平成24年度佐賀県小・中学校学習状況調査及び全国学力・学習状況調査を活用した調査Web報告書

Web報告書もくじ>はじめに


はじめに ~学習状況調査を生かした指導改善までのプロセス~

学習状況調査Web報告書公開の趣旨
 

 

佐賀県では、平成14年度から小・中学校学習状況調査を抽出調査で実施し、佐賀県の学力に関する課題の把握に努めてきた。平成18年度からは県全体の把握に加えて、各学校の教師が児童生徒一人一人の学習状況や学習・生活に対する意識等の実態を具体的に把握し、改善を図ることができるように、全数調査を実施してきた。また、調査結果をできるだけ学校現場の教師が生かしやすいように返却することに努めてきた。平成19年度より調査報告書をWeb発信することにより、より多くの教師が必要に応じて、必要な部分を活用できるようにした。また、平成21年度より調査時期を4月に変更することにより、年度中の早い時期に調査結果を各学校に返却できるようにした。平成24年度は、佐賀県小・中学校学習状況調査を4月16日・17日に、全国学力・学習状況調査を活用した調査を4月17日に実施した。5月9日には県正答率を公表し、個票をダウンロードできるようにした。各学校の調査結果を自動的にグラフ化する分析ツール及び分析ツールに必要な学校のデータについては、6月20日に公開した。

Web報告書では、佐賀県における今回の調査の結果概要や小学校・中学校の各教科における学習状況について詳細に分析し、学習指導及び児童生徒の学校生活・家庭生活の見直しに向けての示唆となるように努めた。各学校における児童生徒の学習状況や生活状況を把握し、よさや課題を見付け出してほしい。さらに、課題解決の一つのアイディアとして、Web報告書の関係ページを学校全体で活用してほしい。よさや課題はそれぞれの地域や学校によって異なる。また、学校においても学年・学級、更には児童生徒の一人一人によさもあれば、課題を抱えている場合もある。教師がよさや課題に目を向けて指導を行っていくためにも、このWeb報告書を積極的に活用してほしい。

 

学習状況調査を生かした指導改善までのプロセス
 

process_001

 

上の図は「学習状況調査結果の公表から指導改善までのプロセス」を図式化したものである。多くの学校において、既に調査結果の分析が進んでいるものと推察される。分析を進めていく中で、今年度中に早急に手立てを取ることが必要な短期的課題や、次年度の教育課程編成や年間の指導計画作成に当たって考慮すべき長期的課題などが見付かるであろう。今年度内に見極めと具体的なアクションを起こしてほしい。

小学校であれば、調査対象である第5・6学年だけのこととして捉えるのではなくて、中学年、低学年での指導はどうであったかというような視点をもって取り組むことが大切である。中学校であれば、第2学年での結果が最終学年である3年生でどのようになっているのかという視点をもって、義務教育修了までの指導の在り方について考えることも必要であろう。さらには、小学校第6学年から中学校第1学年というつながりの部分についても、校区内での連携を図ることを期待する。大切なことは、教師一人一人の取組とともに、学校や地域が組織的、継続的に取組を進めることにあるのではないだろうか。

 

報告書の概要と活用に向けて

 

 

第Ⅰ章は「調査の概要」についてまとめている。児童生徒意識調査と教師意識調査における設問の意図やカテゴリーについても説明をしているので、各学校での分析の参考にしてほしい。また、平成19年度から導入した到達基準の設定と到達基準との比較による調査結果の分析方法についてもまとめている。各学校における目標設定の参考にしてほしい。

第Ⅱ章は、「調査結果の概要」についてまとめている。各教科の県正答率、評価の観点別正答率など県全体の傾向を把握することができるようになっている。各学校の調査結果と県の状況とを重ねてみることで、各学校のよさや課題が見えてくるであろう。また、児童生徒意識調査から見た佐賀県の子ども像(主に子どもの学校生活・家庭生活の様子が概観できる)、佐賀県の学習者像(学習に対する意識や取り組む態度などが概観できる)、教師意識調査から見た佐賀県の教師像(教師の指導の様子や指導に対する意識などが概観できる)をまとめている。

第Ⅲ章は、「各教科の調査結果の分析」についてまとめている。各教科における学習と指導の状況や成果と課題、さらには、具体的な設問を取り上げての指導改善の視点などをまとめているので、参考になる点については、指導に生かしていほしい。

第Ⅳ章は、「意識調査の結果の分析」についてまとめている。児童生徒意識調査については、児童生徒の学校生活・家庭生活など学習を取り巻く生活の状況について分析している。正答率等との関連が見られる部分については、その結果を記載している。学校生活におけるよさや課題の把握を進める上での参考になるであろう。また、家庭への協力を依頼する場合においても参考となるデータが得られるであろう。教師意識調査については、教師の意識と正答率等との関連について記載している。複数の教科に関係する内容や総合的な学習の時間の取組、学校組織マネジメントに関わることなどについてまとめている。グラフなども示しているので、各学校の状況と照らし合わせながら、指導に生かしてほしい。

第Ⅴ章は、「自校データの分析と活用」についてまとめている。根拠に基づく学校改善に関わって、自校の調査結果を活用する視点について述べている。

 

指導改善のヒント
 

 

まずは、一人一人の教師が、自分の目の前にいる児童生徒の様子を思い浮かべながら、報告書を読んでほしい。「自分の学校の子どもはどうなのか?」とか「自分が指導している子どもたちはちゃんとできているのか?」など思ったことについて、分析ツールを使って調べてみてはどうだろうか。そこで見付かったよさや課題について、報告書の中の提言などをヒントにしながら、よりよい指導方法を自校の学習環境や自分の授業に取り入れることが指導改善の第一歩であろう。

しかしながら、個々の教師の取組だけでは、学校全体としての指導改善には至らないことが多い。一人の教師が6年間(中学校では3年間)を通して指導するということはまれであるし、中規模以上の学校では、学級集団も毎年変わるのが一般的である。系統的、継続的な指導を進めていくためには、どうしても学校としての共通理解・共通実践が必要であろう。また、様々な取組が行われてはいても、取組の教育的な意義や取り組む際の留意点などを指導する側の全ての教師が認識していなければ、数年で形骸化してしまうこともある。

問題を解決するためには、調査の結果や、日々の指導から得た経験知の中から、自校の課題となることを、全ての教師が共通に認識することが第一歩であろう。学校内での校内研修や教科部会等において、分析を行い自校の児童生徒の状況について考えてみることが大切であろう。

よさについては、自校の成果として保護者や地域に対してもアピールすることができるし、更に伸ばすための手立てを考えていけば、ますますよい結果をもたらすであろう。課題については、改善に向けて、何らかの共通実践が必要であろう。どのような実践が望ましいかということについては、報告書の中でも多岐にわたって、提言をしている。これらを参考にしつつ、目の前の児童生徒のことをしっかりとイメージして、必要な実践内容を導き出してほしい。その際、関係する全ての教師が、継続的に共通実践できる内容であることをしっかり確認することが大切であろう。

課題となることは、国語、算数(数学)、理科、社会、英語の教科だけに関わることではない場合もあろう。調査の対象とはなっていない教科においても、授業の進め方や宿題の出し方、学習形態の工夫など共通に取り組むべきことが多くある。関係教科だけの課題とせずに、学校全体として取り組むことが大切であろう。

教科指導における課題だけでなく、学校生活に関わることや家庭生活に関わることについても課題は見付かるであろう。課題の解決に向けては、生徒指導担当や養護教諭などが中心となって、手立てを考えていくことや、保護者会などを通して保護者に協力を求めていくことなども考えられる。分析ツールから出力される資料などが有効に活用できるであろう。

採点・入力と多くの教師の尽力によって実施された学習状況調査だが、得たデータには無限の可能性がある。教師一人一人のアイディアや学校の創意工夫によって、指導改善が実現し、佐賀県の児童生徒によりよい指導がなされることを望みたい。



最終更新日: 2012-10-15