読む 書く
  • 音読は,1字ずつのたどり読み。
  • 文字や行を飛ばして読むこともある。
  • 読み誤りがある。(語尾,拗音,促音等)
  • 平仮名,片仮名は書くことができるが,拗音や促音になると,間違いが見られる。
  • 漢字は,線が1本多かったり,線の長さが違ったりすることがあ
行動 小さい頃の様子
  • 自分の持ち物の管理が苦手。
  • 整理整頓ができない。よく転んだりぶつかったりする
  • 話し始めは2歳半。人の顔を覚えるのが苦手。
  • 幼稚園年長のとき,平仮名の練習をしようとすると,泣きじゃくりパニックを起こした。
  • 簡単な模写ができない。
心理検査から LD等のチェックリスト
佐賀県教育センターWeb
  • K−ABC「文の理解」「ことばの読み」ITPA「文の構成」の数値が低いことから,読みに苦手さがあると考えられる。

  • K−ABC「手の動作」WISC−V「記号探し」ITPA「形の記憶」から,視覚的短期記憶が弱いと考えられ,このことにより,文字がなかなか覚えられないと思われる。

  • K−ABC「模様の構成」の数値が高く,WISC−V「積み木模様」の数値が低く出たのは,「模様の構成」に使ったものは三角形の板で平面であったが,「積み木模様」では,立体的な積み木で,模様を構成する際に側面が視覚的に邪魔をしたのではないかと思われる。それは,WISC−V「絵画配列」の数値が低いことにも関連していると考えられる。
  • フロスティッグ視知覚発達検査では,数値からは遅れは見られなかったが,検査の様子は特徴的であった。検査紙から目が近く,実施紙を片手で押さえ,押さえた親指と人差し指の間に道(枠)が入るようにして,ゆっくり慎重に線を引いていた。横線を引くのは,とても時間が掛かっていたが,縦線は,横線の半分程度の時間で引くことができた。

  • 眼球の動きが激しい。また,対象物を目で追う時に,顔も一緒に動く。

  • 「読む」「書く」の項目で,得点が著しく落ちていることから,これらの領域で苦手さを感じていると思われる。

事例の紹介:小学校2年女児

課題
  1. 眼球運動能力に弱さが見られる。
    •  眼球運動能力に弱さが見られるとは?
      この眼球運動とは,見るものに視線を正確に移動する能力のことで,追従性眼球運動(ゆっくりと動くものを眼で追う)と衝動性眼球運動(視野の周辺部に写ったものをすばやく眼を動かして中心にもってくる)の2種類がある。このような眼球運動能力に弱さがあると,行を正しく追っていくことが難しく,読むのに時間が掛かり過ぎたり,文字や行を飛ばして読んだり,文字の順番を間違えて読んだりすることがある。
  2. 視覚的な認知能力に弱さが見られる。
    • 視覚的な認知能力に弱さが見られるとは?
      視覚的認知とは,目で見た情報を受け取り,意味あるものとして処理することで,視力に問題がなくても視覚認知の問題を抱える場合がある。視覚的な認知能力が弱いと,点や線の位置関係が分からなかったり,線の傾きや種類が分からなかったり,線の長さが分からなかったりする。文字は,線が組み合わさった図形と言えるので,文字を線からなる一塊のもの(図形)と認識できないと,文字を覚えることは難しくなる。また,見ているものの中で,背景等見なくてもよいもの(地)を無視し,見たいあるいは見なければならないもの(図)だけに注意を払って見ることも難しく,地と図の混乱が見られることもある。このように,視覚的な認知能力に弱さがあると,文字の習得が難しく,よく似た文字や図形を見間違えたり,よく似ている単語を間違えたりすることがある。また,場所を覚えたり,表情を判別することも苦手なことがあり,方向音痴や人の顔を覚えられないこともある。
  《参考文献》
   ・ 本多 和子・北出 勝也著
       『「見る」ことは「理解する」こと』 2003年 三洋社
   ・ 竹田 契一・里見 恵子・西岡 有香著
       『図説LD児の言語・コミュニケーション障害の理解と指導(第2版)』 2007年 日本文化科学社
   ・ Marianne Frostig/David Home/Ann-Marie Miller著
       『フロスティッグ視知覚能力促進法(上級用)−視知覚学習ブック使用法付−』 1978年 日本文化科学社