基礎的・基本的な知識・技能の習得と数学的な思考力・判断力・表現力の育成を目指します!

 3学期の授業に役立つ授業プラン
 
この授業プランについて

 

  学習指導要領の移行措置によって、これまで第6学年で指導されていた単元「立体を調べよう」の一部が平成21年度から小学校第4学年(平成21年度のみ第5学年も)で単元「箱の形を調べよう」として、内容「直方体と立方体」を学習することになりました。そこで、この授業プランを提案します。なお、これまで単元「立体を調べよう」で指導されていた内容「角柱と円柱」は、移行措置によって第5学年で学習することになりますが、その学習内容については除いています。(平成21年度の第5学年の児童については、平成22年度の第6学年で学習します。)
 本単元のねらいは、以下の2点です。
  @ 図形についての観察や構成などを調べる活動を通して、立体図形についての理解を深めることができる。
  A 直方体に関連して、直線や平面の平行や垂直の関係について理解を深めることができる。
本単元の指導を通して、以下のようなことが期待できます。
  @ 具体物や写真などを用いてイメージをつかませるとともに、実際に立体を作ったり、触れたりする作業的な活動などを取り入れ、立体図形についての概念を深めさせることができる。
  A 自分で考えたことをペア学習やグループ学習で表現したり、友達に説明したりする活動を取り入れることで、図形についての知識や技能を活用した数学的な思考力・判断力・表現力をはぐくむことができる。
※本プランは、本年度第6学年で実践した事例を基に、第4学年(第5学年)で実施するための資料として作成
    し、提案しています。
  単元名 「箱の形を調べよう」 (東京書籍 小学校4年下、5年下)     総時間数 8時間
 
  
  1 目標
  (1)
直方体、立方体の性質を、既習の図形の性質を基にして調べようとする。
【算数への関心・意欲・態度】
  (2) 立体図形の構成要素に着目して、直方体、立方体の特徴や性質を考える。
【数学的な考え方】
  (3) 直方体、立方体の見取図や展開図をかくことができる。
【数量や図形についての表現・処理】
  (4) 直方体、立方体の辺、頂点、面の数を知るとともに、その展開図の見方を理解する。また、面や辺の垂直と平行の関係を理解する。
【数量や図形についての知識・理解】
     
  2 単元とその指導について
  (1) 教材観
      立体図形としては、第2学年で、箱の形をしたものを観察したり、分解したりして、辺、面、頂点などの構成要素の個数や面の形、辺や面の個数などに着目して、これらの特徴を理解しています。
  本単元では、直方体や立方体について学習し、立体図形について理解を深めることをねらいとしています。また、直方体と関連して、直線や平面の平行及び垂直の関係について理解できるようにするとともに、立体図形を平面上に表現したり、平面上にかかれた図形から立体図形を想像したりすることにより、空間についての感覚を豊かにすることをねらいとしています。
 そこで、これらの立体について、図形を観察するなどの活動を通してその特徴を明確につかみ、図形を構成したり分解したりして理解を深めることが大事になります。また、見取り図や展開図をかくことを通して、辺と面のつながりやその位置関係を調べることができるようにします。さらに、第5学年で、角柱や円柱についての理解を深め、見取図や展開図を表現したり、平面にかかれた図形から立体図形を想像したりすることにより、空間図形についての感覚をはぐくみたいと思います。
  (2) 指導観
     具体物や写真などを活用し、実際に立体を触ったり、作ったり、それぞれのイメージを表現したりする算数的活動を充実させた学習を行います。
 導入では、身のまわりにある箱を仲間分けしたり分解したりする活動を通して、直方体・立方体の特徴や性質の理解を深めます。また、いろいろな観点で仲間分けをすることで立体の共通点や相違点を明らかにし、立体の特徴である面の形や数、辺や頂点の数、面や辺の垂直や平行の関係をとらえることができるようにします。展開図については、正しい展開図のかき方を理解するとともに、見取図から立体を想像し、立体にあった展開図をかき、それを切り抜いて組み立てることを経験させます。そこでは、立体から平面を想像したり、平面から立体を想像したりする活動に十分に取り組ませることが必要になります。立体から展開図を作るとき、箱を切り開く前にどんな展開図になるか予想を立てることを通して、立体から平面をイメージできるようにします。また、展開図をかき、組み立てるときに、何種類の展開図ができるかを意識させることで、いろいろな展開図を考え出そうとする意欲を高めさせていきます。さらに、面と面とのつながり方を想像したり、考え出した展開図を頭の中で組み立てたりしながら立体図形についてのイメージを豊かにさせていきたいと思います。
 また、教室などの身のまわりにある具体的なものや場所から垂直・平行の関係になっているものを考えることや立体の展開図をかいたり組み立てたりする作業を通して、空間における平面や辺の垂直・平行の関係を理解できるようにし、垂直・平行の関係のイメージを平面から空間へと広げさせていきたいと思います。
  (3) 算数的活動について
      具体物や写真などを活用してそのイメージをつかませるとともに、実際に立体を作ったり、触ったりする作業的な活動などを取り入れ、立体図形についての概念を深めさせたいと考えます。また、身のまわりにあるものを用いて立体図形を観察したり、その構成要素を調べたりする体験的な活動を通して理解を深めることが大事になります。
 さらに、それぞれの学習においては、既習内容を活用して自分で考えたことをペア学習やグループ学習で表現したり、友達に説明したりする活動を取り入れることで、数学的な思考力・判断力・表現力を育成することができると考えます。
  3 単元の関連と発展
  移行措置期間(平成21年度)の第4学年の実践
 
  移行措置期間(平成21年度)の第5学年の実践
 
  ※ これらの図については、新学習指導要領(平成20年3月)における学習内容を基に作成しています。
   
  4 単元計画(全8時間)
 
学習のめあて

主な学習活動
(位置付けた主な算数的活動)
評価規準
箱のとくちょうを考えて、なかまに分けよう

 《1/8の展開》



・立体を組み立てる過程の写真を見せ、「どんな立体ができるでしょうか。」クイズをする。
・身近な立体について興味をもち、仲間に分ける。
・仲間に分けるときの観点を示し、説明する。
(具体物を用いた活動)
(説明する活動)
・観点を決めて立体を仲間に分けることができる。
【表現・処理】
・辺の長さや面の形を基にして直方体と立方体の特徴を理解することができる。

【知識・理解】
直方体と立方体についてくわしく調べよう

 《2/8の展開》



・ワークシートの「まちがいさがし」を行う。
・まちがいを指摘しながら、理由を発表する。
・直方体、立方体の面、辺、頂点の数などについてまとめる。
(調査的な活動)
(説明する活動)
・直方体と立方体の共通点や相違点について考えることができる。
【数学的な考え方】
・直方体と立方体の特徴を理解している。
【知識・理解】
直方体を切り開いた図をかこう

《3・4/8の展開》





・1つの面を切り開いた直方体の展開図を予想する。
・ワークシートの図に切り開き線をひき、展開図を予想してかく。
・切り開き線と予想してかいた展開図を見て気付いたことを話し合う。
・工作用紙に展開図をかき、直方体の箱を組み立てる。
・立方体の展開図を考える。
(表現する活動)
(説明する活動)
(作業的な活動)
・展開図に表すことを通して、辺や面のつながりや位置関係をとらえている。
【数学的な考え方】
・直方体や立方体の展開図をかくことができる。
【表現・処理】
ティッシュの箱が積み重なりやすいひみつをさがそう

 《5/8の展開》



・直方体と向かい合う面が平行でない四角柱の立体を比べ、積み重ねやすさを比べる。
・直方体の面と面の関係に着目し、積み重ねやすい理由を考える。
・自分の考えを説明し、意見を交流する。
・直方体の面と面の垂直、平行の関係を理解する。
(具体物を用いた活動)
(調査的な活動)
(説明する活動)
・直方体がきちんと積み重ねられる理由を考えようとしている。
【関心・意欲・態度】
・直方体の面と面の垂直、平行の関係を理解している。
【知識・理解】
直方体の辺と辺や面の関係について考えよう

 《6/8の展開》



・前時の学習を振り返り、辺と辺との関係について目を向ける。
・辺と辺との関係(垂直と並行)、辺と面との関係(垂直)について理解する。
・身のまわりのものや場所の立体から、垂直や平行になっている辺や面の関係を探す。
(調査的な活動)
(発展的な活動)
・学習内容を活用して、問題の解決に取り組もうとする。
【関心・意欲・態度】
・直方体の互いに垂直な辺、平行な辺、垂直な辺と面をとらえることができる。
【表現・処理】
全体の形がわかる見取図をかこう

 《7/8の展開》



・直方体の見取図を自分で考えてかく。
・見取図のかき方を理解する。
・全体の形が分かる見取図をかく。
・見取図をかくときに工夫したことを説明する。
(作業的な活動)
(表現する活動)
(説明する活動)
・見取図に表すことを通して、直方体や立方体の大きさと辺の長さとの関係をとらえている。
【数学的な考え方】
・直方体や立方体の見取図をかくことができる。
【表現・処理】
「たしかめよう」に取り組もう

 《8/8の展開》



「たしかめよう」に取り組み、学習内容を振り返る。 ・既習内容を活用して、問題の解決に取り組もうとしている。
【関心・意欲・態度】
・基本的な学習内容について理解している。
【知識・理解】
※ 本単元で用いるワークシートはA4判で作成していますが、授業ではB4判かA3判に拡大して使うことをおすすめします。
 
  5 本単元の指導に当たって
 本単元の学習において、作業的な活動や探究的な活動、調査的な活動、自分の考えを表現する活動、説明する活動など様々な算数的活動を取り入れることを提案しています。
これまでの問題解決的な学習においても、作業的な活動や具体物も用いた操作活動等が実践され、基礎的な知識・技能の習得が図られてきましたが、この授業プランにおいては、学習の目標に応じていくつかの算数的活動を取り入れることを提案しています。この中では、図や言葉や式を用いて考えをまとめて表現する活動や、自分の考えを相手に伝えて、説明する活動を多くの学習場面で取り上げています。最初は隣同士のペアであったりと、机の近いもの同士のグループであったり、その形態は学級の実態に合わせて指導者が工夫されるとよいでしょう。
  さらに、毎日の学習においては、「間違ってもいいから相手に自分の考えを伝えよう」とすることが大事であることや、自分の考えを説明することが苦手な児童に対しては、「友達のまねをしながら、上手になっていこう」などと言葉掛けをして、一人一人の児童に自信をもたせていくことが大切です。
 今回の実践で紹介した説明する活動を、わずか数時間の学習だけで十分に習得させるのは難しいと考えています。しかしながら、このような活動は、これからの算数科学習指導において重要視され、求められているものでもあります。これから初めてこのような学習に取り組まれる場合は、この取り組み後の単元においても、引き続き、このような学習活動を経験させていくことが大切になると考えます。また、算数科の学習ばかりでなく、他教科の学習を通しても指導していくことが有効であると思います。
表現する活動や説明する活動については、「算数的活動を取り入れた授業における指導のポイントはこれだ!」を参照ください。

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最終更新日:2009-12-21