本調査では、「社会的事象、歴史的事象に関する知識の定着」と「社会的な問題について論述したり、社会的事象や歴史的事象の意味を説明したりすること」に課題があることが分かった。
学習指導要領においては、社会的な見方や考え方を養い、そこで身に付けた知識、概念や技能などを活用し、よりよい社会の形成に参画する資質や能力につないでいくことが求められている。そのためにも、思考力・判断力・表現力の基盤となる知識の定着を確実に図ることが大切である。
(ア) 社会的事象や歴史的事象に関する知識を定着させるための指導の工夫
知識は、1つ1つ断片的に取り扱うのではなく、関係付けて理解させていくことが大切である。また、「消防団」や「北方領土」などの用語は確実に指導し、意味を理解させた上で定着させるべきものである。そこで、まずは、問題解決的な学習の中で、スーパーマーケットや浄水場などの見学や地域の特徴的な事象の観察などの体験活動を充実させたり効果的な資料の提示をしたりすることで、これまでの経験や既習事項と結び付けながら知識を習得させるような手立てが必要である。さらに、社会的事象の特色や関連、意味などについて考えたり話し合ったりする学習の場を設定する手立ても必要となってくる。そうすることで、理解を深めると共に知識の定着を図ることにもつながると考えられる。そのため、授業では単に暗記をさせていくだけでは不十分である。学習の流れの中から児童に必然性をもって取り組ませて理解させ、知識を定着させていくことも必要である。
(イ) 社会的な問題について論述したり、社会的事象や歴史的事象の意味を説明したりすることについての指導の工夫
社会的な問題について論述させるためには、児童に意見をもたせていく指導を行う必要がある。意見をもたせるためには、第1に社会的な問題が起きている原因や背景について理解させる手立てが必要である。具体的には社会的な問題について対立する意見を出して考えさせたり、社会的な問題について書かれてある新聞記事を活用して考えさせたりすることが考えられる。第2に社会的な問題について解決策を考えさせる手立てが必要である。具体的には社会的な問題について討論を行い意思決定をさせていくことが考えられる。
社会的事象や歴史的事象の意味を説明させるためには、事象を1つ1つ断片的に学習させるのではなく、それらを関連させながら学習させていくことが大切となっていく。よって、事象を関連付けて学習させる指導の工夫が必要となってくる。例えば、
歴史学習においては取り上げられている人物の歴史的背景を明らかにし、その歴史的背景に基づいて政策を実行していったなど事象を関連付けていくような指導が考えられる。
(ウ)
「思考力・判断力・表現力」を高めるための評価の工夫
国立教育政策研究所から『評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料』が示された。この資料では実際の指導における「社会的な思考・判断・表現」を評価する際の評価規準が単元ごとに示されている。具体的な判定基準をどのように設定するか、活動の記録を基にどのように評価していくかということについて考えていくことは大切なことである。特に、設定した判定基準ではどのような状況を「おおむね満足できる」状況(B)とするのかについて明らかにすることは重要である。例えば、「○○を活性化させるプランについて述べなさい」という課題に対しては、活性化させるプランとその理由を記述していれば「おおむね満足できる」状況(B)と判定基準を設定することである。そうすることで、目指すべき児童の姿を具体的にイメージして授業に臨むことができると考えられる。
《参考資料》
国立教育政策研究所 『評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料 小学校社会』 平成23年11月
○ 教師意識調査の結果より
教師意識調査(27)において「社会で、児童が資料などから読み取ったことを基にして考えたことを、話し合う活動を取り入れた授業を行っていますか。」という質問に対して、「多くの単元で行っている」と回答した教師の割合は16.0%、「半分程度の単元で行っている」と回答した教師の割合は26.4%であり、合わせると42.4%である。平成24年度の同じ設問では,「多くの単元で行っている」と回答した教師の割合は14.3%、「半分程度の単元で行っている」と回答した教師の割合は27.4%であり、合わせると41.7%である。これらを踏まえると、言語活動を取り入れる指導が意識され、社会科において自分の考えを説明し、表現する話合い活動に取り組むことができていると考えられる。話合い活動は思考力・判断力・表現力を育成することにつながっていくと考えられる。よって、今後も社会科において話合い活動を充実させ、思考力・判断力・表現力を育成していく取組が大切である。 |