平成23年度佐賀県小・中学校学習状況調査Web報告書

Web報告書もくじ>Ⅰ 調査の概要

 

Ⅰ 調査の概要

調査の趣旨
 

 

① 小学校及び中学校学習指導要領に示されている目標や内容の実現状況を把握する。
② 各市町教育委員会や指導を担当する教師が、児童生徒一人一人の学習状況について実態を把握する。
③ 児童生徒の学習に対する意識や態度及び生活習慣、教師の指導方法などについて実態を把握する。
④ これらの調査結果を活用することにより、各学校が、授業における指導方法や学校、家庭、地域における学習環境の改善に役立てる。
以上のことを目的として、県全体での児童生徒への全数調査により、教科に関する調査と質問紙による意識調査を実施する。併せて、対象学年・対象教科を指導する教職員へのWeb上での意識調査を実施する。


調査の対象

 

(1)調査対象

 

[児童生徒]

県内の公立小学校第5・6学年の児童全員、公立中学校第1・2・3学年の生徒全員を対象とする。県立中学校及び特別支援学校の小学部・中学部に在籍する児童生徒も対象とする。ただし、特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級に在籍している児童生徒の中で、対象教科に係る当該学年の学習指導要領に基づく目標・内容等の指導を受けていない児童生徒については対象としない。

[教職員]

上記の調査対象児童生徒のうち、平成22年度に小学校第4・5・6学年、中学校第1・2学年を担当した教職員。ただし、平成22年5月以降に採用された講師については対象としない。


(2)調査対象学校

   数及び調査対

   象人数

[児童生徒]

小学校
167校
第5学年
8,410人
 
第6学年
8,506人
中学校
95校
第1学年(県立学校を含む)
8,197人
 
第2学年(県立学校を含む)
8,213人
 
第3学年(県立学校を含む)
8,144人
特別支援学校
6校
小学部第5学年
4人

 

小学部第6学年
4人
中学部第1学年
5人
中学部第2学年
10人
中学部第3学年
9人
   
41,502人

[教職員]

小学校
第5学年(平成22年度 小学校第4学年担当)
457人
  第6学年(平成22年度 小学校第5学年担当)
515人
中学校 第1学年(平成22年度 小学校第6学年担当)
511人
  第2学年(平成22年度 中学校第1学年担当)
677人
  第3学年(平成22年度 中学校第2学年担当)
659人

                                  

調査の実施方法


(1)調査実施日及

   び実施教科

 

  平成23年4月18日(月) 平成23年4月19日(火)
小学校第5学年 社会・理科 国語・算数
小学校第6学年 社会・理科 国語・算数
中学校第1学年 社会・理科 国語・数学(算数)
中学校第2学年 社会・理科・英語 国語・数学
中学校第3学年 社会・理科・英語 国語・数学

  
※ 児童生徒意識調査については別途時間を設けて実施
※ 教師意識調査については平成22年度末に別途時間を設けて実施
※ 中学校第1学年数学の調査問題については、小学校第6学年の学習範囲を中心に出題しているため、内容は算数となる。

(2)調査時間 ア 教科ペーパーテスト
小学校 各教科とも45分 各学校で時間を設定して実施
中学校 各教科とも50分 各学校で時間を設定して実施

イ 児童生徒共通意識調査
小学校・中学校とも20~30分程度、各学校で時間を設定して実施

ウ 教師意識調査
10~20分程度、各学校で随時実施

調査結果の処理


(1)採点・入力


学習状況調査(ぺーパーテスト)については、各学校において採点を行い、教育センター諸調査集計・分析システムを利用して、Web上から採点結果を入力する。教師意識調査・児童生徒に対する意識調査についても、同様にその回答状況をWeb上から入力する。

(2)集計・分析
集計作業により教科ごとの設問別正答率、内容・領域別正答率、評価の観点別正答率を求め、本県において設定した到達基準(第7節を参照)との比較により、その実現状況を測る。また、意識調査の回答状況と正答率の相関に着目した分析を行う。その際、各学校における指導の状況を数値化するために学校スコア(※3参照)を算出して分析に用いる。

これらの集計結果を基に、各教科における傾向及び成果と課題を明らかにし、今後の指導に向けての提言を行う。なお、分析については、教育センターにおいて行う。

調査結果の返却方法


(1)集計・分析シス

   テムによる返却


調査対象となった各学校に対しては、諸調査集計分析システムを介して、当該校の調査結果を返却するとともに、今後の指導法改善に生かすことができる情報を提供する。調査結果個票は、各学校を通して、児童生徒に返却する。

(2)調査報告書に

   よる返却

調査結果から見られる県全体の傾向、各教科における成果と課題、これからの指導に向けての提言などをまとめた調査報告書を、諸調査集計分析システム等を介して、県内の各学校及び関係機関に配信する。

 

調査の内容

 

(1)教科ペーパー

   テスト

 

ア 実施教科
小学校第5・6学年は国語、社会、算数、理科の4教科

中学校第1学年は国語、社会、数学(算数)、理科の4教科
中学校第2・3学年は国語、社会、数学、理科、英語の5教科

※ 中学校第1学年数学の調査問題については、小学校第6学年の学習範囲を中心に出題しているため、内容は算数となる。

イ 調査問題
県が独自に作成した問題によって構成する。

※ 小学6年と中学3年の国語、算数・数学については、東日本大震災の影響等を考慮し、全国学力・学習状況調査の実施が見送られたことから、平成19年度から平成22年度の全国調査問題を再編して県独自の調査問題を作成し、佐賀県の調査として実施した。

「活用」に関する問題について
本県学習状況調査においては、全国学力・学習状況調査解説資料において示されている次の2つの出題範囲・内容のうち、〔主として「活用」〕に関わる問題作成の枠組みを基にして、各教科の「活用」に関する問題を作成している。

・〔主として「知識」〕…国語A、算数・数学A
身に付けておかなければ後の学年等の学習内容に影響を及ぼす内容や、実生活において不可欠であり常に活用できるようになっていることが望ましい知識・技能など
・〔主として「活用」〕…国語B、算数・数学B
知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や、様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力などに関わる内容など


ウ 出題範囲

前学年で学習した内容を中心に出題する。

(2)児童生徒意識

   調査

ア 意識調査の目的
本県児童生徒の学校生活・学習動機・学習活動やそれを取り巻く生活習慣・家族関係・地域における生活などについて広く調査し、その実態を把握する。学習に関わっては、更に詳細に各教科の学習に対する意識や学習に臨む態度の実態を把握する。また、それらが児童生徒の正答率(※1参照)とどのように関わっているのかということ、及び教師の指導理念や指導法についての意識が児童生徒の学習に対する意識や態度にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする。

イ 調査方法

児童生徒を対象とした質問紙法による調査を行う。

ウ 質問項目の構成
(ア) 学校生活 
(イ) 学習動機 
(ウ) 学習活動(教科全般) 
(エ) 学習活動(各教科) 
(オ) 家庭学習 
(カ) 生活習慣等 

 

質問項目とそれぞれの設問との関係は以下の表のとおりである。

質問項目

小学校[全45問]

中学校[全48問]

(ア) 学校生活

1・2・3・4

1・2・3・4

(イ) 学習動機

5・18(ア・イ・ウ・エ)・20(ア・イ・ウ・エ)・35・36

5・18(ア・イ・ウ・エ・オ)・20(ア・イ・ウ・エ・オ)・38・39

※18(オ)・20(オ)は中2・3のみ

(ウ) 学習活動
 (教科全般)

15・16・17

15・16・17

(エ) 学習活動

 (各教科)

 

国語

19ア・22・23・24・25

19ア・22・23・24・25

社会

19イ・26・27・28

19イ・26・27・28

算数

数学

19ウ・29・30・31

19ウ・29・30・31

理科

19エ・32・33・34

19エ・32・33・34

英語

 

19オ・35・36・37

※中2・3のみ

(オ) 家庭学習

6・7・8・9・10・11・12・13・14

6・7・8・9・10・11・12・13・14

(カ) 生活習慣等

21・37・38・39・40・41・42・43・44・45

21・40・41・42・43・44・45・46・47・48

 

エ 質問の意図
(ア) 学校生活
学校生活の楽しさ、好きな授業の有無などについて問うことにより、児童生徒の学校生活の実態を把握する。


(イ) 学習動機
勉強に対する興味や有用性、将来の夢や目標の有無について問うことにより、学習動機の高さについての実態を把握する。


(ウ) 学習活動(教科全般)
自分の考えを発表する機会や児童生徒の間で話し合う活動の頻度、自分の考えの表現に対する抵抗感について問うことにより、児童生徒の学習活動全般の実態について把握する。


(エ) 学習活動(各教科)
各教科の内容の理解度についての自己評価、各教科の特性に応じた学習内容や学習方法についての児童生徒の興味・関心・意欲・態度について問うことにより、それぞれの教科についての学習活動の実態について把握する。


(オ) 家庭学習

授業以外の勉強時間や勉強の内容、塾や家庭教師の有無など児童生徒の学習方法全般について問うことにより、児童生徒の家庭学習の実態について把握する。


(カ) 生活習慣等

読書時間、テレビやゲームなどの時間、就寝時刻、朝食や家の手伝いの頻度、地域における行事などへの参加の頻度などについて問うことにより、児童生徒の家庭における生活習慣の実態について把握する。



(3) 教師意識調査

ア 教師意識調査の目的
本県教師の指導理念や指導法についての意識、日々の授業における指導の実際を把握することを目的とする。また、それらが児童生徒の正答率とどのように関わっているのかを明らかにすることを目的とする。

イ 調査方法
調査対象学年を指導している教職員を対象とした質問紙法(教職員ポータルを介してWeb上から該当者が直接入力する方法)による調査を行う。

ウ 質問項目の構成

カテゴリ
小学校
中学校
(ア) 家庭学習への関与状況 設問2~6 設問2~6
(イ) 学習環境の活用 設問7~10 設問7~10
(ウ) 教科等全般における指導法の工夫 設問11~19 設問11~19
(エ) 教科の特性に応じた指導法の工夫 設問20~29 設問20~31
(オ) 教師の指導観 設問30~33 設問32~35
(カ) 学校組織マネジメントに対する意識 設問34~36 設問36~38


エ 質問の意図
(ア) 家庭学習への関与状況
宿題を出している頻度ならびに出している宿題の質(予習的宿題・復習的宿題)について問うことにより、宿題の出題状況を把握する。

(イ) 学習環境の活用
授業におけるコンピュータや学校図書館の活用頻度とその活用内容を把握する。

(ウ) 教科等全般における指導法の工夫
発展的な課題を取り入れた授業の実施状況、理解が十分でない児童生徒に対する授業外での対応状況、書いて表現する活動や話し合い活動を取り入れた授業の実施(教科の授業・総合的な学習の時間)、身に付けさせたい力を意識した総合的な学習の時間の指導、学習方法についての指導状況、学習形態の工夫、目標や評価規準を明確にした授業の実施について問うことにより、発展的学習・補充的指導・表現力の育成、総合的な学習の時間の指導、学習方法の指導、学習形態の工夫、目標を明確にした指導などの状況を把握する。

(エ) 教科の特性に応じた指導法の工夫
国語における言語活動、読書指導、社会における調査学習を生かした発表・討論、算数・数学における算数(数学)的活動、問題解決的な学習、理科における見通しをもった観察や実験とそのまとめ、英語におけるコミュニケーション能力を高める指導や書く活動などについて問うことにより、各教科の特性に応じた指導法の工夫の状況を把握する。

(オ) 教師の指導観
教師の指導行動を主に、課題達成の意識、集団維持の意識の2点から問うことにより、教師の指導観と正答率に及ぼす影響を分析する。

(カ) 学校組織マネジメントに対する意識
教育活動方針の理解、方針や内容についての共通理解、職員間の雰囲気について問うことにより、学校組織マネジメントが児童生徒の正答率や児童生徒の学習に対する意識に及ぼす影響を把握する。

 

到達基準の設定について

 

(1)調査結果の解

   釈に当たって

 

調査問題の作成に当たり、事前に設定した設問ごとの難易度に適合したものとなるよう、複数の委員が本県の児童生徒の実態を踏まえながら、指導に当たってきた経験に基づいて、問題内容を協議し、検討を重ねている。


問題の難易度は、調査した児童生徒のうち正答することが期待される者の人数の割合で示し、これを「期待正答率」と呼ぶ。本調査では、「期待正答率」として、各設問に「十分達成」「おおむね達成」という2つの基準値を設定している。

「おおむね達成」は、最低限これを上回る児童生徒が正答することが期待される人数の割合であり、下回っている場合は、学習内容の定着に課題があり、早急に改善の手立てが取られる必要があると考える。また、「十分達成」は、学習内容の定着が十分満足できると判断される基準であり、上回っている場合は、各地域・学校における取り組みの成果として評価できるものと考える。

「期待正答率」を基にして算出した「到達基準」と調査結果の「正答率」を比較することにより、到達度を測ることができる。また、経年的な調査結果の比較により、定着に係る動向を知ることができる。各学校においては、調査結果に基づいて自校の取り組みを検証し、課題に応じた重点目標を設定し、解決に向けた指導の工夫・改善を図っていくことが期待される。

 

(2)基準設定方

   法の選択

 

到達基準の設定に当たっては、1972年にエーベルが提唱した「エーベル法」に橋本重治が修正を加えて考案した「修正エーベル法(橋本エーベル法)」(※2参照)を基本的な考え方として採用する。採用の理由として、個々の小問の判断に基づく設定方法として理論的に優れている「エーベル法」をより簡略化して利用できるようにしたものであること、この方法は実際に「教研式標準学力検査CRT」などにも採用されていることなどが挙げられる。

 

(3)設定方法の概

   要

 

各小問(著書の中では「アイテム」と表現)を、関連性と困難度のマトリックスにおいて分類する。関連性は、「基礎的・基本的」(後への関連性が高い目標を測る問題) と「発展的・応用的」(比較的高度で、後の学習への関連性がそれほど高くない目標を測る問題)の2区分とし、困難度は「平易」「普通」「困難」の3区分とする。(表1のとおり) ただし、基礎・基本に分類される困難な目標は現実的ではないので、除外する。全ての小問は、表1中の(A)(B)(C)(D)(E)のいずれかに割り振られる。

表1 修正エーベル法におけるアイテム分類表

  平 易 普 通 困 難
基礎的・基本的
(A)
 (B)
  -
発展的・応用的
(C)
 (D)
  (E)
 

また、それぞれの分類欄ごとの期待正答率は表2のように定められている。

表2 修正エーベル法における五つの分類ごとの期待正答率表

  平 易 普 通 困 難
基礎的・基本的

 0.85(85%)

 (A)        

 0.65(65%)

 0.80(80%)

 (B)        

 0.60(60%)

  -
発展的・応用的

 0.75(75%)

 (C)        

 0.55(55%)

 0.70(70%)

 (D)        

 0.50(50%)

 0.65(65%)

 (E)        

 0.45(45%)

 (注) 上の数字は「十分達成」、下の数字は「おおむね達成」の場合を示している。

この表に基づいて、到達基準が算出される。

(4)設定に当たって

   の具体的な手

   続き

① 調査問題を小問単位で、評価観点別及び内容・領域別に分類する。

② 評価観点別(もしくは内容・領域別)に分類された小問を表1に沿って、(A)~(E)に振り分ける。「知識・理解」「技能」「言語事項」などの観点についての小問の多くは「基礎的・基本的」に属するが、一部に「発展的・応用的」に属するものもあると考えられる。また、「思考」「資料の解釈・利用能力」「観察・実験の能力」「読解力」などの観点については、「発展的・応用的」に属する小問が多いと考えられるが、一部「基礎的・基本的」に属するものも含まれることが考えられる。

③ 分類が終わったら、評価観点(もしくは内容・領域)ごとに分類表の各欄の小問数を確認する。

④ あらかじめ定められた期待正答率表(表2)の値を基にして、各評価観点(もしくは内容・領域)ごとに「十分達成」「おおむね達成」それぞれの到達基準を算出する。

表3 修正エーベル法による到達度基準の算出例

分類欄 小問数 十  分  達  成 お お む ね 達 成
期待正答率

小問数

×期待正答率

期待正答率

小問数

×期待正答率

(A)

0.85

3.40

0.65

2.60
(B) 0.80 2.40 0.60 1.80
(C) 0.75 1.50 0.55 1.10
(D) 0.70 1.40 0.50 1.00
(E) 0.65 0.65 0.45 0.45
合 計 12 合 計

9.35

(77.9%)

合 計

6.95

(57.9%)

表3は、ある観点(もしくは内容・領域)において(A)~(E)に分類される小問がそれぞれ4問・3問・2問・2問・1問であった場合の計算例である。それぞれの期待正答率と小問数の積の合計から導き出した得点を全小問数で割った数値(合計欄の下に示している%)がこの観点(もしくは内容・領域)の到達基準ということになる。

 

(5)本調査で設定

   した期待正答

   率表

本調査では、前に述べた理論を参考に、小学校と中学校の学習内容の違いなどを考慮して、次の表4と表5のように期待正答率を設定した。

表4 小学校における期待正答率表

  平 易 普 通 困 難
基礎的・基本的

 0.85(85%)

 (A)        

 0.65(65%)

 0.80(80%)

 (B)        

 0.60(60%)

  -
発展的・応用的

 0.75(75%)

 (C)        

 0.55(55%)

 0.70(70%)

 (D)        

 0.50(50%)

 0.65(65%)

 (E)        

 0.45(45%)

表5 中学校における期待正答率表

  平 易 普 通 困 難
基礎的・基本的

 0.75(75%)

 (A)        

 0.55(55%)

 0.70(70%)

 (B)        

 0.50(50%)

  -
発展的・応用的

 0.65(65%)

 (C)        

 0.45(45%)

 0.60(60%)

 (D)        

 0.40(40%)

 0.55(55%)

 (E)        

 0.35(35%)

 

到達基準による判定と今後の指導に向けて

 

(1)到達基準を設

   定することの効

   用

 

従前、佐賀県小・中学校学習状況調査においては、国立教育政策研究所が平成15年度までに実施した教育課程実施状況調査の調査問題を使用して、その全国平均正答率を一つの指標として用いてきた。

国が公表した全国平均正答率はあくまでも設問ごとのものであって、評価の観点別、内容・領域別については公表されていなかった。そのため、評価の観点別、内容・領域別については、県が便宜的に、国が公表した設問ごとの全国平均正答率を束ねて算出した。また、平成15年度以前に実施された調査の結果との比較という点において、調査実施年の隔たりは年々大きくなっており、その信頼性や客観性についても課題があった。

平成19年度には調査問題の6~7割を、平成20年度より調査問題の全てを県が独自に作成し、設問ごと、評価の観点別、内容・領域別に到達基準を設定した。

本調査では、県があらかじめ設定した到達基準との比較において、県としての成果と課題を明確にすることができるとともに、各学校においても、到達基準との関係において、自校の学習指導の成果と課題を把握することが可能となっている。

県正答率との比較においては、常に県下の約半数の学校がそれを上回ることはなく、課題意識だけが先行することになるとともに、自校の結果が県正答率に比べよければ、全国の中の県の状態にかかわらず、安心してしまう可能性もあった。

到達基準を設定することにより、県下の全ての学校が基準に到達できることも現実に可能となる。また、結果が振わなかった点についても、県正答率をいいわけにすることなく、しっかりと自校の課題として把握できるようになった。

 

(2)到達基準の「十

   分達成」と「おお

   むね達成」のラ

   インについて

 

到達基準は、「おおむね達成」と「十分達成」の2つの分割点を設定することにより、各学校における到達の状況が明確となり、目標の設定が容易となった。

「おおむね達成」に到達していない教科や評価観点、内容・領域については、緊急の課題であり、早急の対応が望まれる。必要に応じて年度内の補充的な指導などを施した上で、新年度につなげる必要があるであろう。

「おおむね達成」には到達しているが、「十分達成」には到達していない教科や評価観点、内容・領域については、県が示す最低基準は達成していると考えられるが、更なる向上が望まれる。新年度の教育課程編成に関わって、指導法改善等に取り組むことが望ましい。

「十分達成」に到達している教科や評価観点・内容・領域については、現状の指導が効果的に働いていることの表われであり、十分に成果が見られると考えられる。現状の指導を継続して差し支えないであろう。

 


到達状況についてイメージ図



 

以上のように、各学校、各学年、各教科の到達状況を把握し、今後の短期的、又は長期的なビジョンの中で、児童生徒への対応や教師による指導法改善が図られることを期待したい。

 

(3)今後の指導に

   向けて

 

到達基準との比較により、各学校において、教科、学年、学級などにおける指導の実現状況を把握することができたら、その強みを更に伸ばし、弱みを克服するために、個々の教師が指導法の改善に取り組むこととなる。

諸調査集計・分析システムから自校及び県全体の結果を集計したデータ及び分析ツールがダウンロードできるようになっている。また、県全体の成果と課題、及びこれからの指導に向けては調査報告書の第Ⅲ章において教科ごとにまとめている。授業改善に向けての提言については、各学校の現状と照らし合わせながら、参考となる点を活用していただきたい。

 

※1 正答率

 

正答率とは、学習の定着状況を示すために用いる、各設問における正答者数(準正答者数を含む)の解答者数に対する割合である。本報告書では、下記の方法で設問ごと正答率を算出している。

設問ごと正答率=正答者数の合計÷(解答者数の合計-その他の数の合計)

県正答率 算出の方法
教科正答率 当該教科全ての設問を対象として、
各設問の正答数の合計÷(各設問の解答数の合計-各設問のその他の数の合計)
内容・領域別正答率 当該内容・領域に関わる設問を対象として、
各設問の正答数の合計÷(各設問の解答数の合計-各設問のその他の数の合計)
評価の観点別正答率 当該評価の観点に関わる設問を対象として、
各設問の正答数の合計÷(各設問の解答数の合計-各設問のその他の数の合計)

→児童生徒意識調査へもどる


※2 修正エーベル法


修正エーベル法(橋本エーベル法)の詳細については、下記の文献等を参考にしていただきたい。

橋本 重治 『到達度評価の研究 その方法と技術』 1981年 図書文化社

橋本 重治 『続・到達度評価の研究 到達基準の設定の方法』 1983年 図書文化社

→基準設定方法の選択へもどる

 

※3 学校スコア

 

学校スコアとは、教師意識調査及び児童生徒意識調査の結果から、各学校における教師の指導や児童生徒の意識等に関する回答状況を数値化することを目的として、質問項目に対する回答選択肢ごとにポイントを付けて重み付けを行うことにより、独自に算出した値である。

(例) 宿題を出していますか。

1 多くの時間で出している                          → 100ポイント
2 どちらかといえば出している                     →  66ポイント
3 どちらかといえば出していない方が多い     →  33ポイント
4 全く出していない                        →   0ポイント

各学校の教師、又は児童生徒の回答状況を上記のようなポイントに換算して、その学校の平均値を求めたものを学校スコアとして、分析に用いている。

→集計・分析へもどる

 


最終更新日:  2011-10-07