基礎的・基本的な知識・技能の習得と数学的な思考力・判断力・表現力の育成を目指します!

平成21年度「全国学力・学習状況調査」の結果とこれからの指導に向けて

 平成21年4月21日に実施された「全国学力・学習状況調査」の結果が8月末に文部科学省から提供されました。その結果を基に、本県の結果とこれからの指導についてお知らせします。
調査は、教科に関する調査(国語・算数)と質問紙調査(生徒質問紙と学校質問紙)で構成されています。また、教科に関する調査は、主として知識に関するA問題と、主として活用に関するB問題から構成されています。ここでは、主に教科に関する調査の結果について紹介します。
 平成21年度「全国学力・学習状況調査」の小学校算数(6年生)の調査結果について
領域別結果について
 
種別 項目 平成21年度 平成20年度
佐賀県 全国 全国との比 佐賀県 全国 全国との比
数と計算 82.9 82.8 1.00 78.0 76.8 1.02
量と測定 79.9 78.5 1.02 56.7 56.2 1.01
図形 82.3 81.3 1.01 72.2 72.7 0.99
数量関係 61.9 64.2 0.96 72.3 72.4 1.00
数と計算 53.3 55.8 0.96 64.3 65.2 0.99
量と測定 57.4 59.9 0.96 50.0 53.3 0.94
図形 55.1 56.4 0.98 58.1 61.2 0.95
数量関係 54.0 56.8 0.95 42.9 44.9 0.96
  ※「全国との比」とは、佐賀県全体の平均を全国平均(=1.0)と比較してみたものです。小数第三位を四捨五入しています。
   A問題の「数と計算」「量と測定」「図形」領域については、全国平均と同程度か上回っています。特に、「図形」については、基本的な図形についての定義や性質の理解が向上しています。「数量関係」領域では、百分率の意味について理解し、それを用いることや、資料を集め分類整理して調べることが全国平均を下回っています。
B問題については、「数と計算」では、情報を整理し、筋道を立てて考え、示された判断が正しいわけを記述することが全国平均を下回っています。また、「量と測定」領域では、 筋道を立てて考え、当てはまる数量を求めることについて全国平均を下回っています。「図形」領域では、平行四辺形や円などの図形を構成する要素に着目して考察することが全国平均を下回っています。「数量関係」領域では、グラフから必要な情報(数量や変化の様子)を読み取ることや、百分率の意味について理解し、それを用いて考えたり、理由を記述したりすることについて全国平均を下回っています。
また、A問題については、佐賀県の無解答率が全国平均の無解答率よりすべて下回っていましたが、B問題については、佐賀県の無解答率が全国平均の無解答率を上回っているものが多い傾向にありました。特に、B問題の記述式の設問について、全国平均を下回っていました。

評価の観点別結果について
 
種別 項目 平成21年度 平成20年度
佐賀県 全国 全国との比 佐賀県 全国 全国との比
算数への関心・意欲・態度
数学的な考え方
数量や図形についての表現・処理 77.5 77.7 1.00 83.1 82.1 1.01
数量や図形についての知識・理解 81.3 80.8 1.01 66.8 66.4 1.01
算数への関心・意欲・態度
数学的な考え方 43.2 46.1 0.94 39.6 42.1 0.94
数量や図形についての表現・処理 75.1 76.5 0.98 71.3 73.0 0.98
数量や図形についての知識・理解
  ※「全国との比」とは、佐賀県全体の平均を全国平均(=1.0)と比較してみたものです。小数第三位を四捨五入しています。
 A問題の「数量や図形についての知識・理解」については、全国を上回っていますが、「表現・処理」については、全国を下回っています。「数量や図形についての知識・理解」は概ね身に付いていると考えられます。
B問題の「数量や図形についての表現・処理」や「数学的な考え方」については全国を下回っていますが、 昨年度(平成20年度)と比べると、いくぶん向上傾向にあります。
 
 
   
設問別に見た分析とこれからの指導について
   A問題を見ると、基本的な内容について、各学校で着実に指導されていることがうかがえます。四則計算や公式を用いて計算することなどは、全国平均を上回っていて、一人一人の実態に応じて各学校で計算学習の習熟が図られたことやポイントを押さえた指導の成果がうかがえます。
 
 大問2は「数直線から数を読み取る」、「数の合成についての理解」を問う問題です。計算問題である大問1の(1)〜(6)すべてが全国平均と同程度か全国平均を上回っているのに対し、大問2は、全国平均を下回っています。特に大問2の(2)の問題は、-5.2ポイントと、全国平均とかなりの開きがあります。この問題については、「1が10個集まって100、100が10個集まって1000」という見方が基礎となります。このような十進法による位取りの考えに基づく数の構成については、低学年から指導をしています。児童が目的意識をもって数えるような算数的な活動を工夫し、反復しながら指導を積み上げていくことが必要と考えられます。また「100を45個で4500、4500は、100を45個」というように、数の相対的な見方ができるように指導を充実させる必要があります。
   
 大問7の「割合」は、全国平均を見ても、もっとも正答率が低い問題でしたが、問題そのものは、選択式の問題であり、さほど難しい問題ではないと思われます。割合については、これまでの調査結果においても、注目されてきたところですが、2つの量の関係をとらえるという点で、児童に定着させることが難しい内容であり、指導法の改善を図っていく必要があると思われます。
   
 大問8の「資料を2つの観点から分類整理し、表を用いて表す」ことを問う問題において、表に合う条件を記録から読み取ることに課題が見られます。資料を整理したり、まとめたりする経験が少ないのではないかと考えられます。整理された資料から必要な情報を読み取る問題に取り組ませたり、 新学習指導要領において示された算数的活動(実態や数量などを調査する活動)を授業場面に設定したりすることが必要であると考えられます。
   
   B問題について、全国平均を上回ったものが1問で、ほとんどが全国平均を下回っています。
 
 大問3の(1) の「条件に合う時刻を選ぶ」問題は、全国でもB問題の中でポイントが低かった問題です。時刻表から、条件に当てはまるものを選ぶ問題で、簡単な時間の計算ができて、時刻表が読めれば難しい問題ではないと考えられます。他県に比べて、児童が時刻表を見る経験が少なかったのではないかとも考えられます。今後は学習したことを生活の中で使うような場面を意図的に設定していく必要があると考えられます。
   
 (2) 「グラフから読み取った数量を概数で表す」問題では、正答を導き出すために、グラフから必要な数値を読み取ることと差を概数で表すことが必要となります。A問題と同様に、必要な数値をグラフから読み取るような学習を設定していくことが必要です。また、概数についても実際の数値を調べ、概数で表すような学習を設定していく必要があると考えられます。
   
 (3) 「情報を整理し、筋道立てて説明する」問題は、情報を整理選択した上で、理由を式と言葉で書くことが求められています。このような問題で正答を導き出すためには、日ごろの授業の中で、式や答えだけでなく、絵や図、言葉などで自分の考えを説明するような学習を積み重ねていく必要があると考えられます。
   


 大問5は「グラフから情報を読み取って答える」問題です。(1)、(2) については、計算は必要なく、必要な情報を正しく読み取ることさえできれば、正答できる問題です。
算数B大問3の(2)と 同様に、必要な数値をグラフから読み取るような学習を設定するとともに、読み取るだけでなく、新学習指導要領における「実態や数量などを調査する活動」を設定し、実際に調査したことをグラフにまとめるなどの学習も経験させるようにしたいものです。
(3) は、基準量と比較量をとらえ、割合を比較する必要があります。また、選択問題ではありますが、A問題の大問7よりも、割合の意味をしっかりと理解しておく必要があります。
まず、A問題の大問7のような基本的な問題にきちんと答えることができるように指導した上で、このような活用の場面を設定し、考えさせる必要があると考えられます。
 
 
 これからの課題について
   
 A問題については、ほとんどの領域で全国平均を上回っていますが、B問題の「数学的な考え方」と「数量や図形についての表現・処理」については、昨年度と同様に全国を下回っています。数量や図形についての知識及び技能を活用する力を育てるための授業改善が必要であると考えられます。
   
 「数量や図形についての知識・理解」は、昨年度、今年度とも全国平均を上回っています。今後は身に付けた知識・理解を活用できるように、授業で知識・理解を活用する場面を設定した学習活動を工夫する必要があります。また、知識・理解を習得させるときにおいても、教師が一方的に説明をするだけではなく、児童の数学的な考え方をはぐくむことを意識しながら、「なぜそうなるのか」ということを児童にも考えさせる必要があります。丸暗記ではなく、原理・原則も含めた理解を促すことによって、児童が知識を習得していくような学習が大切であると考えられます。
   
 与えられた資料(表やグラフなど)から必要な情報を読み取って考えること、筋道を立てて考え、自分の思いを分かりやすく記述できるようにしていくことが大事となります。また、数量や図形にかかわる意味や概念、式や記号などを用いた表現方法、用具の用いての量の測定や図形の作図方法などの習得を図り、生活や学習の場面で、目的に応じて知識・技能を活用する力を高めることが必要であると考えられます。
   
  以上のように分析及び考察を行いました。
詳しい結果や指導のアイディアなどを知りたい方は下記のリンクを参照してください。

調査結果の詳細は 〜佐賀県教育委員会Webページ    http://www.pref.saga.lg.jp/web/_32413.html
平成21年度全国学力・学習状況調査結果を踏まえた実践アイディア集 
〜国立教育政策研究所Webページ      http://www.nier.go.jp/09jugyourei/09_shou_jugyourei.pdf

Copyright(C) 2009 SAGA Prefectural Education Center. All Rights Reserved.
更新日: 2010-03-08