今回の結果を教師意識調査も踏まえた上で、成果と課題について考察してみることとする。
まずは、成果について考えてみる。
教師意識調査から見えてくる佐賀県の英語教師像は次のような姿である。教科部会で協力して指導法について話し合ったり、毎時間、毎週の課題を課して評価・返却に努めたりするなど、生徒の学力向上のため日々奮闘している様子が浮かんでくる。とりわけ、その努力の成果が如実に表れたのが「書くこと」の領域の「活用」に関する問題である。自分の伝えたいことをまとまりのある英語で書く力は、平成23年度までずっと課題とされてきた。ここに改善が見られるということは「書くこと」の指導が充実してきた証拠である。関連して教師意識調査を見てみると、(15)「レポートや作文など書いて表現する活動」は、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」「3分の1程度の単元で行っている」と回答した中学校英語教師の割合は66.5%、「少しは行っている」と回答した教師まで含めると98.5%の割合で実践が行われている。以上のことから、「書くこと」の領域における課題への取組が全県下で行われたことが成果として表れていると考えられる。
次に、課題について考えてみる。
今回の結果は、「聞くこと」、「読むこと」については「活用」に関する問題に、「書くこと」については「基礎的・基本的な知識・技能」に関する問題に課題が見られた。このことを踏まえて、具体的には次の点に留意して指導を行いたい。
言語材料の理解や練習と、言語を使用する活動はバランスよく取り入れ、フィードバックを適切に行う
(ア)3年間→1年間→1学期間→1単元→1時間という逆向き設計による授業計画を立てる。
3年間を通して英語の目標を達成するためには、各学年ごとの目標を適切に設定する必要がある。さらに、各学期の目標、各単元
の目標、1時間の授業の目標というように、逆算して目標を設定していく。各学期の目標として、スピーチやインタビューなどのプロジ
ェクト活動を取り入れて理解、練習した言語材料を使用する場面を与えたい。目標の設定においては、生徒にある程度の負荷を与
えることが大切である。また、成功体験につなげるためには、十分な練習量を確保したい。こうした言語材料の理解、練習と使用の
バランスは、学年や習熟状況に応じて考えていくことが大切である。
(イ)Teacher Talkを充実させる。
普段の授業においては、Teacher Talkを充実させたい。聞くことの技能の向上につながること、既習事項を意図的に使用することで
言語材料の定着につながることなどが期待できるからである。新出単語の導入や生徒とのやり取りを英語で行えば聞く必然性が生
まれ、教科書本文についての発問を英語で行えば複数の情報を結び付けて理解し、判断する必然性が生まれる。これらの活動を繰
り返す過程を通して、英語を頭から理解していく力が付いていく。また、既習事項に何度も触れることで定着が促されると考えらえる。
英語を英語として理解していくためには普段から適切な速さで話される英語に慣れておく必要がある。高校での英語の授業につなげ
ていくためにも段階を追って教師の英語の使用量を増やしていきたい。ここでも学年や習熟状況に合わせて、日本語と英語のバラン
スを考えていきたい。
(ウ)思考を深める場面を増やす。
教師意識調査(10)「ICT機器を授業のどのような場面で活用していますか。」によると、中学校英語科においてICT機器が授業の中で
活用されるのは、「生徒の興味・関心を高めたり、課題を明確につかませたりする場面」がもっとも多く80.0%、次いで「授業の効率化
を図る場面」や「生徒の知識の定着を図る場面」が45.0%、42.0%となっている。一方、「生徒がそれぞれの考えや意見を伝え合って
理解や思考を深める場面」での活用は、6.5%である。このことから、基本文を提示したり効率よく練習量を確保する目的で活用され
ていることが考えられる。しかし、本文内容の理解を深めるために、背景知識を活性化する資料を提示したり、それらの資料から言
えることを考えさせたりする目的で活用される場面が比較的少ないのではないかと考えられる。今回課題とされているのは、聞いた
り読んだりした情報と図表から読み取った複数の情報とを結び付けて理解することである。そのため、本文読解においてICT機器を
活用して、グラフ、挿絵及び写真などを組み合わせて提示して、英語で説明したり発問したりすることは、前述した課題への手立ての
1つとなり得るのではないかと考えられる。 |