生きて働く言語能力を育てる「国語科学習指導の具体策」を提案します!

   

授業づくりの基本構想−学習指導要領のねらいに対応した授業づくり

新学習指導要領が目指すもの
  『中学校学習指導要領解説 国語編』(平成20年9月)より抄出
〔改訂の基本的な考え方〕
@ 「生きる力」という理念の共有 C 確かな学力を確立するために必要な授業時数の確保
A 基礎的・基本的な知識・技能の習得 D 学習意欲の向上や学習習慣の確立
B 思考力・判断力・表現力等の育成 E 豊かな心や健やかな体の育成のための指導の充実
〔国語科に求められていること〕
国語に対する関心を高め、国語を尊重する態度を育成すること
実生活で生きて働き、各教科等の学習の基本ともなる国語の能力を育成すること
言語文化に親しむ態度を育成すること
〔国語科改訂の要点は…〕
自ら学び、課題を解決していく能力の育成を重視し、指導事項については学習過程が一層明確化された。
「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の各領域の内容に言語活動が具体的に例示され、指導事項を言語活動を通して指導することが一層重視された。
指導内容を系統的・段階的に上の学年につなげるとともに、螺旋的・反復的に繰り返しながら学習し、能力の定着を図るために、重点を置くべき指導内容を明確にし、その系統化が図られた。
伝統的な言語文化に関する指導の重視や読書活動の充実が求められている。
漢字指導や書写の指導の改善が求められている。
  〔プロジェクト研究で捉える学習指導要領のねらい〕
 
基礎的・基本的な知識・技能の習得 言語活動の充実 を通して実現すること。
思考力・判断力・表現力の育成 学習過程の明確化
主体的な学習態度の育成 学習の系統性の重視
ことは3
言語活動を位置付けた授業づくり
   新学習指導要領において、言語活動の充実は各教科を貫く重要な改善の視点です。特に国語科では、各教科等で言語活動を行う能力を育成していく必要があります。そこで、佐賀県教育センタープロジェクト研究中学校国語科(平成22年度・23年度)では、言語活動を単元に位置付けた授業づくりについて考えてきました。その中で、新学習指導要領全面実施に向けて準備しておきたい授業づくりに関する留意点を以下のようにまとめました。
  言語活動の考え方
  〔言語活動を単元に位置付けること〕
   言語活動を適切に単元に位置付けるためには、指導事項と言語活動の特性を踏まえて設定をすることが大切です。新学習指導要領には、各領域ごとに言語活動例が示されていますが、これはあくまでも例なので、目の前の生徒の実態をしっかりと把握し、その課題の解決に適した言語活動を単元に位置付ける必要があります。
  〔言語活動の充実〕
   国語科においては、発達の段階に応じた言語活動を行う能力を育成することが求められています。中学校国語科において、社会生活の場面を想定した言語活動を単元に位置付けることは社会生活に生きて働く言語能力の育成につながると考えます。各領域の能力が相互補完的に活動を支える言語活動の機能を十分に理解し、課題解決につながる活動になるよう工夫することで、活動は充実したものになります。また、生徒の意欲を喚起し、主体的な学習態度の育成を図ることにもつながります。
  〔言語活動を通して生きて働く言語能力の育成を目指すために〕
   そこで本研究では、言語活動の充実を通して、生きて働く言語能力を育成するために、次の点に留意した授業づくりの提案をしていくこととしました。
身に付けさせたい力を明確にし、生徒が自分の問題として取り組むことができるような課題を設定することを重視する。
社会生活の場面を想定し、学習内容の系統性に配慮しながら重点を置くべき指導事項を明確にした活動を設定する。
相手、目的や意図、多様な場面といった条件を明らかにするとともに、生徒が学習の見通しをもったり、学習を振り返ったりすることができるような工夫をする。
授業づくりの視点
  新学習指導要領のねらいに対応し、生徒の実態に即した授業づくりを行うために、次の4点を授業づくりの視点として考えています。
 
視点
視点の考え方
視点1
新学習指導要領の指導事項を基にした生徒の実態把握
生徒の実態に即した授業づくりを行うために、単元構想を行う前に、その実態を具体的に把握しておく。
↓
新学習指導要領の指導事項に基づいたアンケートによる意識調査や学習状況調査等の結果を利用する。
視点2
学習内容の系統性を意識した重点を置くべき指導事項の明確化と教材選択
生徒の主体的な学習を促し、身に付けるべき知識・技能の習得を図るために、学習内容の系統性を意識した上で指導のねらいを明確にし、そのねらいに合った教材を選択する。
↓
単元間において、学習内容がどのようにつながっているのかを把握し整理する。その上で、本単元で重点を置き、言語活動を通して指導すべき指導事項を明確にする。
指導のねらいに応じた教材選択を行う。
視点3
言語活動の充実を図る学習活動の工夫
基礎的・基本的な知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力の育成を図るために、身に付けた知識・技能を活用する場としての言語活動を単元に意図的に位置付け、位置付けた言語活動をより効果的に行うための工夫を行う。
↓
社会生活の場面を想定した言語活動を意図的に単元に位置付け、スモールステップによる学習活動やモデルの提示などの工夫を行う。
ワークシートや補助資料、学習の手引きなどを利用して生徒の主体的な活動を促す。
視点4
学習の見通しのもたせ方と学習の振り返らせ方の工夫
単元のねらいを達成し、生徒の主体的な学習態度の育成につなげるために、生徒に学習の見通しをもたせる手立てや、身に付けた力を自覚する振り返りの手立てをできるだけ多くもっておく。
↓
学習計画表やワークシート、手引き、評価表等を工夫し、効果的に利用する。事前アンケートと同じ項目で事後アンケートを実施し、その結果を利用する。
授業の流れ
  授業づくりにあたっては、前述の「授業づくりの視点」を踏まえ、以下の流れと考え方で単元及び1時間の授業を構想します。それぞれの場面での具体的な手立てについては、教師用手引きや授業展開案を提案していきます。
 
見通しをもたせる
身に付けるべき知識・技能や授業のゴールについての意識をもたせ、単元全体や1時間の学習の見通しをもたせる。
     
身に付けさせる

習得↓活用



学習内容の系統性を明らかにした上で、本単元や本時における指導のねらいを明確化し、スモールステップによる学習活動やモデル提示等の工夫や活動を支えるワークシートや補助資料等を整備して、知識・技能の習得を図る。
習得した知識・技能を意図的に活用させるための言語活動を通して、思考力・判断力・表現力の育成を図るとともに、これまでに習得した知識・技能の定着を図る。
     
振り返らせる
本単元や本時における学習を振り返らせることを通して、身に付けた知識・技能や養われた思考力・判断力・表現力についての自覚を促す。
新しい評価の考え方
   学習指導要領の改訂に伴い、平成22年3月に中央教育審議会が「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」をまとめ、「生きる力」に基づく学習を評価する考えと実践方策が提言されました。その後、順次、参考資料が発信され、平成23年7月には国立教育政策研究所教育課程研究センターより「評価規準の作成,評価方法等の工夫改善のための参考資料」が発表されました。新学習指導要領における学習評価の進め方について考え、対応していく必要があります。
  〔新しい評価に関わるキーワード〕
   

画像目標に準拠した評価

画像指導と評価の一体化

 学習指導要領に示す目標に照らしてその実現状況を評価する「目標に準拠した評価」については引き続き着実に実施することが求められています。そのために、指導事項に応じて身に付けさせる力を明確にした目標を設定し、評価規準を評価方法と共に指導計画に適切に位置付け、どのような目安で評価するかを明確にして指導に当たることが必要になります。このようにして、生徒の学習状況を適切に評価し、評価を指導の改善に生かすことで「指導と評価の一体化」がより一層明確に図られることになります。
  〔参考資料〕
 


文部科学省 『小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要領の改善等について』 平成22年 5月
国立教育政策研究所 『評価規準の作成のための参考資料(中学校)』 平成22年11月
国立教育政策研究所 『評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料(中学校 国語)』 平成23年7月
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/shidousiryou.html
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