「意思決定を取り入れた討論型の学習」に取り組んでみませんか!

              
実践事例3
小学校第6学年 「明治の国づくりを進めた人々」その1
 
単元について
 学習指導要領の内容(1)「キ 黒船の来港、明治維新、文明開化などについて調べ、廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い、欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことが分かること』を受け、歴史を学ぶ意味を考えさせる学習である。あわせて、自分たちの生活の歴史的背景、我が国の歴史や先人の働きについて理解と関心が深まることをねらう。
 

本単元では、江戸幕府による鎖国日本が、明治政府による近代化日本へと急速に転換を遂げる大きな社会改革について調べる中で、殖産興業や徴兵令などの諸政策を行い欧米諸国に負けない国づくりを目指して近代化を進めたことやこれらのことに関わる人々の思いを考えさせることをねらう。その際、当時の状況を踏まえながら、明治政府と国民の立場から諸政策の効果について検討することで、社会的事象の意味について理解を深めるとともに、多面的、総合的な見方や考え方から考える力を育成するのに適した単元であると考える。

 児童は、歴史学習に意欲的だが、自分の考えを発表することについては、消極的である。また、テーマを決めて友達と話し合ったり、自分の考えを主張したりする活動を社会科で行った経験がある児童は少なく、自分の考えの理由を述べることについて、誤答や他者からの評価に対する不安を述べている児童が多い。
 指導に当たっては、まず、アメリカをはじめとする欧米の国々の圧力により開国させられたことや不平等条約の締結は、国力の違いによるものであったことに気付かせる。次に、明治政府が殖産興業や徴兵令などの諸政策を行い欧米に負けない強い国づくりを目指した理由を考えさせる。このようにして、明治維新の諸政策は、新しい社会をつくる上でどのような効果があったのかを検討させ、明治維新についての自分なりの考えを構築させたい。
単元の目標
 明治政府が殖産興業や徴兵令などの諸政策を行い、欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことについて検討し、社会のあり方について討論することを通して、理解を深め、根拠を明確にして自分の考えを表現できる。
単元の評価規準
社会的事象への
関心・意欲・態度
社会的な
思考・判断・表現
観察・資料活用の
技能
社会的事象についての
知識・理解
○黒船の来航、明治維新、文明開化など江戸幕府による鎖国日本が、明治政府による近代化日本へ急速に転換を遂げる大きな社会改革に関心をもち、それを意欲的に調べている。
○歴史を学ぶ意味やよりよい社会の在り方について考えようとしている。
○富国強兵や殖産興業など欧米諸国に負けない国づくりを目指して近代化を進めたことやこれに関わる人々の思いについて課題意識をもち、課題解決に向けて複数の立場や視点から考え、追究している。
○よりよい社会のあり方について「国家の利益」や「国民の生活」を視点に、理由付けて、適切に判断し、自分の言葉で表現している。
○富国強兵や殖産興業など欧米諸国に負けない国づくりを目指して近代化を進めたことやこれに関わる人々の思いついて、文化財や地図、年表、その他の資料を活用し、必要な情報を集めて読み取っている。
○必要な情報として調べたことを図や表にまとめている。
○富国強兵や殖産興業など欧米諸国に負けない国づくりを目指して近代化を進めたことやこれに関わる人々の思いを理解している。
単元の指導計画(全8時間)
過程
主な学習活動
教師の指導・支援
時配







○江戸時代の寺子屋や町の様子と明治時代の小学校や町の様子の絵図を比較し、相違点を調べる。
○調べて疑問に思ったこと、もっと調べたいことを発表し合い、学習のめあてをつくる。
○相対する資料を提示し、比較させる。これにより、服装や建物などから人々のくらしが大きく変わったことに気付かせ、明治維新への関心を高めさせる。
○鎖国から開国へと大きく転換するきっかけとなったペリー来航とその目的を理解し、幕府の反応や国内の様子を知る。 ○開国についてペリー、幕府、日本の人々などの立場から、当時の様子を調べさせる。これにより、複数の立場による見解の違いに気付かせる。
 開国は日本にとってよかったのかどうか考えよう 《学習問題T》
調

○不平等条約が結ばれた背景と内容を理解し、日本が悪影響を受けていたことを知る。

○ペリー来航から開国に至るまでの経緯を踏まえ、開国に関わる複数の社会的事象を関連付けて開国の影響を考える。
○不平等といわれる「領事裁判権を認める」、「関税自主権がない」ことを絵図を使って補足説明する。
○前時までに理解させた、開国のきっかけから不平等条約の締結までを図式化させることで、理解の関連付けを図る。
○前時に考えたことを基に、日本が豊かで強い国づくりを目指していたことを知る。
○開国についての是非について、自分なりの考えを発表し合う中で、「国家」と「国民」の立場で見解が分かれたことに気付く。
○開国による負の影響と明治政府が求めた国づくりを関連付けて考えさせる。
○自分なりの考えにおける理由付けを自分の言葉で表現させる。
○明治維新で行われた諸政策について、目的や政策内容、問題点などを調べ、「国家」と「国民」で見解が分かれる典型的な事例として、「徴兵令」について、自分なりに評価する。 ○明治維新で行われた諸政策について、「国家」と「国民」のそれぞれの立場で評価させ、「徴兵令」に限った自分なりの考えをもたせる。






○「徴兵令」の個々の評価について、「何を大切にすべきだったのか」を論点にミニ討論を行う。
○「地租改正」、「殖産興業」の評価を加えることで、「国家の利益を優先する」と「国民の安定した生活」の観点を創出し、明治維新についての自分なりの考えをもつ。
○「徴兵令」についてのミニ討論の中で、「国家の利益」と「国民の安定した生活」との間で評価が割れてしまい、大切にすべきものが違っていることに気付かせる。これにより、討論への意欲付けとする。

論題 明治維新によって社会はよくなったのだろうか。《学習問題U》

○明治政府の国づくりや国民の様子などについて、再調査、追調査をする。
○大日本帝国憲法や国会開設など明治維新の終末の出来事、個々が調べ足りない立場や状況を調べさせ、自分の評価に加えさせる。
○「明治維新によって社会はよくなったか」について討論を行い、意見交流を基に自分の考えを見直す。 ○明治維新について、「国家の利益」と「国民の生活」を観点に討論させ、根拠を基に意思決定させる。
                                                
 
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