生きて働く言語能力を育てる「国語科学習指導の具体策」を提案します!

1 研究の概要
(1) 研究テーマ

生きて働く言語能力の育成を目指した国語科学習指導の在り方
−言語活動の充実を通して−

(2) 研究の趣旨
学習指導要領から

〔国語科改訂の趣旨〕
言語の教育としての立場を一層重視しています。

→言語活動例が領域ごとに内容に位置付けられ、言語活動の充実が求められています。
○子どもたちの発達の段階を踏まえた学習の系統性を重視しています。

→螺旋的・反復的にくりかえしながら学習させ、能力の定着を図ることを基本としています。
○古典、漢字、敬語、読書の指導を重視しています。

→〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕を設けています。
    また、読書活動を内容に位置付けています。

全国学力・学習状況調査及び佐賀県小・中学校学習状況調査の結果から
〔平成21年度の課題〕
全国学力・学習状況調査より「自分の考えを相手が納得するように効果的に書くこと」と「文章を論理的にとらえて評価すること」に課題があることが分かりました。また、佐賀県小・中学校学習状況調査では「必要な情報を選択し、伝いたい事柄が明確に伝わるように書くこと」と「目的に応じて論の展開をおさえ、理解すること」に課題が見られました。
〔平成22年度の課題〕
「書くこと」の領域についてはおおむね改善が見られましたが、「読むこと」の領域で「目的に応じて必要な情報を読み取り、自分のものの見方や考え方に生かすこと」に課題がありました。
〔平成22年度の研究〕
「相手や目的に応じて書こう」「文章の構成や論理の展開をとらえよう」といった授業展開案を提案し、授業を支える教材等も課題の解決を目指して提案しました。
〔平成23年度の課題〕
「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」領域すべてにおいて、自分の考えを形成する力に関して課題があることが分かりました。
〔平成23年度の研究〕
「読むこと」の領域に特に力を入れ授業展開案を提案しました。また、基礎・基本の力を〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕の観点から捉えた学習プリントを提案しました。
本研究の考え方
〔生きて働く言語能力とは〕
「実生活の様々な場面において、生徒自身が直面した課題を主体的に解決することに資する国語の能力」と、 本研究では捉えました。
〔生きて働く言語能力の育成過程〕
「生きて働く言語能力」の育成にも段階があると考えます。次の図のように学習者の発達の段階を踏まえた学習の系統性を重視し、校種段階・学年段階ごとに具体的な場面を想定した指導が必要です。小学校では日常生活の場面を、中学校では社会生活の場面を、高等学校では社会人として要求される場面を想定した言語活動を授業の中に位置付けた学習指導が求められると考えます。
発達の段階における生きて働く言語能力の育成のイメージ図
以上のことを踏まえ、「生きて働く言語能力」の育成を目指して、基礎的・基本的な知識・技能を習得させ、それを活用する学習を通して思考力・判断力・表現力を育成する中学校国語科の学習指導の在り方についての研究を進めることとしました。国語科の学習場面で、言語活動の充実を図ることが、結果として学習者の発達の段階に応じた「生きて働く言語能力」を育成することにつながると考えます。
〔言語活動の充実〕
国語科においては、発達の段階に応じた言語活動を行う能力を育成することが求められています。 中学校国語科において、社会生活の場面を想定した言語活動を単元に位置付けることは社会生活に生きて働く言語能力の育成につながると考えます。「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の3領域の能力が相互補完的に機能しあう言語活動の特色を十分に理解し、課題解決につながる活動になるよう工夫することで、活動は充実したものになります。また、生徒の意欲を喚起し、主体的に学習に取り組む態度を育成することも言語活動の充実に欠かせない要素です。

言語活動における知識・技能の習得と活用の関係図

〔知識・技能は活用させながら習得させる〕
言語活動を通して、知識・技能の習得・定着を図り、思考力・判断力・表現力を養うには、国語科の学習指導場面で知識・技能を活用させて課題解決を図らせる単元構想が必要になります。生徒は学習課題を設定し、計画を立て、見通しをもって学習に取り組み、課題の解決を図る過程で力を身に付けていくことになります。知識・技能を活用させながら習得させる言語活動の在り方を具体化する必要があります。


〔単元を貫く課題解決的な言語活動〕
単元を構想する際は、課題設定から課題解決に向かう言語活動の過程が学習の過程であると同時に、指導の過程であるように構想します。その際、重要なことは、指導事項を重点化し、指導目標を明確にすることです。

単元の学習(指導)過程のイメージ図

学習指導要領における指導事項と言語活動例の関係を示すと次のようになります。指導事項は、原則として言語活動の流れに沿って示されています。(A「話すこと・聞くこと」領域については、「話題設定や取材」の後に「話すこと」「聞くこと」「話し合うこと」の順に指導事項が示されており、必ずしも言語活動の流れに沿っているわけではないので注意が必要です。)

実際の単元構想に当たっては、指導事項を絞り込み、それ以外の学習活動については既習内容によるものとしたり、情報や条件を提示して活動内容を限定したり、活動自体を省略したりするなどして指導事項の焦点化を図ります。さらに、その焦点化した指導事項に応じて評価を進めます。以下は、その一例を示したイメージ図です(指導事項イは既習内容によるものとする、指導事項エは情報や条件を提示して活動内容を限定する、指導事項オは活動自体を省略する)。
文部科学省教科調査官 冨山哲也先生
佐賀県教育センター中学校国語科講座(2010/08/17)資料を基に作成
〔指導と評価の一体化〕
言語活動を通して、知識・技能の習得・定着を図り、思考力・判断力・表現力を養う際に課題となることの一つに、指導事項を多く設定して指導目標が曖昧になりやすいということが挙げられます。指導事項を焦点化し、これに応じた評価規準の設定、評価方法の工夫改善、評価の目安の具体化等を通して指導と評価の一体化を目指す授業づくりの在り方を探る必要があります。
(3) 平成22・23年度の研究の成果と課題
平成23年度までの研究 これまでの研究の成果と国語科学習指導の具体策をまとめると下の図のようになります。
研究の成果と国語科学習指導の具体策
(4) 今年度(平成24年度)の研究
研究の方針
〔平成24年度の研究の方針〕
本研究では、これまでの研究の成果と課題を受けて、「書くこと」「読むこと」領域において自分の考えを形成する力を養う指導と評価の在り方について見直し、再提案をしていきます。具体的には以下の通りです。
学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の考え方に基づいた授業展開案の見直し
ICTや学習プリント等の効果的な活用の視点からの授業展開案の見直し
授業実践を通した検討と必要に応じた授業展開案の工夫改善
研究の方法と内容 研究の方法と内容について下の図のようにまとめました。
研究の構想図

以上の方法と内容で、生きて働く言語能力の育成を目指した国語科学習指導の在り方を探ります。

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