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平成21年度「全国学力・学習状況調査」の結果とこれからの指導に向けて |
平成21年4月21日に実施された「全国学力・学習状況調査」の結果が8月末に文部科学省から提供されました。その結果を基に、本県の結果とこれからの指導についてお知らせします。
調査は、教科に関する調査(国語・算数)と質問紙調査(生徒質問紙と学校質問紙)で構成されています。また、教科に関する調査は、主として知識に関するA問題と、主として活用に関するB問題から構成されています。ここでは、主に教科に関する調査の結果について紹介します。 |
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平成21年度「全国学力・学習状況調査」の中学校数学(3年生)の調査結果について |
○ 領域別結果について |
種別 |
項目 |
平成21年度 |
平成20年度 |
佐賀県 |
全国 |
全国との比 |
佐賀県 |
全国 |
全国との比 |
A |
数と式 |
67.5 |
67.3 |
1.00 |
68.4 |
68.0 |
1.01 |
図形 |
62.8 |
64.6 |
0.97 |
59.9 |
62.7 |
0.96 |
数量関係 |
55.0 |
56.2 |
0.98 |
56.4 |
58.6 |
0.96 |
B |
数と式 |
62.5 |
61.4 |
1.02 |
55.5 |
54.2 |
1.02 |
図形 |
55.5 |
57.5 |
0.97 |
54.9 |
57.6 |
0.95 |
数量関係 |
55.2 |
54.1 |
1.02 |
45.0 |
44.7 |
1.01 |
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※「全国との比」とは、佐賀県全体の平均を全国平均(=1.0)と比較してみたものです。小数第三位を四捨五入しています。 |
平成20年度調査では、A・B問題の「数と式」、B問題の「数量関係」では、全国平均を上回るか、同程度でした。その他の領域では、全国平均を下回りました。平成21年度調査では、A・B問題の「数と式」、B問題の「数量関係」では、全国平均を上回るか、同程度でした。その他の領域では、全国平均を下回りました。 |
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○ 評価の観点別結果について |
種別 |
項目 |
平成21年度 |
平成20年度 |
佐賀県 |
全国 |
全国との比 |
佐賀県 |
全国 |
全国との比 |
A |
数学への関心・意欲・態度 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
数学的な見方や考え方 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
数学的な表現・処理 |
63.6 |
63.7 |
1.00 |
61.1 |
62.5 |
0.98 |
数量、図形などについての知識・理解 |
61.1 |
62.3 |
0.98 |
62.0 |
63.3 |
0.97 |
B |
数学への関心・意欲・態度 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
数学的な見方や考え方 |
52.1 |
52.4 |
0.99 |
46.4 |
47.0 |
0.99 |
数学的な表現・処理 |
70.6 |
70.1 |
1.01 |
66.7 |
63.1 |
1.06 |
数量、図形などについての知識・理解 |
86.1 |
85.3 |
1.01 |
- |
- |
- |
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※「全国との比」とは、佐賀県全体の平均を全国平均(=1.0)と比較してみたものです。小数第三位を四捨五入しています。 |
平成20年度調査では、B問題の「表現・処理」は、全国平均を上回っていますが、その他の観点では、全国平均を下回りました。これに対し、平成21年度調査では、A・B問題の「表現・処理」とB問題の「知識・理解」は、全国平均を上回るか、同程度でした。その他の観点では、全国平均を下回りました。 |
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A問題(主として知識に関する問題) |
○ 成果が見られる設問例 |
【A問題大問2(4)】(図形領域) |
○出題のねらい |
等式を目的に応じて変形することができる。 |
○傾向 |
正答率は、48.5と全国平均を3.0ポイント上回っています。等式の性質などの根拠に基づいて正しく変形することについて理解が定着していると考えられます。 |
○指導法改善の視点 |
具体的な場面で目的に応じて式を変形することの意味や、変形して得られた式を利用することのよさを感得できるようにすることが大切です。今回の結果では、全国平均を上回りましたが、今後も継続して指導していく必要があります。 |
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○ 課題が見られる設問例 |
【A問題大問4(1)】(図形領域) |
○出題のねらい |
平行四辺形は点対称な図形であるが、一般的には線対称な図形でないことを理解している。 |
○傾向 |
正答率は、41.6と全国平均を11.2ポイントと下回っています。線対称や点対称の学習で、対称性に着目して考察することを通して図形の性質をとらえることに課題があります。 |
○指導法改善の視点 |
線対称な図形や点対称な図形をかいたり、実際に折ったり、回したり、重ねたりする活動を通して、線対称な図形と点対称な図形の性質を比較しながら考察する場面を設定することが大切です。 |
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【A問題大問10(1)】(数量関係領域) |
○出題のねらい |
2つの数量関係が反比例の関係になることを理解している。 |
○傾向 |
正答率は、37.9と全国平均を2.3ポイント下回っています。具体的な事象における2つの数量の関係が反比例であることを見いだして式に表すことに課題があります。 |
○指導法改善の視点 |
反比例の式が y =a/x で表されることを理解できるようにした上で、具体的な事象から2つの数量 x と y を取り出し、それらの変化や対応を調べることを通して、2つの数量の関係が y =a/x の式で表されるかどうかを検討する場面を設定することが大切です。 |
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B問題(主として活用に関する問題) |
○ 成果が見られる設問例 |
【B問題大問5(3)】(数量関係領域) |
○出題のねらい |
不確定な事象についての予想を実験で確かめるための方法を考えることができる。 |
○傾向 |
正答率は、50.6と全国平均を3.1ポイント上回っています。ある事柄の起こりやすさについての予想を実験や調査などを通して確かめるために、不確定な事象についての問題を把握し、確率の意味に基づいて方法を考えることを理解していると考えられます。 |
○指導法改善の視点 |
確率を求めることだけを目的とするのではなく、不確定な事象に関する問題解決において、複数の事柄の起こりやすさを比較する必要を感じることができる場面を設定することが大切です。また、複数の事柄の起こりやすさを比較する際には、条件をそろえて比較できるようにすることも大切です。今回の結果では、全国平均を上回りましたが、今後も継続して指導していく必要があります。 |
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○ 課題が見られる設問例 |
【B問題大問1(2)】(図形領域) |
○出題のねらい |
事柄の特徴を的確にとらえ、数学的な表現を用いて説明することができる。 |
○傾向 |
正答率は、41.7と全国平均を4.5ポイント下回っています。日常的な事象を観察し、成り立つ数学的な事柄を指摘し、それを数学的な表現を用いて説明することに課題があります。 |
○指導法改善の視点 |
日常的な事象を数学化する過程において、事象の観察を通して把握した事柄を記述したり、発表したりして、その表現を数学的に洗練していく活動を取り入れることが大切です。 |
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【B問題大問4(2)】(図形領域) |
○出題のねらい |
証明を振り返って考えることができる。 |
○傾向 |
正答率は、60.2と全国平均を3.1ポイント下回っています。証明をした後に、その結果や過程を振り返ることや、新たな性質を見いだすことに課題があります。 |
○指導法改善の視点 |
証明の過程で現れた事実や得られた結論に着目し、新たな性質を見付けることができないか、考える機会を設ける必要があります。そうすることで、数や図形の性質などを見いだし、発展的に考える活動に意欲的に取り組むことにつながると思われます。 |
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○ これからの指導に向けて |
【数と式】 |
平成21年度調査結果では、平均正答率が全国平均を上回るか、同程度でありましたが、今後も理由を説明するために何を示せばよいかを見通す活動や方程式がどのような数量に着目してつくられているのかを振り返る活動などの充実が必要と考えられます。
例えば、B問題の大問2(2)において、計算結果4(n+1)を基に、「4(n+1)は4の倍数である。」ということを示すために、4の倍数が4×(自然数)の形で表されることから、根拠として「n+1が自然数だから」を示す必要があることを確認する場面を設定することが考えらます。また、A問題の大問3(3)において、生徒の人数を x 人とするとき、折り紙の枚数は、3x+20と5x−2の2通りに表せることと、それらが等しい関係にあることを確認する場面を設定することなどが考えられます。 |
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【図形】 |
帰納的な方法の役割と限界を理解し、演繹的な推論による証明により、命題が例題なしに成り立つことを明らかにできるように理解を深める活動を一層充実させることが必要です。
例えば、円周角の定理を学習する場面で、いろいろな場合について図をかいて、1つの弧に対する円周角の大きさが等しいことや円周角の大きさが中心角の大きさの半分になることを帰納的に予想し、そのことを演繹的に証明する方法を考え、それぞれの場面で用いた推論の方法とその違いを確認する機会を設定することなどが考えらます。 |
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【数量関係】 |
日常的な事象の考察に当たって、複数の事象を比較しやすくするために、グラフに表現したりグラフから情報を読み取ったりする活動や、グラフを活用し、グラフの特徴を事象に戻して考える活動を充実させることが必要です。
例えば、B問題大問3(3)において、グラフを用いる場合、蛍光灯と白熱電球の総費用が等しくなる時間を求めるためには、
2本のグラフの交点を求め、その交点の x 座標をよめばよいことなどを説明できるようにすることなどが考えられます。
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以上のように分析及び考察を行いました。
詳しい結果や指導のアイディアを知りたい方は下記のリンクを参照ください。 |
○調査結果の詳細は 〜佐賀県教育委員会Webページ http://www.pref.saga.lg.jp/web/_29984.html
○平成21年度全国学力・学習状況調査結果を踏まえた実践アイディア集
〜国立教育政策研究所Webページ
http://www.nier.go.jp/09jugyourei/09_chuu_jugyourei.pdf |
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