平成23年度佐賀県小・中学校学習状況調査Web報告書

Web報告書もくじⅣ 教師意識調査の結果の分析


  教師意識調査の結果の分析
 

                                                                                                教師意識調査の全てのグラフ
1 教科全般における指導法の工夫

発展的な課題については、児童生徒の実態や学習の内容に応じて適宜取り入れていくことで効果が上がると考えられる。
表現する活動については、「書いて表現する活動」と「発表や話し合いなどの表現活動」との調和を図り、両者の関連を図った指導を工夫することで効果が上がると考えられる。
単元の学習目標や評価規準を明確にした上で、その目標を達成するために必要な教材や指導計画に取り入れて指導を行っている教師の割合は高い。
 

この節では、
 ・ 理解が十分でない児童生徒への補充状況
 ・ 表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業
 ・ 身に付けさせたい力を意識した総合的な学習の時間の指導
 ・ 学習形態を工夫したメリハリのある授業
 ・ PDCAサイクルを踏まえた実践
の設問から、補充的指導、表現力の育成、総合的な学習の時間の指導、学習形態の工夫などの状況について分析する。

   
「理解が十分でない児童生徒に対し、授業の合間や放課後などに更に指導していますか」について
 
「多くの元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答をした小学校教師の割合は60.3%である。これに対し、同じ回答をした中学校教師の割合は27.3%であり、逆に「少しは行っている」「全く行っていない」と回答をした割合は54.2%と過半数を超えている。中学校は小学校に比べると、理解が十分でない児童生徒に対しての指導が十分でない傾向が見られる。[図1]

   

この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校では全ての教科において明らかな特徴は見られないが、中学校では、全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。これは、理解が十分でない児童生徒に対して、細やかな指導を行ってきたことの効果の表れと考えることができる。[図2-1][図2-2]
   
「発表や話し合い活動などを表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業を行っていますか」について
 
「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答をした小学校教師の割合は72.3%である。これに対し、同じ回答をした中学校教師の割合は37.8%であり、逆に「少しは行っている」「全く行っていない」と回答をした割合は38.9%となっている。中学校は小学校に比べると、発表や話し合い活動など、表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業への意識が低い傾向が見られる。[図3]

   

 

この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校では、全ての教科において明らかな特徴は見られないが、中学校では、全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。これは、自分の考えを表現させることで、考えたことを整理させたり共有化を図らせたりしてきた効果の表れと考えることができる。[図4-1][図4-2]
   
「総合的な学習の時間においては、児童生徒にどのような力を身に付けさせるのかを意識した指導を行っていますか」について
 
「行っている」「どちらかといえば行っている」と回答をした小学校教師の割合は93.5%である。同じ回答をした中学校教師の割合は84.3%である。小学校と中学校ともにほとんどの教師が、総合的な学習の時間においては、児童生徒にどのような力を身に付けさせるのかを意識して指導を行っていることが分かる。[図5]

   
この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校では明らかな特徴は見られないものの全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。中学校でも全ての教科においてAグループの平均正答率が高く、どの教科も10ポイントほど上回っている。[図6-1][図6-2]
   
「教師による指導を通して確実に学習内容を身に付けさせる場面とグループ活動やペア活動の形態を取り入れ、生徒の学び合い活動を通して学習内容を身に付けさせる場面を意識したメリハリのある授業を行っていますか」について
 
「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答をした小学校教師の割合は73.6%である。これに対し、同じ回答をした中学校教師の割合は48.5%であり、逆に「少しは行っている」「全く行っていない」と回答をした割合は28.6%となっている。中学校は小学校に比べると、教師による指導を通して確実に学習内容を身に付けさせる場面と、グループ活動やペア活動の形態を取り入れ、生徒の学び合い活動を通して学習内容を身に付けさせる場面を意識したメリハリのある授業への意識が低い傾向が見られる。[図7]
    
この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校では全ての教科において同程度、または、Aグループの平均正答率が高くなっている。中学校でも全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。特に、英語において顕著に表れている。[図8-1][図8-2]
   
「日常の授業や単元等の指導、学校における教育活動において、PDCAサイクル(計画→実施→評価→改善)を踏まえた実践を行っていますか」について
 
「行っている」「どちらかといえば行っている」と回答をした小学校教師の割合は82.3%である。これに対し、同じ回答をした中学校教師の割合は65.1%である。中学校は小学校に比べると、PDCAサイクルを踏まえた実践への意識が低い傾向が見られる。[図9]
   
この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校では全ての教科において明らかな特徴は見られないが、中学校では、全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。これは、計画的な実践と、取り組んだ結果からの改善を図ってきた効果の表れであると考える。[図10-1][図10-2]
   
これからの指導に向けて
 

学習活動の形態を工夫した授業
授業の中において、ペアでの活動やグループでの活動を設定し、児童生徒に自分の考えを伝える機会を与えることは、児童生徒一人一人に発言機会を保証することになるだけでなく、他者に伝えるために自分の考えを整理したり、他者と比べることで、考え方が広がったりする効果が期待でき、また、児童生徒の言語能力や表現力を高めていくことにもつながっていく。ただ、一方でその基盤となる基礎的・基本的な知識・技能の定着が低下するといった悪影響も考えられる。そのため、知識や技能を習得させる際に教師主導による学習活動の形態をとったり、知識や技能を活用させる際にお互いの考えを伝え合う学習活動の形態をとったりするなど、授業の目的や学習内容に応じて、より効果を上げるための教師側の授業の進め方の工夫が求められる。


身に付けさせたい力を意識した総合的な学習の時間における指導
今回の調査結果から、総合的な学習の時間において、身に付けさせたい力を意識した指導を行うことによって、児童生徒の教科における学力の向上にも、よい影響を与えていることを確認することができた。学習指導要領において、総合的な学習の時間については、各教科等を横断する課題について問題解決や探究的な活動を行うことにより、児童生徒の思考力・判断力・表現力を育むとともに、各教科における基礎的・基本的な知識・技能の習得にも資するなど教科と一体となった指導が求められている。今後も、総合的な学習の時間については、これらのことを各学校や各教師が意図しつつ、指導計画や学習内容を考えながら取組の充実を図っていくことが大切である。中央教育審議会の答申(平成20年1月17日) [※1]においても、総合的な学習の時間の学校間、学校段階間の取組の実態に差があることを課題としており、学校としてのカリキュラムマネジメント能力の向上が求められている。学習指導要領の改訂に伴い、総合的な学習の時間の縮減はあるもののその重要性については、更に強調されることとなる。各学校におけるカリキュラムマネジメント能力の向上が大いに期待されるところである。

※1 中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校学習指導要領の改善について」(答申)

    平成20年1月17日 ⑯総合的な学習の時間(130ページ~132ページ)

    http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2009/05/12/1216828_1.pdf



最終更新日: 2011-10-07