平成24年度佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査Web報告書

Web報告書もくじⅣ 教師意識調査結果の分析


  教師意識調査結果の分析
 

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1 教科全般における指導法の工夫

小学校、中学校共に、学習の形態を工夫し、考えをひろげたり深めたりする活動を取り入れる教師の割合が高くなってきている。[図1、図3]
小学校、中学校共に、多くの単元で課外の時間を利用して、補充的な指導を行う教師の割合が高くなってきている。[図5]また、補充的な指導を行っている学校ほど、各教科とも正答率が高くなっている。[図6-1][図6-2]
 

この節では、
 ・ 表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業
 ・ 学習形態を工夫したメリハリのある授業

 ・ 理解が十分でない児童生徒への補充状況
の設問から、補充的指導、表現力の育成、総合的な学習の時間の指導、学習形態の工夫などの状況について分析する。

なお、学校スコアによるグループ比較においては、小学校、中学校の最高学年である小学6年生と中学3年生の結果を基に比較することとする。

   
   
「発表や話し合い活動など表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業を行っていますか」について
 

図1 「発表や話し合い活動など表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業を行っていますか」の回答の割合(経年比較)

 

平成24年度の結果を見ると、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答をした小学校教師の割合は73.3%であり、同じ回答をした中学校教師の割合は40.1%である。

経年で比較すると、小学校、中学校共に、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答した教師の割合は増加している。特に、中学校においては「多くの単元で行っている」と回答した教師の割合が、平成23年度から平成24年度にかけて5.5ポイント増加している。[図1]

   

 

図2-1「発表や話し合い活動など表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業の頻度」と教科別正答率(小学6年生)

 

図2-2「発表や話し合い活動など表現し、考えを広げたり深めたりする活動を取り入れた授業の頻度」と教科別正答率(中学3年生)  

 

この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校では、6教科中4教科においてAグループの平均正答率がBグループの平均正答率よりも高くなっている。中学校では、全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。特に、中学校では、国語Aと数学Bにおいては、6.0ポイント程度上回る結果となった。[図2-1][図2-2]

 

   
「教師による指導を通して確実に学習内容を身に付けさせる場面とグループ活動やペア活動の形態を取り入れ、生徒の学び合い活動を通して学習内容を身に付けさせる場面を意識したメリハリのある授業を行っていますか」について
 

図3 「教師による指導を通して確実に学習内容を身に付けさせる場面とグループ活動やペア活動の形態を取り入れ、生徒の学び合い活動を通して学習内容を身に付けさせる場面を意識したメリハリのある授業を行っていますか」の回答の割合(経年比較)

 

「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答をした小学校教師の割合は73.1%である。これに対し、同じ回答をした中学校教師の割合は54.6%である。小学校は中学校に比べると、教師による指導を通して確実に学習内容を身に付けさせる場面と、グループ活動やペア活動の形態を取り入れ、生徒の学び合い活動を通して学習内容を身に付けさせる場面を意識したメリハリのある授業を行っている教師の割合が多い。

経年で比較すると、小学校では、「多くの単元で行っている」と回答した教師の割合が年々増加しており、「半分程度の単元で行っている」と回答した教師の割合と合わせてみても、増加する傾向にある。中学校で「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答した教師の割合を見ると、平成24年度が最も高い割合を示しており、平成23年度と比べ5.5ポイント上回っている。中学校においても、メリハリのある授業を行っている教師の割合が増加する傾向が見られる。[図3]

    

図4-1 「グループ活動やペア活動の形態を取り入、児童・生徒の学び合い活動を通して学習内容を身につけさせる場面を意識した授業を行っている頻度」と教科別正答率(小学6年生)

 

図4-2 「グループ活動やペア活動の形態を取り入、児童・生徒の学び合い活動を通して学習内容を身につけさせる場面を意識した授業を行っている頻度」と教科別正答率(中学3年生)

この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校では、6教科中5教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。中学校では、全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。[図4-1][図4-2]

 

   
「理解が十分でない児童生徒に対し、授業の合間や放課後などに更に指導していますか」について
 

図5 「理解が十分でない児童生徒に対し、授業の合間や放課後などに更に指導していますか」の回答の割合(経年比較)

 

平成24年度の結果を見ると、「多くの単元で行っている」「半分程度の単元で行っている」と回答をした小学校教師の割合は58.7%であり、同じ回答をした中学校教師の割合は27.3%である。

経年で比較すると、小学校、中学校共に、「多くの単元で行っている」と回答した教師の割合が増加している。また、中学校においては、「全く行っていない」と回答をした教師の割合が減ってきている。[図5]

   

図6-1「理解が十分でない児童・生徒に対し、授業の合間や放課後に更に指導している頻度」と教科別正答率(小学6年生)

 

図6-2「理解が十分でない児童・生徒に対し、授業の合間や放課後に更に指導している頻度」と教科別正答率(中学3年生)

 

この設問においてAグループとBグループの教科別平均正答率を比較すると、小学校、中学校共に、全ての教科においてAグループの平均正答率が高くなっている。特に、中学校では、7教科中5教科において5.0ポイント以上上回る結果となった。[図6-1][図6-2]

 

   
これからの指導に向けて
 

言語活動の充実を図る授業
今回の調査結果から、各教科の指導に当たって、「発表や話し合い活動など表現し、考えを広げたり深めたりする活動」が、学力の向上に効果的であることが読み取れた。また、学習指導要領にも「各教科等の指導に当たっては、児童(生徒)の思考力、判断力、表現力等をはぐくむという観点から、基礎的・基本的な知識及び技能を図る学習活動を重視するとともに、言語に対する関心や理解を深め、言語に関する能力の育成を図る上で必要な言語環境を整え、児童(生徒)の言語活動を充実すること。(※1)」とある。特に、表現する活動は、自分の考えを広げたり深めたりすることに有効であると考えられる。この表現活動は、「自分の考えを書いて表現する活動」と、「発表や話し合いなどの表現活動」に分けることができる。「自分の考えを書いて表現する活動」は、レポートや作文の作成などを通して、自分の考えを整理しながら、文章に分かりやすくまとめる活動である。「発表や話し合いなどの表現活動」は、作成したレポートや作文などを発表したり、自分の意見を、他者と交流させることにより、考えを深めたり、発展させたりする学習である。これらの表現活動を充実させることにより、児童生徒の知識・技能の定着が図られ、思考力、判断力、表現力が育まれることが求められる。

充実させる手立てとして、レポートや作文を書くだけではなく、書いたものを基に発表する場を設定したり、話し合う前に自分の考えを書いて整理させたりするなど、「自分の考えを書いて表現する活動」と「発表や話し合いなどの表現活動」との調和が図られ、両者の関連を図った指導を工夫することにあると考えられる。その上で、児童生徒の実態や学習内容によって、ペア学習やグループ学習などの場を設定したり、コンピュータや学校図書館など学習環境の効果的な活用を図ったりすることが挙げられる。



最終更新日: 2012-10-15