○ 学習指導案    小学校第4学年 「 算数科 」


1  単元名 「広さを調べよう」 (平成19年10月実施,32名)
        ~習熟度別少人数指導~

授業実践者:渡邊 英博

2 単元とその指導について

本単元では,測定の原理にも基づいて面積の概念の理解を図るととともに,単位㎠を導入し,長方形,正方形の面積公式についての指導を行う,いわば,面積の学習の基礎的・基本的事項を扱う単元である。
 児童はこれまでに,長さやかさ,重さなどの量の学習を通して,測定の原理や普遍単位の必要性について理解している。広さについては,1年の学習で,直接重ねて比較したり,方眼のます目の数を数えて比べたりするなど,素地的な経験を積んでいる。ここでは,そのような経験も想起させながら,面積の単位㎠も他の量の単位と同じ考え方で導かれることに気付かせることが大切である。
「広さ」という言葉は,日常生活で慣れ親しんでいる言葉であるが,「広さ(面積)」と「長さ」の混同も見られる。「運動場の広さ」といった場合,そのまま面積を意味するが,「広い川,広い道」というとき,これは川幅・道幅を指し,長さを表していることになる。そこで,面積を平面的な広がりを持つ量としてしっかりと理解させることが大切である。
 また,1㎠が何個分あるかという考えで面積をとらえたのち,公式という便利な道具があることを理解させることも大切なことである。つまり,長方形や正方形の面積を求めるには,単位正方形の個数を数える概念を拡張して,縦,横の長さを測りその数を掛け合わせることによって求積できることを乗法の意味に基づいて十分理解させる必要がある。
 さらに,計量する数値が大きくなりすぎる場合には,単位の大きさを変える必要性が出てくる。このようなアイデアも長さやかさの学習で経験していることであり,㎡や㎢の単位の意味と必要性についても十分抑えておくことが大切である。

算数の学習に意欲的に取り組む児童が多く,自分の考えを絵や図や数直線などを使って上手にまとめることができる。また,自分なりの考えを進んで発表したり,互いに教え合って問題を解決したりするペアで学習する姿も見られるようになっている。
児童は,少人数指導に対して,3年の頃の意識調査によると,「人数が少ない。自分のペースで学習できる。」ことや「人数が少ないと分かりやすい」等の理由から,好意的にとらえている。

児童は,「広さ」と「長さ」について混同していると思われるので,導入において,日常生活の場面を例に挙げながら,「広さ」が2次元の広がりをもつものということをつかませたい。日常生活の中で使われる「広さ」について,「○○の広さ」の○○に入る言葉をきっかけに話し合いをする。そして,広い,せまいという個人の感覚によって決まってしまいがちな場合,どのようにすれば広さを比べられるのかに目を向けさせたい。
 次に,既習内容である長さ,かさ,重さの学習を想起させ,個別単位の考えで,面積の大小比較をさせる。ここでは,具体的な操作などの活動を十分に行い,広さ(面積)の概念を養いたい。直接比較ができない場合を設定し,個別単位の必要性を感じさせる。しかし,単位が人により異なってしまうことやすき間ができてしまうことなどの不都合が生じてしまうことから,敷き詰める必要性に気付かせ,さらに普遍単位の必要性や有用性を認識させていく。いろいろな長方形や正方形を単位とする面積を敷き詰めることにより,いつでも敷き詰めることのできる1㎠の正方形を単位とするよさを理解できるようにさせたい。
 子どもにとって,面積の学習での最初のつまずきは,周りの長さが同じなら面積が同じであると考えたりその逆に考えたりすることである。そこで,周りの長さという数の計算で比べようとしたことを認めた上で,周りの長さでは比較できないことを実証することで知らせたい。
求積公式を導く段階では,図形の面積は,敷き詰めた単位の正方形の総数を求めればよいことから,正方形の個数を縦と横の個数の積で求めれば便利であることを理解させ,公式として,(長方形の面積)=(たて)×(横)の形にまとめる。面積と一つの辺の長さから,もう一つの辺の長さを求めたり,縦の長さを一定にしたときの横の長さと面積の変化の関係を調べたりして,公式の理解を深めたい。
 さらに,複合図形の面積を求める問題では,「かべの面積を求める」というテーマを設定し,身の回りのものの面積への意識を持たせたい。面積は,分割したり切ってつなげたりしてもその全体の大きさは変わらないという保存性や足したり引いたりできる性質がある。そのことを基に,長方形や正方形の形にすれば,公式を使って,どの複合図形の面積も求められることに気付かせたい。
基本的な面積の学習の後,大きな面積の単位の学習をする。ここでは,面積を表すには,対象によって適切な単位を用いる必要があることを,教室,市町村など,具体的な大きさの面積を求める活動を通して,気付かせる。単位の換算に偏らず,実際に教室などの面積を測ったり,学校の周りの1㎢の広さを提示したりして,具体的に量を表すことによって,実感を伴って理解させたい。

 単元におけるコンピュータの活用について

・既習事項の確認,及び問題把握のためにPowerPointを活用した。


3 単元の目標

○面積の概念や測定の意味について理解するとともに,長方形,正方形の求積方法を理解する。
  また,公式などを用いて面積を求めることができる。

4 単元の計画 (全10時間)

  • 1 広さの表し方・・・・2時間
  • 2 長方形と正方形の面積・・・・3時間
  • 3 大きな面積・・・・2時間
  • 4 まとめ・・・・3時間

5 本時の学習指導 (5/10) 場所:4年2組教室・学習室 時間:2校時

 (1) 目標

○ ア 複合図形を面積の求めやすい長方形や正方形に分割する方法や全体から引く方法などの求積
   方法を考えたり,複合図形の求積問題を作ったりすることができる。(数学的な考え方)
  イ 長方形,正方形の求積公式を使って,複合図形の面積を求めたり,問題づくりをしたりすることが
   できる。(数量や図形についての表現・処理)

 (2) 準備

プロジェクター,ノートパソコン

 (3) 展開

  ≪基礎コース≫
児童・生徒の学習活動
教師の指導・支援(※評価)
前時の学習を振り返る。
             PowetPoint資料1


長方形や正方形の面積は,公式で求められることを確認する。
本時の学習を知る。
学習のめあて
ドアをはぶいたかべの形の
面積の求め方を考えよう。
図形(かべ)の特徴を確認する。
               PowetPoint資料2  
面積を求める方法を考え,話し合う。 長方形や正方形の面積の公式を使うにはどこに補助線を引いたらいいか考えさせる。

  つまずいている児童には,公式が使える長方形や正方形がないか考えさせることにより,補助線を引く位置に気付かせる。
※場面をとらえて,自分の考えを持つことができたか。
考えを出し合う。
どこに補助線を引いたか,考え方を確認しながら進める。
※求積公式を使って複合図形の面積を求めることができたか。
どのやり方が1番いいか考える。
 
類似問題をする。 L字型の図形の面積を求めさせ,学習内容の習熟を図る。
本時のまとめをする。 いろいろな図形の面積も長方形や正方形の公式を使って求められることを確認する。
≪発展コース≫
児童・生徒の学習活動
教師の指導・支援(※評価)
前時の学習を振り返る。
             PowetPoint資料1


長方形や正方形の面積は,公式で求められることを確認する。
本時の学習を知る。
学習のめあて
ドアをはぶいたかべの形の
面積の求め方を考えよう。
10㎝×10㎝の紙と4㎝×6㎝のドアを,一人ひとりに配り,自分だったらどこにドアをつけるか考えさせる。
               PowetPoint資料3 どんな形になったか,友だちのかべの形を知り,それぞれの図形(かべ)の特徴を確認する。 
面積を求める方法を考え,話し合う。 今まで学習したこと(長方形や正方形の求積公式など)が使えないか考えさせ,求め方の見通しを持たせる。

  つまずいている児童には,公式が使える長方形や正方形がないか,補助線をどこに引くかなど助言する。
※場面をとらえて,自分の考えを持つことができたか。
考えを出し合う。
どこに補助線を引いたか,考え方を確認しながら進める。
※求積公式を使って複合図形の面積を求めることができたか。
どのやり方が1番いいか考える。
 
練習問題をする。 6×9-3×5で面積が求められる4つの図形(全国学力調査問題より)を提示し,分かりやすいやり方で面積を求めさせる。
本時のまとめをする。 いろいろな図形の面積も長方形や正方形の公式を使って求められることを確認する。
※ 資料等
指導案【PDF】 学習プリントA【WORD 学習プリントB【WORD】    

6 児童・生徒の反応

  • ○基礎コースでは,しっかりと時間をとり既習内容の復習を行ったことで,長方形や正方形の面積の公式を使って問題を解決しようと取り組んでいました。何とか自分なりに考えを出せ,発言できたことに満足していました。
  • ○発展コースでは,それぞれで作った複合図形が,最終的にはどれも同じ面積になるということを発見することができました。課題提示の工夫から全体から引いて求めるやり方を容易に考え付くことができていました。

7 授業を終えて

  • ○考える楽しさを味わわせるために,習熟度別学習を取り入れたが,基礎コース・発展コースともに児童の理解に合わせた問題解決学習ができ,一人ひとりの達成感につながったと思います。特に基礎コースでは普段発言を控えていた児童が積極的に発言し,自信を持つことができたことは大きな収穫ではないかと思います。一人ひとりにやる気と自信を与えることが習熟度別学習の大きなメリットだと感じています。
  • ○4年生の面積の学習は,上学年の他図形の面積や体積の学習につながる重要な単元であるので,単元の習熟の過程で学級習熟度別学習を取り入れ,体験的・作業的な算数的活動を通じてじっくりと理解させることは,とても大切であると思います。