった内容を読む学習を行ってきており、どのように書かれているかといった書きぶりに目をむけて、表現や論の展開を吟味する学習には慣れていない。文章から求められた情報を読み取る力の個人差は大きく、課題解決のために長い時間、文章に向き合えない児童や文章量の多さに抵抗を感じる児童も見受けられる。

  「おくりもの」という言葉をキーワードに全文を通読し、児童の既知の事実や事例を関連付けながら森林をとらえ、環境問題に対しての新しい認識をもつことができる教材である。掛け離れたように思える人間の生活や命までもが森林によって支えられていることが、多様な事例とその巧みな論の展開から納得させられる。その一方で事例が多い上に、事例相互の関係や事例とその働きの記述が省かれているところがある。また、序論・本論を受けての結論としての筆者の主張など、説明文の論の展開としては、筆者の考えが唐突に感じられる部分があることも否めない。

  どんな森林の「おくりもの」の事例が、どのようなつながりで書かれているかがよく分かるように、叙述を基に「森林早見図」をつくらせていく。サイドライン法や付箋紙による操作活動、「書く活動」等を取り入れながら、なぜ筆者がこのような事例をあげたのか、事例やその展開の効果を考えさせる。単元に入るまでに環境問題に関する話やクイズを行い、基本的な環境問題に関する知識をもたせ、認識を深める伏線としたい。また、書き方や図の意味を理解させるために、プリント学習を行い、図式化することがが効果的な手段となるようにしておきたい。でき上がった「森林早見図」は、校内LANによって、パソコンを通じて、全校児童が閲覧できるようにし、活動意欲を喚起したい。

3 単元の目標

  「森林早見図」づくりをしながら、筆者のものの見方、考え方がどのように述べられているか、叙述を基に読み取り、それに対する自分の考えを持てるようにする。

4 単元の計画 (全11時間)

  1 「森林早見図」をつくる単元の活動を見通し、学習課題をもつ ・・・・1時間
  2 木材を利用した「おくりもの」について「森林早見図」をつくる  ・・・・3時間(本時4/11時間目)
  3 「別のおくりもの」につ いて「森林早見図」をつく る        ・・・・2時間
  4 「おくりもの」と題名を付けた筆者の意図を話し合う       ・・・・1時間
  5 他の図書を読み、「森林早見図」をパワーアップす る      ・・・・3時間
  6 単元の学習を振り返り、今後の読書活動を見通す        ・・・・1時間

5 本時の学習指導 (4/11時間目)

 (1) 目標

○ 
  紙と火の「おくりもの」としてあげられた事例の違いやつながりを読み取りながら、筆者の事例のあげ方の特徴やその意図をとらえることできる。
(判定基準・・A十分達成 Bおおむね達成  ●不十分な児童への支援)
過程 学習活動 ○指導    *評価
T1 T2
導入 1 前時までの学習を想起し、本時のめあてをもつ。 ○本時の学習活動に意欲と見通しをもたせるために、「森林早見図」づくりに貢献した「読み」や発言を児童名をあげながら紹介する。 ○これまでの学習でできた「森林早見図」をプロジェクターで提示する。
◎紙と火の「おくりもの」のつながりがよく分かるような「森林早見図」をつくろう。
展開 2 紙と火の「おくりもの」の関連が分かるように早見図をつくる。
(1)
紙の「おくりもの」の事例を整理する。
(2)
火の「おくりもの」の事例を整理する
【授業の様子@】
 


【授業の様子A】
○事前に抜き出させておいた「おくりもの」を発表させ、目に見える生活品と目に見えない紙の働きや火の役割として表現されている語句の全部を確認できるようにする。

○事例を書いたカードを黒板に貼って整理したり、付箋紙の操作をさせたりすることで、事例とその働き、事例としてあげている語句の概念等がとらえられるようにする。

* 事例を類別したりつなげたりしながら並べている。
【評価規準ウ:発言 ワークシート】
A 事例をそこに位置付ける理由を明確にしながら並べている。
B 縦の語句のつながりを考えて並べている。
● 上位概念の語句を先に選んだり、対や仲間になる語句をまとめたりするように促す。
○白紙のカードを貼ることで、紙の働きや紙製品が省略されていることに気付けるようにする。また、「炭やまき」の位置を問うことで、森林と火の間にあるべき「森林」から「火」の間にあるべき記述の省略に気付かせていく。
○全体で早見図を確認する際は、必要に応じて、児童役になり、事例の位置等に対する質問をしたり、比較させるために違う事例の位置付けをした早見図を出したりする。
3 完成した森林早見図を見て気付いたことや思ったことを書き、発表する.

【期待する事例の着眼点】
・事例の数の多さ
・事例の種類の多さ
・事例のつながりの長さ
・木材、紙、火の3つの事例
 の違い等
【授業の様子B】
○「木材からできた紙の事例」「木材からできた炭やまきから出る火によってできた事例」に加え、事前に学習した「木材の事例」も提示し、比較させることで、森林に近い事例から遠い事例へと順序よく説明している筆者の意図を読み取れるようにする。

* 事例のあげ方の特徴やそれに対する自分の考えを表現している。【評価規準イ:ワークシート 発言】
A 筆者の事例の意図やその効果について書いたり話したりしている。
B 事例のあげ方の特徴について書いたり話したりしている。
● 板書の早見図を基に、事例の数や種類、事例の違いに 着目させる。
○早見図の視覚的な理解の助けを借りながら、森林から事例が遠くなっていることに気付かせ、なぜそのように書いたのか筆者の意図を探れるようにする。
○事例の特徴に気付かせるために、必要に応じT. 1の発問に対し、児童役になり、事例のあげ方についての発言をする。
終末 4 今後の学習を見通す。 ○本論後半の「別のおくりもの」も早見図に位置付けていくことを確認する。 ○「別の」の意味を意識させるために、児童役になって質問する。
※ 資料等
指導案      
事前の学習プリント 問題1  問題2 

6 児童・生徒の反応

 
森林早見図を見て気付いたこと・思ったこと
 
 事前学習の成果もあって、付箋紙はうまく操作できていた。森林と火の間にあるべき、「木材」や「炭やまき」が省かれた表現にも気付いていた。
 事例の多さや種類、事例のつながりに気付いた児童は多かった。しかし、本時では、3つの事例の違いと筆者の意図までは時間がなくて迫ることができなかった。
 書き方の特徴について気付きを表現する児童よりも、森林の価値の大きさに再認識した内容面についての気付きを表現する児童が多かった。

7 授業を終えて

 早見図を作る表現活動は児童が意欲的に取り組んだ。書かれている内容やそのつながりを読み取らせる上で非常に効果があった。また、事例を取り出す作業は、文章全体の構成を読んだり、おおまかな内容をとらえたりするのにも有効なことが分かった。
 表現・形式面における筆者の意図や工夫を問う発問は、内容面の問いに比べ児童の反応がうすかった。意見文や説明文を書く授業とも関連させながら、分かりやすい文章の書き方の視点を獲得させていくことも必要だと考える。
 筆者の書きぶりに対しての気付きを出させるためには、もっと児童の意識を焦点化した補助発問が必要であった。また、表現の工夫や効果の気付いてはいても、どう言えばいいのか適切な言葉が出てこない児童もいる。発言に導くための手だてや言葉かけを検討したい。