○ 学習指導案     小学校第2学年「生活科」


1  単元名 「つくるの大すきあそぶの大すき」 (平成19年10月実施,38名)
       

授業実践者:善 理右彦  
野口 麻由美

2 単元とその指導について

本単元は、学習指導要領の内容(6)を扱った学習で、子どもの身の回りの自然を利用したり、身近にある物を使ったりなどして、遊びをつくり出す楽しさや夢中になって遊ぶ楽しさを味わえるようにするものである。また、友達と一緒に遊ぶために遊び方を工夫したり、約束やルールを作ったりして、友達とよりよいかかわりがもてるようになることを目指している。
 本講座の学習では、身近にある遊びの素材として、傘袋を軸に活動を展開していく。単元の導入に当たり、膨らませた傘袋で自由に遊ぶ場を設定し、身近にある物(傘袋)の遊び道具としての可能性や素材の特性、友達と一緒に遊ぶ楽しさを全身で感じ取らせたい。そして、その楽しさを、意欲的に活動を継続していく原動力にするとともに、「身近にある物を使ってみんなで楽しく遊ぶ」という単元のめあてにつないでいきたい。また、活動でかかわる対象を絞り込むことにより、「工夫」を「対象そのものに対する工夫」と「あそび方(遊びのルール)に対する工夫」という2つの視点で焦点化し、活動の中で芽生える児童の様々な気付きを共通の関心事として交流させたい。さらに、見取りの視点を基に、遊びの中の試行錯誤の過程で芽生える児童の様々な気付きを大切にしながら評価・指導・支援していきたい。単元の終末では、自分の成長という視点で活動を振り返らせ、児童一人一人の工夫や成長を認め、賞賛し、次単元「北っこフェスタにさんかしよう」(1)への意欲につなぎたい。
※ (1) 保護者や地域の方を招き、学習発表の場として開かれる学校行事(お祭り)の名称。

本学級の児童は、1年生のとき「どんぐりまつり」の中で季節の自然の素材を使って遊んだり、こま作りや飾り作りを楽しんだりしている。また、国語科と関連した「うごくおもちゃづくり」では、身近にある物を活用し、おもちゃを作って遊ぶ経験をしている。学習に入ると、自分で考えたおもちゃ作りに向けて、積極的に材料を集め、時間を忘れて製作に没頭する姿が見られた。
本学級の児童に「工作(何かを作ること)は好きですか。」という質問に対して、全員が「大好き」若しくは「好き」と答えている。また、「自然や家にある材料でおもちゃや遊ぶものを作ったことがありますか。」という質問に対して、36名の児童が「ある」と答えた。「ある」と答えた児童が作ったものは、ストローロケット、車、船、くわがた、どんぐりロケット、トントンずもう等が多かった。さらに、「友だちと遊ぶことは好きですか」という質問に対して、ほぼ全員が「大好き」若しくは「好き」と答えている。身近にある物で工作をしたり友達と遊んだりすることは好きであるが、友達と協力しながら、遊ぶ物を作り上げたり遊び方を工夫してみんなで遊んだりした経験は多くないと考えられる。

3 単元の目標

    身近にあるものを使って遊んだり、遊ぶものを作ったりする活動を通して、遊びを工夫してみんなで楽
   しく遊ぶことができるようにする。 

4 単元の計画 (全10時間)

  • 1 傘袋で遊ぶ。・・・・2時間
  • 2 傘袋がもっと遠くまで飛ぶように工夫して遊ぶ。・・・・2時間
  • 3 傘袋を使った遊び(ゲーム)を考えて遊ぶ。・・・・5時間
  • 4 活動を振り返る。・・・・1時間

5 本時の学習指導 (3・4/10) 場所:体育館 時間:2校時

 (1) 目標

○ 身近にある物を使って、傘袋がよく飛ぶような工夫をしながら遊ぶことができる。
                                         (活動や体験についての思考・表現)

 (2) 展開

児童・生徒の学習活動
教師の指導・支援(※評価)
 前時の活動を振り返り、本時のめあてをつかむ。
           
T1  ワークシートの内容を紹介し、これまでの活動を振り返らせながら本時のめあてにつなぐ。 T2  ワークシートの内容を紹介し、これまでの活動を振り返らせながら本時のめあてにつなぐ。 
身近にある物(発砲トレー)を活用し、傘袋がもっとよく飛ぶような工夫をする。
 みつけよう、もっと よくとばす くふう!
   
     



「よく飛ぶ」ということをイメージさせる。
飛距離の目安になる物(コーンや線)を用意しておく。
一緒に遊びながら児童の思いやアイディアを理解し、実現できるように指導・支援する。

・ 遠くまで飛ぶ、すうっと飛ぶ等
安全に活動するための約束を確認する。 ・ 傘袋の先端に危険な物を付けないこと、  先端をとがらせないこと。
・ 製作の場所と試しに飛ばす場所の区別。
・ 試しに飛ばす時、
  見つけた工夫を出し合い、友達の作品やアイディアを参考にしながら工夫をして遊ぶ。     
   
「くらべよう」のカードを提示し、アイディアを発表させたり、友達の作品と自分の作品を見比べさせたりして、工夫や気付きを共有させる。
「くらべよう」のカードを提示し、児童の作品と教師の作品を飛ばして見せ、工夫の視点を持たせる。
児童の発言を工夫の観点ごとに整理しながら黒板に掲示する。
・羽 ・飛ばし方 ・おもりを付ける等
 教師の飛ばし比べを見て、気付いたことを基に、傘袋がさらによく飛ぶような工夫をする。   
   

主に1〜4班を評価・指導・支援する。
一緒に遊びながら児童の思いや気付きを見取り、工夫につなぐ指導・支援をする。

※ いろいろな方法を試しながら作ったり、 遊んだりすることができる。(1〜4班)

主に5〜8班を評価・指導・支援する。
T1の指導・支援の様子や児童の活動の進み具合を見て、指導・支援の必要な場や児童にかかわる
※ いろいろな方法を試しながら作ったり、 遊んだりすることができる。(5〜8班)
本時の活動を振り返り、見つけた工夫を発表し合う。
  
活動の始めと比べ、いろいろな工夫を見つけることができたことを称賛する。 ○  児童が見付けた工夫を観点(羽・飛ばし方等)ごとに整理しながら板書する。
※ 資料等 学習指導案単元計画 学習指導案本時         
 6 児童の反応
    ○ 児童が夢中になって活動する「遊び」の活動の中で気付きを広げ深める学習指導の在り方を
     具体化したいというねらいで実践した授業であった。「もっと遊びたい」という児童の思いにより沿
     い、工夫についての気付きを広げ深める2つの場を本時の活動に設定した。しかし、児童にとって
     「飛ばす楽しさ」といものは、「長時間飛ぶ」「面白い軌跡を描いて飛ぶ」「速く飛ぶ」「自分で飾っ
     たものを飛ばす」など、多様で柔軟なものであった。本授業は、「子どもにとって遊びとは何か」と
     いうことを自分に問い直すよい機会になったと思う。

7 授業を終えて

  • ○ 活動の途中で、クラス全体で気付きを広げ深める場として、「工夫を発表し合う場」と「工夫を
  •  比べる場」を設定した。児童は、それぞれの遊びに夢中なので、一人一人の活動の進み具合を
  •  よく把握し、タイミングよく気付きを広げ深める場を設定するようにしたい。
  • ○ 気付きを広げ深めさせる場の一斉指導の中で、お互いの工夫のよさに気付かせる手立てとし
  •  て「比べる」ということを意識させた。ばく然と比べさせるのではなく、「自分の傘袋と違うところを
  •  見つけよう。」というように、同じところや違いに着目させながら具体的視点を持たせて比べさせ
  •  ることが大切であると感じた。また、比べて気付いたことを観点ごとに整理して示すことは、様々
  •  な活動の段階の児童に活動の方向づけをする上で有効であったと考える。
  • ○ 傘袋を軸にして遊びに使う素材と遊びの内容を絞り込んで授業づくりをしたが、児童は、遊び
  •  の中でいろいろな「飛ばす楽しさ」を感じていたようである。「飾りを付けて飛ばそう」や「遠くまで
  •  とばそう」などのように、多様な活動のコース設定をすれば、さらに児童の思いを大切にしながら
  •  身近な物を使って遊ぶ楽しさを味わわせることができると思われる。