「食べる」ことから考えよう!−生徒自身が気付き、考える場面を重視した「食」の授業づくりの提案−

 3 実践事例
 (1) 授業計画案(食育を意識した、家庭基礎における年間指導計画の提案)
 

家庭基礎では、人の一生に関わる様々な分野の学習を2単位(70時間)で行います。学習内容が多岐にわたるため、学習させたい内容に対して授業時間が非常に少ないことが悩みです。このことから、内容を関連させた総合的な題材を工夫しながら指導することが大切だと考え、今回の研究では、食育を意識し、問題解決型学習につながる「気付き」の場面を取り入れた題材を検討しながら年間指導計画を立てました。年間指導計画の作成に当たっては、実教出版の「044 新家庭基礎」のシラバスを基に題材と学習内容を作成しました。

年間指導計画の中で、題材「『食べる』ことから考えよう −自分のからだと地球を守るために、高校生の私ができることは何だろうか?−について、指導方法と指導教材及びワークシートの研究と作成を行い、検証授業を実施しました。(表中の色つきの部分)

 

「家庭基礎」指導計画案

■ 考えたり、発表したりする活動を重視し、社会的視野をはぐくむための教材を考えました。

■ 学習内容を関連させた題材について考えました。

題材 学習内容
【学習指導要領の内容との関連 】
具体的な学習内容 時配
家庭科を学ぶに当たって
−気付き、考え、話し合おう−
家庭基礎を学ぶに当たってのガイダンス
・中学校までの学習内容の復習
・「気付くこと」「考えること」「話し合うこと」の大切さ
・アンテナを高くしよう、体験してみよう
1
「私」「家族」「社会」のつながり
−広い視野をもとう−
・自分を見つめる【(1)ア】
・マインドマップによる「自分再発見」
1
・家族を見つめる【(1)ア】
・インタビュー(宿題)による家族の生活時間調査、発表
・自分と家族とのつながりを知る
2
・生活時間と家族の移り変わり
                 【(1)ア、エ】
・家族の形態と法律の変化について
・家族の生活時間の変化と家事の外部化
2
・現代の消費生活【(2)エ、オ】
・大量生産、大量消費からの脱却
・環境に配慮した生活について
2
・消費者トラブルに合わないために
                   【(2)エ】
・消費者被害の実態と消費者としての在り方
2
私の人生、やりたいこととやれること
−ライフステージごとの経費を知る−
・ライフステージごとの経費【(2)エ】
・家計の内容と管理
・ライフステージごとの経費
2
・どんな生き方をしたい?【(2)カ】
・様々な仕事、生き方を知り、自分の将来像を考える
1
・経費を念頭に置いた将来設計
              【(1)ア、(2)カ】
・就職、結婚、子育て、生き方を考える
・結婚相手に求める条件は?
(自分はどういうスタンスで生きる?)
2
「日本型」を見直そう!
・自給自足が注目されている理由を考える
                  【(2)ア】
・テレビ番組、本から考える
1

「食べる」ことから考えよう
−自分のからだと地球を守るために、高校生の私ができることは何だろうか?−
(全6時間)

・食べることの大切さを知る
・日本の「食」の現状と海外事情につい
 て             【(2)ア、オ】

            ※授業展開1参照
・ビデオや討論を通して、食べることの意味を知る
(『いのちの食べかた』の一部を視聴)
・食糧自給率と現代の食生活について
2
・私・家族・日本の未来について考える
                 【(2)ア、オ】
             ※授業展開2参照
・食生活ビンゴ、冷蔵庫チェック
・日本人の消費行動と世界の食糧事情の関係
2
・「私」からできることの提言
             【(1)エ、(2)オ】
            ※授業展開2参照
・私にできること(提言シートによる提案と発表)
→学校家庭クラブ活動と連動し、他のクラスの提言も
 知る
2
こころと身体をつくる食事のために
・栄養素の働きと食品の栄養
 (5大栄養素)
・調味料、香辛料など
・肉、魚、卵、牛乳の調理    【(2)ア】
・中学校での習得事項を振り返りながら学習を進める
4
・食品の保存方法、加工食品の上手な取り
 入れ方
              【(2)ア】
・加工食品の上手な使い方を考える
・「私にもできる」安全な食事を提案しよう!
2
やってみよう、ホームプロジェクト
・ホームプロジェクトの意義と問題発見
                      【(3)】
・マインドマップを使い、問題を発見する
・ポートフォリオ学習の方法を知る
2
・夏休みの実践を発表する(発表会)
                      【(3)】
・自分の実践を発表し、提案する
・他の人のアイディアを知り、自分の考えを深める
2
「私にもできる」食事計画
・栄養摂取量の目安と献立計画 
                     【(2)ア】
・摂取量、献立、配膳について知る
2
・実習1 親子どんぶり・すまし汁
                     【(2)ア】
・調理器具の使い方、ご飯の炊き方、だしの取り方と
 使い分け
2
・実習2 鯵フライ・サラダ・スープ
                     【(2)ア】
・魚のおろし方、揚げ物、野菜の切り方
2
・実習3 おせち料理【(2)ア】
・伝統料理(栗きんとん、紅白なます、筑前煮、田作り)
2
やさしく、住みやすい社会をつくろう
−環境にやさしく暮らすために−
<住生活>
・住居の働きと特色              
【(2)ウ】
・地域による建築方法の違いから住宅の意味を考える
2
・間取りの見方とアパートの借り方
                     【(2)ウ】
・新聞広告を使い、学習する
2
・安全に住むための工夫【(2)ウ】
・健康に優しい住宅、高齢者に優しい住宅について
 考える
・住宅や施設、街中のバリアフリーレポート(宿題)
2
<衣生活>
・衣服の文化と機能、着ることの意義

                   【(2)イ、エ】
・民族衣装、制服、流行から考える
・激安衣服について考える
2
・衣服の表示の見方と買い方
・衣服の手入れと保管方法
     【(2)イ】
・繊維組成や日常の手入れ方法から、収納や購入の
 工夫を考える
2
・衣服の手入れとリサイクル【(2)イ】
・衣服の有効利用について提案する
(リフォームやリサイクル例の提案)
4
生きること、育つこと、歳をとること
−高齢者に学び、子どもに伝える−
<保育>
・親になること
                【(1)ア、イ】
・親になることの意義を知る
・少子化、幼児虐待問題の背景について考える
2
・乳幼児の成長
・身体とこころの発達
       【(1)イ】
・乳幼児とのふれあいを通した学習をする
2
・子育て今昔【(1)イ】
・現代の子育て事情の問題点を知り、改善について
 考える
2
・子どもと食育【(1)イ、(2)ア】
・子どものために、何を食べるか、何を食べさせるか
 考える
・読み聞かせを通じた「食育」の可能性について考える
2
・家庭保育と集団保育
・子育てへのサポート

                   【(1)イ、エ】
・集団保育施設のしくみや法律について知る
2
<高齢者>
・高齢者の心身の特徴
・高齢者体験
            【(1)ウ】
・歳をとるということ(心身の変化)について考える
・日本の高齢社会の現状、問題点を知り、改善について
 考える
2
・高齢社会の課題と福祉制度【(1)ウ】
・福祉制度だけでなく、終末期医療の在り方についても
 考える
2
私は、こう生きる!
・学習内容を振り返り、自分の生き方を
 考える
                 【(1)ア、(2)カ】
・どのような生き方をしたいのか、どのような社会をつくり
 たいのか考える
2
合計時間数 70
044「 新家庭基礎」(実教出版)のシラバスを参考にして作成しました。
 
 (2) 授業実践〜題材『「食べる」ことから考えよう!』〜 (全6時間)

年間指導計画の中の、題材『「食べる」ことから考えよう!』について、授業内容やワークシート、教材を研究し、検証授業を行いました。授業は、2時間連続の授業と仮定し、指導計画を立てました。

また、検証授業における生徒の反応や教師の反省点を基にさらに教材研究を行い、授業に活用できる教材を提案しました。さらに、「食」分野における導入教材として、野菜クイズを試作しました。ゲーム感覚で野菜の花を覚えることができ、食への興味を喚起することができます。

(ア) 授業展開及び指導案について 

『「食べる」ことから考えよう!』(全6時間)という題材を掲げ、大きく2つの授業展開を考えました。

 
題材名

「食べる」ことから考えよう! 〜自分のからだと地球を守るために、高校生の私ができることは何だろうか〜

 
「食べる」ということは、人間が生きていく手段としてだけではなく、人と人とのコミュニケーションや文化の伝承などの役割を果たしています。しかし、生活が便利になっていく中で、日本では「食べる」ことが少しずつおろそかにされ、食べ物に対する感謝の気持ちも薄れてきているように感じます。また、ファーストフード店に幅広い年代が押し寄せていることからも、「安ければよい」という意識がうかがえます。食料自給率が低迷する一方、食べ残しや賞味期限切れの調理済み食品が大量に廃棄されている日本の現状を直視し、世界の食糧事情の問題について真剣に考える必要があります。
  まずは、健康な心身をつくるために、そして、世界に目を向けたとき、自分はどのような食生活を送るべきなのかを、授業を通して真剣に考えさせたいと思います。食の問題を自分のこととしてとらえさせ、問題を解決しようとする姿勢へとつなげるための全6時間の授業計画を立てました。
題材の評価規準
 
消費生活と環境とのかかわり、食事と健康とのかかわりに関心をもち、各自の食生活を振り返りながら自分の問題としてとらえ、意欲的に学習活動に取り組んでいる。(関心・意欲・態度)
 
現代の食生活の問題点や家族の食生活について、日常の食事と関連付けて具体的に考えている。(思考・判断)
 
家族の食生活を健康に営み、環境とのかかわりを考えた生活について検討することができる。(技能・表現)
 
家族の食生活を健康で安全に営むために必要な基礎的・基本的な知識を身に付けている。消費生活と環境とのかかわりについて理解している。(知識・理解)
(イ) 授業展開1(1・2/6時)
 
学習課題

  私たちの消費行動と日本の食料自給率との関係を知ろう。
 
消費行動を振り返りながら、一人一人の消費行動と日本の食糧自給率の関係について考える。また、資料から世界の食糧事情を読み取る活動、日本の食習慣の移り変わりを知る活動を通して、今の日本の食生活についての問題点を探る。
 

@本時(1・2時間目)のねらい 

  日本の食料自給率の現状と変遷および世界の食料事情との関連を理解させ、自分や 家族の食生活のあり方につ
  いて、振り返りながら考えさせる。

  A本時(1・2時間目)の評価規準
  ア 食事と健康とのかかわりに関心をもち、自分や家族の食生活を振り返りながら 意欲的に学習活動に取り組んでい
    る。(関心・意欲・態度)
  イ 日本の食料自給率と世界の食料事情の現状から、自分や家族の食生活について日常の食事と関連付けて具体的
    に考えることができる。 (思考・判断)
  ウ ハンガーマップを通して、世界の食料事情について理解している。(知識・理解)
  B本時(1・2時間目)の授業展開
   最初に、「食べること」と「着ること」の違いを考えさせます。高校生は、食べることよりもファッションに興味が高くなる時期ですが、健康な身体を作る大切な時期でもあります。導入部分で、食べたものはすべて吸収されることをしっかりと伝え、食についての興味を高めさせます。また、市販のDVD「いのちの食べかた」の一部を視聴させ、私たちの食生活が多くの命の犠牲の上に成り立っていることを理解させた上で授業に入ることで、食への興味と感謝の気持ちを育て、授業へと臨ませます。

   

 

生徒の学習活動

指導上の留意点

評価規準と方法
導 入
1.食べることと着ることの違いを考え、
  発表する。
2.DVD「いのちの食べかた」の一部を
  視聴し、食材が食卓にのぼるまでの
  過程を知る。
・「命は食にあり」という言葉を基に、 食べものはすべ
て吸収され、心と身体を作ることを理解させる。

・視聴メモを使い、効果的な視聴をさせる。


規準ア【関】
感想文
展  開
3.本時の学習内容を知る。 ・食料自給率について学習することを伝える。
・自分の生活を振り返りながら授業を受けるよう伝え

   
4.野菜の旬について考える。
  「野菜の花当てクイズ」を通して「旬」
  に気付き、野菜の旬と出回り状況に
  ついて考える。
・野菜の花の写真を見せることで、生徒の興味を喚起
する

・ゲームを通じて、野菜の旬を知らせ、旬でないもの
が出回っている理由を考えさせ、発表させる。

 
5.日本の食料自給率を知る。
  日本の食料自給率の低さを知りその
  原因を考える。
・グラフから、日本の食料自給率の低さを読み取らせ

・輸入がストップした場合の日本の食生活について具
体例を挙げ、危機意識をもたせる。

規準ウ【知】
ワークシート
6.世界の食糧状況に目を向ける。
・ハンガーマップを配布し、気付いたことを発表させる。

・飢餓で苦しむ国々の状況を伝え、自分の食生活に
ついて振り返らせる。

規準イ【思】
ワークシート
7.日本人の食生活の変遷を知る。 ・「一汁三菜」について説明し、食の欧米化と食糧自
給率の低下の関係性を説明する。

・「地産地消」という言葉について説明する。
   
まとめ
8.本時の内容をまとめ、日本の食料
    自給率を上げるためにできること
   を考える。
・消費者の行動が市場を変えることを説明し、一人一
人が行動することの大切さを理解させる。

・自分にできることを考えさせる。
 

 

 C補足資料・教材

 ・ハンガーマップ  WFP(国連世界食糧計画)より購入(A0版) 

                *A4版はWebページからダウンロードできます。 http://www.wfp.or.jp/kyokai/hunger.html

 ・『世界と地球の困った現実』 日本国際飢餓対策機構編

 ・『フードクライシス 食が危ない!』 ディスカバー社編

 ・野菜の花の写真 「野菜の花図鑑」より作成  http://www.cc9.ne.jp/~ssuto/yahanaframe.htm

 ・DVD『いのちの食べかた』 監督/ニコラウス・ゲイハルター  新日本映画社

 

(ウ) 授業展開2(3〜6/6時)
 
学習課題

  あなたの考えが地球を変える!〜気付こう、変わろう、提唱しよう〜
 
自分自身の食生活を振り返り、望ましい食事について考える。また、食糧廃棄の問題や地球環境の問題について知り、DVDの視聴等を通して、食事と心身の健康とのつながりについても考える。自分がどのように変わるべきか考え、提言シートに記入する。
 
 @本時(3・4時間目)のねらい 

 自分や家族の食生活を振り返りながら、食生活と環境問題との関連に気付かせ、問題点とその改善方法について検
  討させる。

 A本時(3・4時間目)の評価規準
  ア 食事と健康とのかかわりに関心をもち、自分や家族の食生活を振り返りながら、 自分の問題としてとらえ意欲的に
    学習に取り組んでいる。(関心・意欲・態度)
  イ 家族の食生活と環境とのかかわりを考えた生活について検討することができる。 (技能・表現)
 B本時(3・4時間目)の授業展開
 

この授業では、前日の食事を題材にしたビンゴゲームを取り入れ、遊びながら自分の食生活に目を向け、食生活のバランスを考えることができるように仕向けました。ゲーム形式にすることで、周り友達の食生活と比べることができ、食生活そのものに関心をもつためのきっかけづくりになると考えます。また、冷蔵庫チェックや牛乳の買い方チェックを通して、家族の消費行動について目を向け、そこから日本全体の食の問題へと視点を向けさせるのがねらいです。コンビニエンスストアやファーストフード店での食糧廃棄の問題については、現場で働いている人の声やテレビによる報道番組の映像などがあればより効果的です。食糧廃棄の現状を取り上げた書籍を紹介しても効果があると思います。

バランスのよい食生活に興味をもたせ、まとめの時間に「食生活チェックカレンダー」を紹介することで、自分で取り組むヒントを与え、積極的な取り組みにつなげることができます。

 
生徒の学習活動

指導上の留意点

評価規準と方法
導 入
1.前時の学習内容を振り返る。
2.前時に記入したワークシート@を見
  直す。
・日本の食料自給率を上げる努力の大切さについて確認する。
展 開
3.本時の学習内容を知る。
 食生活を通して、自分や家族、地球全
 体に目を向ける。
・前時からのつながりを確認する。
・自分の食生活を見直し、家族の食へと視点を広げていくことを伝える。
 
4.自分の食生活を振り返る。
 食育ビンゴに記入し、普段の食生活の
  問題点を探る。
・ワークシートに食べたものを書き出すことで、自分の食生活(食事と間食の摂り方)について考えさせる。
・食育ビンゴゲームを通して、食事のバランスを視覚的に判断
させる。
食材や食べ方について周りと比較させることで、自分の食生活を判断させる。
規準ア【関】
食育ビンゴシート
5.家族の食生活を振り返る。
  冷蔵庫チェックを行い、買い物や食材
  の使い方の問題点を探る。
・自宅の冷蔵庫の中身を分析させ、周りの生徒と比較させることで、食材や調味料の使い方に関心をもたせる。
・「牛乳の買い方」アンケートを行い、結果を発表するとともに、売れ残りの牛乳の行方について予想させる。

6.日本の食料廃棄の実態について知
  り、 改善点を考える。
・コンビニエンスストアやファーストフード店における食料品(特に弁当やハンバーガー)の販売方法と保存時間について説明し、問題点を考えさせる。
・なぜこのような販売方法が行われているのか考え、発表させる。
規準イ【技】
行動観察
まとめ
7.本時の内容をまとめる。 ・自分の食生活のバランスについて考えさせ、「食生活チェックカレンダー」を紹介する。
・「食生活チェックカレンダー」の記入方法を簡単に説明し、
積極的に取り組んでみるように勧める。
 
 
 C本時(5・6時間目)のねらい 
  食事と心身の健康とのかかわり、消費生活と環境問題とのかかわりについて理解 させ、自分や家族の健康及び環境
  を考えた消費行動について検討させる。
 D本時(5・6時間目)の評価規準
  ア 食事と心身の健康とのかかわりに関心をもち、各自の食生活を振り返りながら、意欲的に学習活動に取り組んで
    いる。(関心・意欲・態度)
  イ 現代の食生活の問題点について、自分や家族の食生活と関連付けて具体的に考えることができる。(思考・判断) 
  ウ 家族の食生活と環境とのかかわりを考えた消費行動について検討することができる。(技能・表現)
  
 E本時(5・6時間目)の授業展開
 

この授業では、日本の食糧廃棄の問題だけでなく世界の食料事情にも目を向けさせ、日本の食生活の不自然さに気付かせることを一つのねらいとしています。その上で、現状を改善するための第一歩を踏み出すことが大切であることに気付かせ、自分ができることは何か考えさせることにより、世界の問題を自分のこととしてとらえさせます。

また、ドキュメンタリー映画「スーパーサイズ・ミー」を通して、誤った食生活は心にも影響を与えることを知らせます。この映画は数年前、有名になった映像作品ですが、「見たことがない」と答えた高校生が大多数でした。「この実験は極端すぎる」という批判もありますが、身体への影響が全くないわけではないことを伝えるためには、非常に効果的な教材だと思います。DVDの内容をまとめたパワーポイント教材を使うことで、短時間で内容を伝えることができます。

最後に、ここまでの学習内容を振り返らせ、「提言シート」に記入させることにより、自分の考えを整理させます。記入させた提言シートは、後日全員分を校内に掲示することで、他の学年や学級に対する提言としても使えます。また、他者の意見を短時間で知らせるために有効な手立てであると考えます。

 
 

生徒の学習活動

教師の指導内容

評価規準と方法
導 入
1.前時の学習内容を振り返る。
2.前時に記入したワークシートAの
  前半部分を見直す。
・自分の食生活のバランスについて確認させ、食生活
チェックカレンダーの記入の有無を質問する。

展 開
3.本時の学習内容を知る。
  地球全体に目を向けて食の問題を
  とらえ、自分ができることを考える。
食を通して、「自分」から「地球」へと視点を広げていく
ことを伝える。
・食の問題を自分のこととしてとらえるよう、伝える。
 
4.地球の食と政治・環境問題につい
   て考える。
  日本の食糧事情と世界情勢との関
  連について知る。
  家庭の冷蔵庫の様子を思い出し、
  自分が出来ることを考える。
・ハンガーマップを再度掲示する。
・前時の学習内容のうち、日本の食糧廃棄の実態に
ついて復習し、ハンガーマップを見ながら、 世界の食糧資源の偏りに気付かせる。
・フードマイレージについての説明、食糧廃棄とCO
排出量の関係についての説明を行う。
 
5.食事が心の健康にも寄与している
  ことを知る。
  「スーパーサイズ・ミー」の要約(文
  章)を読む。
  早寝早起き朝ごはん運動の意義を
  考える。
・「スーパーサイズ・ミー」がドキュメントであることを伝え、食べ物が心身に及ぼす影響について考えさせる。
・「スーパーサイズ・ミー」のダイジェスト(パワーポイント教材)を視聴させる。その後、DVD教材を視聴する。
(時間がなければDVD視聴は省略)
・食と心身の健康との関連について、保健の授業内容でも取り扱うことを説明し、重要なことであると認識させる。
・「早寝早起き朝ごはん」運動が推奨されている理由を考えさせ、発表させる。
規準ア【関】
行動観察
まとめ
6.本時の内容をまとめ、提言シートに
  自分の意見を記入する。
  感想をまとめる。
・これまでの学習内容を思い出させ、自分や家族ができることを考えさせる。
・提言シートに記入させ、「変わろう・変えよう」という意識をもたせる。
・提言シートを後日掲示し、みんなの意見を共有することを伝える。
・「気付く」「考える」こと、そして、「伝える」ことの大切さを確認する。
規準イ【思】
ワークシート

規準ウ【技】
ワークシート
話し合い活動ができる教室での授業
ハンガーマップからの読み取り作業

自分の考えを提言シートにまとめる

 F補足資料・教材

・DVD「スーパーサイズ・ミー」 監督/モーガン・スパーロック  株式会社クロックワークス

・「スーパーサイズ・ミー」ダイジェスト(パワーポイント教材)及び資料 自作教材

(3) 授業ワークシートおよび補足資料(ワークシート、パワーポイント教材等)

 (ア) 授業で使用したワークシート  
授業展開1 ワークシート@
授業展開2 ワークシートA
 (イ) DVD視聴のための教材(視聴メモ、パワーポイント自作教材)
「いのちの食べかた」視聴メモ (10分用)
「スーパーサイズ・ミー」ダイジェストppt (10分程度)

 (ウ) 授業で使用した補助教材(ワークシート)  
食育ビンゴシート
食生活チェックカレンダー

授業Aの導入で使用した教材です。使い方を説明します。

@ワークシートに、昨日一日の食事内容を記入する。

A記入したメニューを基に、ビンゴシートに記入をする。

 原材料と調理方法が交差する欄に食材名を記入する。

 また、自分の食べ方をチェックし、○を付ける。

Bすべて記入し終えたら、食品数を計算し、シートを見る。

C食品がシート上にどのように配置されているか確認する。

 *このゲームは正式なビンゴゲームではなく、ます目が

   最も不揃いなシートが優勝となる。

 *理想は、食材と調理法が偏らないいわゆる逆ビンゴ。

  逆ビンゴを目指しながら、自分の食べ方を振り返る。


授業Aの最後に(または、ロングホームルームの教材として)、使える教材です。1か月の食生活の目標を立て、毎日の食事と体調をチェックすることができます。使い方を説明します。

@17の項目から、自分ができそうな項目を3つ選ぶ。

Aチェックカレンダーの目標欄に3つの項目を記入する。

B毎日、食事の摂取状況と自分の体調を記入する。

C月の最後に、感想を記入し、提出する。

毎日記入することで、食生活と体調を管理することができます。また、自分で目標を設定するため、積極的な取り組みが期待できます。

食生活提言シート
授業で使えるワークシート教材を作成しました。
次ページのホームプロジェクトガイドもご覧ください。
 
 (エ) 導入に使える自作教材「野菜の花あてクイズ」

トップページは、代表的な野菜名を表示しており、マウスを近付けるとその野菜の花の写真が表示されます(左画面)。それぞれの野菜名をクリックすると、花を一覧にした画面が表示されます(中央画面)。野菜の簡単な説明を読み、花の写真一覧から正しいものを選び、クリックすると、正誤を判定するページが表示されます。また、それぞれの花の部分にマウスを近付けると、ヒントとして、少し成長した写真が表示されます。「こたえあわせ」のページでは、それぞれの花の部分にマウスを近付けると、野菜の名前が表示されます(右画面)。素材を「野菜の花図鑑」ホームページより提供していただき、自作しました。このページは、漢字を少なくし、小学生でも使えるように配慮しました。

*「野菜の花図鑑」http://www.cc9.ne.jp/~ssuto/yahanaframe.htm

 (オ) 理解を深めるためのパワーポイント自作教材  


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最終更新日:2010-03-17