定期テストにおける支援計画
テストの構成について
これまでのテストの問題点
LD様の特性を示す生徒は,認知の面で偏りが見られることがある。特に視知覚に難しさがある生徒は,普段の授業の中では学習した内容を理解していても,テストといった限られた紙面の中でその力を発揮できないことがある。

 例えば…
  ○本文の文字が小さすぎて,文字の形がはっきり見えない。
  ○文字が重なって見えて,一つ一つの文字を読むことだけでも疲れる。
  ○分からない漢字があるから,文章の内容が分からない。    など

これらのことによって,本来は「読むこと(読解等)」には難しさが無い場合でも,テストの結果としては「読むこと」の点数が伸びない,ということも考えられる。
修正のポイント
そのようなことを防ぐためには,様々な認知特性に対応できる様式のテストにする必要がある。
一般に,読みやすい文章にするための支援としては,
@行間を空ける 
A1行の文字数を少なくする
B分かち書きにする
Cフォントはゴシック体にする
D文字を大きくする
E読み仮名を付ける
などがある。また,読んで聞かせるといった支援も場合によっては必要とされる。
試作テスト一覧とその利便性の考察
期末テストを作成するに当たっては,教科担当者がこれまでと同じ様式でテストを作成した(テストA)。その問題と同じものを,修正のポイントを基にしながら構成し直し,以下の12種類のテストを作成した。文字の大きさや1行の長さ,行間については,教科書の様式を基準にし,それよりも高い認知力を求めなくてもすむように配慮した。 
文字組 用   紙 用紙
方向
1行の
長さ
文字の
大きさ
行 間 解 答 欄 分かち
書き
読み
仮名
テストA 縦書き B4表裏1枚 横長 21cm 10.5ポイント 1.9mm 問題と別 なし なし
試作ア 縦書き A3表裏1枚 横長 13p以内 12ポイント以上 3o以上 問題と一緒 なし なし
試作イ 縦書き A3表裏1枚 横長 13p以内 12ポイント以上 3o以上 問題と一緒 なし あり
試作ウ 縦書き A3表裏1枚 横長 13p以内 12ポイント以上 3o以上 問題と一緒 あり なし
試作エ 縦書き A3表裏1枚 横長 13p以内 12ポイント以上 3o以上 問題と一緒 あり あり
試作オ 横書き A3表裏1枚 縦長 13p以内 12ポイント以上 3o以上 問題と一緒 なし なし
試作カ 横書き A3表裏1枚 縦長 13p以内 12ポイント以上 3o以上 問題と一緒 なし あり
試作キ 横書き A3表裏1枚 縦長 13p以内 12ポイント以上 3o以上 問題と一緒 あり なし
試作ク 横書き A3表裏1枚 縦長 13p以内 12ポイント以上 3o以上 問題と一緒 あり あり
試作ケ 横書き A4表裏2枚 横長 28p以内 12ポイント以上 3o以上 本文と別
問題文と一緒
なし なし
試作コ 横書き A4表裏2枚 横長 28p以内 12ポイント以上 3o以上 本文と別
問題文と一緒
なし あり
試作サ 横書き A4表裏2枚 横長 28p以内 12ポイント以上 3o以上 本文と別
問題文と一緒
あり なし
試作シ 横書き A4表裏2枚 横長 28p以内 12ポイント以上 3o以上 本文と別
問題文と一緒
あり あり
【留意点】
  • 書体は,共通して,本文はゴシック体問題文は明朝体とした。但し,問題文の中に本文から抜き出した言葉を入れる場合は,その部分をゴシック体にした。
  • ケ〜シは,本文のみを表裏印刷で1枚に,問題文と解答欄を表裏印刷で1枚にして,本文のプリントの横に問題文のプリントを置いて,そのプリントをずらすことで本文と問題文を隣同士にして問題を解けるようにした。
【考察】
  • ケ〜シについては,以下のようにメリットよりもデメリットの方が大きいと考えられることから除外した。
    ○メリット:自分でプリントをずらして問題文と本文を直接対応させることができる。
    △デメリット:使い方を自分のものにするには経験を積む必要がある。
            1行の長さが長い。
  • 分かち書きについては,漢字を使い,読み仮名を書くことで,区切りが比較的分かりやすくなるので,今回については除外した。
  • ア,イ,オ,カについては,それぞれの生徒の認知特性の違いからどの段階も必要と思われるが,短時間の内に生徒がテストを選択することを考えて,今回については,各一様式を使用することにした。その際,難しさの度合いが大きい生徒が取り組みやすいと感じられるテストを使用する必要があるので,今回は,試作イ(テストB)と試作カ(テストC)を使用することとした。
これまでの定期テストの様式
文字組 用 紙 用紙
方向
1行の
長さ
文字の
大きさ
行   間 解答欄 分かち
書き
読み仮名
これまでの様式 縦書き B4表裏1枚 横長 21cm 10.5ポイント 1.9mm 問題と別 なし なし
問題用紙(テストA) 解答用紙(テストA)
改良を要する箇所
  • 文字組:縦書きは,視線を上下に動かせることが難しい生徒にとっては,読むこと自体に難しさが生じる可能性がある。
  • 1行の長さ:1行の長さが教科書(16p)より長く,視線を上下に動かす幅が長い。
  • 文字の大きさ:教科書で使われている文字の大きさ(本文は11ポイント以上)よりも小さい。
  • 行間:大問をすべて一面に入るようにしているので,教科書(3o)よりも狭い。
  • 本文と問題文の位置:本文の後に問題文があるので,視線を左右に動かす作業を何回もしなければならない。
  • 解答欄:問題と解答欄が別になっているので,注視する点を何回も移動させなければならない。
  • 分かち書き:見ることが難しい生徒にとっては,単語や文節の区切りが分かりづらい。
  • 読み仮名:読めない漢字があると,細かい内容理解がしづらい。
  • 書体:明朝体は文字が細く,視知覚に難しさをもつ生徒は文字の輪郭がはっきり見えない可能性がある。