○ 学習指導案   小学校第3学年「図画工作科」


1 題材名 「カラフル○○ぼうし」 (2007年10月実施,33名)

授業実践者:西岡 速人

2 題材とその指導について

  色画用紙は着色されているため、華やかさを感じるものである。本題材で使う両面色違い造形紙(以下造形紙と略す)は一般的に使われる色画用紙とは違い、厚さもあり、折り曲げたり立体工作をしたりと色合いの違いを生かした表現活動をすることに適している。帽子をつくる活動は、単なる工作ではなく、自分自身が身に付けるということを考えながらの活動となり、自分に合うように大きさや形を変更したり、装飾を考えたりしながらつくり出せる題材である。限られた材料の中で、形や飾りを考え表現させることは、試行錯誤を繰り返しながら制作させる意味でも意義深い。そこで、本題材は、用意した造形紙6枚セットを材料として用意し、折る、切る、つなげる等の活動を設定する。さらに、造形紙をねじる、曲げる、筒状に丸める、折り目を付けて折る等の造形紙の加工する要素に気付かせ発想を広げる力をはぐくみたい。接着にはホッチキスやのりを効果的に使うことで思いを広げ、他の材料も補助的に取り入れながら自分の表現したい作品になるように仕上げさせていく。
 ほとんどの児童が図工の時間を楽しみにしており、絵を描くことや粘土でつくることに興味をもっていて、1学期にも紙コップを利用した紙工作の経験もある。一般的にこの時期の子どもたちは、身近にある材料の色や形などの特徴を基に、子どもらしい想像を広げ、楽しみなが活動する様子が見られると言われている。そこで、本題材では、硬さのある特徴を生かし、豊かな想像力や立体的な造形感覚を伸ばしたいと考えている。子どもたちにとって紙工作の経験はあるので、カラフルな造形紙を用意することで、子どもたちの制作する意欲を高めたい。のりによる接着にも慣れているが、立体的な制作活動になるため、ホッチキスも使用し、丁寧に工作していく能力も身に付けさせたい時期と考える。
 図画工作科では、材料を通して、子どもたちの感じる、気付くという感覚を鋭くすることが求められる。単に材料に出会うだけでなく、本題材の場合はどんな不思議な帽子をつくりたいかという自分の思いをもつことが大切である。また、材料の特徴に気付き、おもしろい形を見つけ、自分の作品へのこだわりをもたせたい。そこで、学習過程の中に、表現技能を高められるような場を設けることで、目標が達成できると考える。そのため、本題材では計画の第1次の各展開の中に「アイデアタイム」として設定していきたい。本題財では、以下のような時間になる。
□アイデアタイム… 造形紙の折り方や切り方、つなぎ方を確認し、自分の表したい帽子に近付くためにはどうしたらよいか考える時間
  本時の指導にあたっては、「導入」段階で造形紙のよさに気付かせ、いろいろな表現ができることに興味をもたせる。そして、「展開」段階では、活動の中で基本的な折り方や曲げ方を確認し、アイデアタイムを取り入れて子どもたちの思いを広げられるようにする。「まとめ」の段階では、今日の活動を振り返って、帽子の形のおもしろさに気付くような視点をもって感想を交流できるようにしていきたい。

授業の概要

 両面色違い造形紙(デザインペーパー)を利用し、折ったり切ったりしながらつなぎ合わせ、自分のイメージにあった帽子づくりをする授業です。本講座のテーマである「楽しさを実感できる授業」を目指すために、個性豊かな表現を導く表現技能の習得を図るような指導の手立てを提案しました。

3 題材の目標(◎)と評価規準(○)

造形紙による表現に興味をもち、帽子の形のおもしろさを考えながら組み合わせ、色や形の美しさを感じることを通して、つくり出す喜びを味わうことができる。
造形紙に興味をもち、自分の思いにあった帽子をつくっていく活動を楽しんでいる。
(造形への関心・意欲・態度)
造形紙を切ったいろいろな形を組み合わせながら、その形を生かしながら構成していくことができる。
(発想や構想の能力)
自分の表現意図に合わせて、造形紙を折ったり切ったり、貼ったりしながら制作することができる。
(創造的な技能)
造形紙のつなぎ方や切った形のおもしろさを見つけ、自分や友だちの作品のよさを考えながら、鑑賞することができる。(鑑賞の能力)

4 題材の計画 (全4時間)


主な学習活動

主な指導上の留意点と教師の働きかけ 具体的な評価基準 評価
資料








・造形紙を基にどんな帽子をつくりたいか思いをもつ。

・自分の思いにあった帽子を制作していく。

・友だちの活動を見て、作品のよさに気付く。

・造形紙の加工方法に興味をもたせる。

・アイデアタイムを通して、つくりたい飾りをつくる。

・友だちの作品のよさに気付かせ、自分のつくりたい帽子の思いを広げられるようにする。

観察、発言作品

観察、作品

作品

・作品発表会をする。(友だちの作品鑑賞)

・造形紙の組み合わせ方や切り方に着目できるように言葉をかけ、鑑賞させる。

発言、作品作品カード
準備するもの (児童)はさみ、のり、ホッチキス  (教師) デザインペーパー、鏡、ヘアピン

5 本時の学習指導 (1/4) 場所:3年2組教室 時間:2校時

 (1) 目標

 
 材料の造形紙を加工することに興味をもち、つくりたい帽子の形をつないでつくっていく活動を楽しもうとする。

 (2) 展開

児童・生徒の学習活動
教師の働きかけ(※評価)



今日の活動について知る。
帽子の王様(校長先生)の写真を見る。
画用紙や色画用紙で工作をした経験を発表する。
造形紙の特徴について感じたことを発表する。




造形紙による帽子の写真を見せて、材料の特徴に興味をもたせる。
使ったことのある経験などを聞き、造形紙の特徴に気付かせる。
参考作品を示し、加工方法に気付かせどんな活動ができそうか想起させる。




材料を基に活動する。
帽子の基本形を決めて形をつくる。
つなげながら形を考える。
形を考えながらつなげる。
帽子の飾りをつくる。
(学習のめあて)
○○できるカラフルぼうしの形をつくろう。







自分のつくりたいものを想像し、活動を楽しむことができるように、帽子の基本形や造形紙のつなぎ方、切り方について示す。
ホッチキスの使い方(針を打つ場所、打ち方)を確認し、表現したい思いを広げられるようにする。
造形紙を組み合わせながら表現する活動を楽しんでいるか。
(造形への関心・意欲・態度)
造形紙をいろいろな形に変形し、さまざまな形をつくりながら活動が進んでいる。
表現意図を確認し、他の組み合わせも進むように励ます。
造形紙を組み合わせながら、帽子の形を表している。
もっと違う表現はないか、友だちの表現にも気付かせる。
どんな形の帽子をつくるかアイデアが浮かばず、活動が進んでいない。
帽子の基本形を示し、造形紙につなげる飾りをつくる楽しさを知らせる。
  □アイデアタイム
 丈夫なつくりになっているか、他の切り方、つなぎ方などを考える。
・折り曲げて形をつくる。
・丸めて飾りをつくる。
提示した資料
 




アイデアタイムを基に造形紙の加工方法を考えさせ、さらに思いを広げて制作する楽しさに気付かせる。



今日の活動を振り返る。
友だちや自分の活動を見る。
どんな活動をしたか紹介する。
帽子をかぶってどこへ行きたいかを発表する。





造形紙の形やつなぎ方などに注目して友だちの活動を振り返ることができるように、鑑賞する視点を示す。
つくった思いや帽子の形の意味を説明できるように帽子を身に付ける場面を想定した質問をする。
次時の活動を知る。
活動を生かして、工夫してみたいことを発表する。
今日の活動を基に、付けたい飾りを確認し、次時への思いを広げさせる。
※ 資料等
学習指導案(評価規準) 学習指導案(評価規準) 学習カード

6 児童の活動

○児童の作品  (一部です。ごめんなさい。)
ちょっと早いクリスマスぼうし なぞなぞマジック天ねんぼうし
※1
星とハートの花たばぼうし だれでも女の子になれるぼうし
※2
カラフルマジックぼうし へんてこロボットねずみぼうし ヘルメット(?)ぼうし 空とぶようせいぼうし
 ※3
 (写真クリックすると大きな画像が開きます。)
○児童の学習カード(くふうしたところ)より
四角形に作って下をおらなきゃいけなかったところをくふうしました。「?」をつけてカラフルにしました。
(一部抜粋)【写真※1児童】
だれでも女の子になるように、くるくるのかみのけをつけました。はんたいほうこうに切っておりまげて、オレンジときいろを上手にくみあわせました。(一部抜粋)【写真※2児童】
にじをつくることができます。上のぶ分をとがらせるところがむずかしかったです。(一部抜粋)
【写真※3児童】

7 授業を終えて

研究授業では、あまり活動が進まなかったが、2時、3時目には思いを膨らませ帽子を完成させていた。
色画用紙をいろいろな形に加工することだけでなく、色合いにもこだわって制作していた。両面色違い画用紙での作品づくりであったので、もっと色の組み合わせにもこだわらせてよかった。
王様の帽子の(写真だけでなく)実物を子どもたちに見せ形に面白さに気付かせる方法もあった。本物のいろいろな帽子をもとにイメージを膨らませることも有効であると感じた。
アイデアタイムにより、子どもたちの色画用紙の加工表現方法も増えたが、もっと子どもたちの発見を引き出す取り組みにしていきたい。
アイデアタイムは単なる子どもたちの表現技能の能力を高める取り組みとならないようにしたい。創造的な技能を高めるために、どんな帽子をつくりたいかという思いと表現方法との結びつきを大事にできるような手立てをこれからも検討していきたい。