平成24年度佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査Web報告書

Web報告書もくじⅤ  まとめ

 

学校の状況に応じた学習評価の工夫改善へ向けて

学習評価の在り方について
 

 

新学習指導要領については、小学校は平成23年4月から、また、中学校は平成24年4月から全面実施となった。新学習指導要領の下での学習評価については、国立教育政策研究所教育課程研究センターが作成した「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」第1編総説第1章に、次のように述べられている。



新学習指導要領の下での学習評価については、児童生徒の「生きる力」の育成を目指し、児童生徒一人一人の資質や能力をより確かに育むようにするため、学習指導要領に示す目標に照らしてその実現状況をみる評価を着実に実施し、児童生徒一人一人の進歩の状況や教科の目標の実現状況を的確に把握し、学習指導の改善に生かすことが重要であるとともに、学習指導要領に示す内容が確実に身に付いたかどうかの評価を行うことが重要である。
また、今回の観点別学習状況の評価の改善は、特に、学力の重要な要素を示した新学習指導要領等の趣旨の反映と関連している。
学校教育法の一部改正を受けて改訂された新学習指導要領の総則に示された学力の3つの要素を踏まえて、評価の観点に関する考え方が整理された結果、これまでの観点の構成と比べると、「思考・判断」が「思考・判断・表現」となり、「技能・表現」が「技能」として設定されることとなった。
さらに、各学校や設置者の創意工夫を一層生かしていくことが求められており、各学校では、組織的な取組を推進し、学習評価の妥当性、信頼性等を高めることが重要である。(※1)



 

児童生徒一人一人の状況を把握するとともに、その後の指導に生かすことが重要であることが示されている。また、各学校において組織的な取組を推進することや学習評価の妥当性、信頼性等を高めることが重要であることも示されている。


学習指導と学習評価に対する意識調査より
 

 

「学習指導と学習評価に対する意識調査報告書」(平成21年度文部科学省委託調査)によると、目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)や観点別学習状況の評価に対する考えについて、図1及び図2のようなグラフが示されている。

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                                               図1 学校段階別項目ごとの回答分布

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                     図2 学校段階別項目ごとの回答分布

図1の「4観点の評価を授業改善や個に応じた指導の充実につなげられている」の項目では、小学校の74.3%の教師が、また、中学校の65.5%の教師が、「そう思う」「まあそう思う」と回答している。ただし、「そう思う」と回答している教師の割合は、小学校、中学校共に10%を下回っている。 一方、図2の「評価規準や評価結果の妥当性等について、担当する教科や学級が異なる教職員の間で共通理解を図ることに苦労する」の項目では、小学校の53.6%の教師が、また、中学校の60.0%の教師が、「そう思う」「まあそう思う」と回答している。また、「そう思う」と回答している教師の割合は、小学校、中学校共に10%を上回っている。

小学校及び中学校において、「4観点の評価を授業改善や個に応じた指導の充実につなげられている」と感じている教師の割合は半数を超えているが、「評価規準や評価結果の妥当性等について、担当する教科や学級が異なる教職員の間で共通理解を図ることに苦労する」と感じている教師の割合も半数を超えている。このことは、4観点の評価については充実感があるものの、教職員の間での共通理解をすることは難しいことを表していると考えられる。

学習評価の工夫改善に向けて
 

 

「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」第1編総説第3章には、



学習評価の工夫改善を進めるに当たっては、評価規準を適切に設定するとともに、評価方法の工夫改善を進めること、評価結果について教師同士で検討すること、授業研究等を通じ教師一人一人の力量の向上を図ること等について、校長のリーダーシップの下、学校として、組織的・計画的に取り組むことが必要である。(※4)



 

と述べられている。
学習評価については、教職員の間で共通理解を図りにくい状況があるものの、共通理解を図ることについては有用感が高いことから、上記(※4)に関わる各学校のこれからの実践について、以下のような手立てを挙げたい。

(ア)評価規準を適切に設定すること
教育課程の実施に当たっては、新学習指導要領に示されている内容が児童生徒一人一人に確実に身に付いているかどうかを評価することが大切である。その際、前述の「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」を活用したい。この参考資料は、
第1編 総説(学習評価の基本的な考え方についての解説)
第2編 評価規準に盛り込むべき事項等
第3編 評価に関する事例(各教科4事例程度)
で構成されている。各教科の評価規準の設定について、具体的な事例を挙げながら示されている。授業実践において参考となる資料である。

(イ)評価方法の工夫改善を進めること
評価方法については、文部科学省の「児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について(答申)」(平成12年12月4日)に次のような指摘がある。



具体的な評価の方法としては、ペーパーテストのほか、観察、面接、質問紙、作品、ノート、レポート等を用い、その選択・組合せを工夫すること、などが求められる。(※5)



 

これらの方法については、各教科の特性や指導する内容に合わせて、絶対評価を行うのか、相対評価を行うのか、また、自己評価を行うのか、相互評価を行うのか等について検討を加える必要がある。さらに、結果の蓄積や分析には、作業の効率化の観点からICTの利活用が考えられる。

(ウ)評価結果について教師同士で検討すること
評価結果について、教職員の間で検討するためには、各教科の指導する内容において、目指す児童生徒の姿を共有することが重要であると考える。目指す児童生徒の姿の具体については、前述の「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」に示されている評価規準を参考にしたい。また、学習状況調査の結果を基にして教職員の間で検討することも考えられる。調査問題の内容について意見交換したり、結果を県が設定した到達基準や県正答率等と比較することにより、児童生徒の状況を探ってほしい。評価結果を、何を基にして検討するのかについて考えることが重要だと思われる。

(エ)授業研究等を通じ教師一人一人の力量の向上を図ること
授業研究においては、授業展開案に記された学習評価を基に、評価の時期や方法について教職員の間で協議することによって、その妥当性や信頼性を高めることが期待できる。 教育センターでは、授業研究等に役立つ資料について、小学校国語科・中学校国語科・小学校算数科・中学校数学科の4つの研究委員会より、単元ごとや時間ごとの評価規準を示した「すぐに役立つ授業プラン」(授業展開案)を随時発信している。教師一人一人の力量の向上を図る上で、是非活用してほしい。


学校の状況に応じた指導改善へ向けた支援におけるアンケートより
 

 

平成20年度から始まった学校の状況に応じた指導改善へ向けた支援については、のべ250件を超えた。支援の目的は、以下のとおりである。


《目的》
① 分析ツールを使った学習状況調査の結果の分析方法についての周知と理解を図る。
② 結果データなど各学校の児童生徒の実態に基づく指導方法の工夫改善の進め方についてワークショップを通して理解を図る。
③ 学習状況調査の結果をはじめとする客観的な数値による評価資料の有用性について教師の認識を高めるとともに、教師のPDCAサイクルへの意識化・具体化を図る。

上記の《目的》に関しては、平成22年度よりアンケートを実施し、各学校の職員の反応を集約するようにしている。
図3のグラフは、平成22年度と平成23年度のアンケート結果について、各項目の4つの選択肢
(例:思う…4 やや思う…3 あまり思わない…2 思わない…1)
を加重平均したものである。

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                  図3 平成22年度と平成23年度のアンケート結果

平成23年度と平成22年度共に最も高い数値を示している項目が「4 児童生徒のよさや課題について校内での共通理解を図るための今回のような演習についてどう思いましたか。」である。次に高い数値を示している項目が「6 今回の研修は、あなたの学校の学力向上に役に立つと思いますか。」である。

教育センターが県内小・中学校を対象に行っている支援では、学習状況調査の結果から見える学校の状況についての説明を行った後にワークショップを行うスタイルを多くの学校で取り入れている。図3は、教職員の間で児童生徒の状況を共通理解することに対する有用感が高いことを表していると考えられる。

学習評価における組織的・計画的な取組については、「平成23年度佐賀県小・中学校学習状況調査Web報告書第Ⅴ章『3 組織的・計画的な取組に向けて』」に提言をまとめている。参照してほしい。


《引用文献》
※1 ※4 国立教育政策研究所 『評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料』 平成23年11月
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/shidousiryou.html
※2 ※3 文部科学省 『学習指導と学習評価に対する意識調査報告書』 平成22年1月
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/__icsFiles/afieldfile/2010/02/19/1289879_1.pdf
※5 文部科学省 『児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について(答申)』 平成12年12月4日
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20001204001/t20001204001.htm


最終更新日: 2012-10-15