本研究では,県内の全ての市町村立の小・中学校を対象に,「集団に適応することが難しいと思われる児童生徒の数」についてアンケート調査を行いました(調査1)。 その結果,県内の全市町村立小・中学校から回答を得ました。ここでは,学校種ごとのそれぞれの全体の調査結果及び,学年別の調査結果を紹介します。 グラフは,学校種ごとに,「集団に適応することが難しいと思われる児童生徒」の在籍率を全体,各学年(男女)別に百分率で表しています。 |
調査1の結果 − 小学校 | |
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【結果】 小学校全体では,集団に適応することが難しいと思われる児童の在籍率は4.0%でした。1年生で4.8%と最も高く,学年が上がるにつれて徐々に減少しています。減少の率が最も大きいのは5年生から6年生にかけてで,およそ1ポイントの差があります。 男女の率を比較すると,小学校全体では男子が5.7%,女子が2.2%で,男子の率が明らかに高くなっています。 特徴的なのは,男子は学年が上がるにつれて大きく率が下がっているのに対し,女子はどの学年もほとんど同じ率であったことです。 1年生の男子が7.2%であるのに対し,1年生の女子は2.2%で,その差は5ポイントもあります。男子は3年生から4年生で横ばいであるものの,1年生と6年生を比較すると3.2ポイントも下がっています。 女子の場合,5年生までは学年が上がってもほぼ横ばいか,わずかに増加する傾向がうかがえます。6年生で少し減少していますが,どの学年もほぼ同じ水準ということができるでしょう。 |
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【本研究委員会の考察】 小学校全体で,集団に適応することが難しいと思われる児童の在籍率が,学年が上がるにつれて減少しています。これは,まず,女子はどの学年もほとんど同じ率であったことから,男子の率が減少していることが大きく反映していると考えられます。 具体的には,低学年の男子に多く見られる,授業中や集会時の落ち着きのなさ,友達とのけんかやトラブルなどの行動が学年が上がるにつれて減少していくことが要因であると考えられそうです。 一方,高学年になると特に女子に,一人で過ごす,あまり話さないという行動が目立ってきます。 このように,小学校では,学年が上がるにつれて,集団に適応することが難しい児童の在籍率が減少し、児童の行動は教師の目に付きやすいものから見えにくいものへと変化していることがうかがえます。 ※考察については,「集団に適応することが難しいと思われる児童生徒の様子についてアンケート調査(調査2)」のデータを参考にしています。 |
調査1の結果 − 中学校 | |
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【結果】 中学校全体では,集団に適応することが難しいと思われる生徒の在籍率は5.0%で,小学校より1ポイント高くなっています。 1年生で5.7%と最も高く,学年が上がるにつれて徐々に減少しています。特に,2年から3年にかけては1.4ポイントの減少でその幅が大きいようです。 男女の率を比較すると,全体で男子が6.0%,女子が3.9%で,小学校同様,男子の率が明らかに高くなっています。 また,男子は学年が上がるにつれて大きく率が下がっているのに対し,女子はどの学年もほとんど同じ率であったことも,小学校に見られる傾向と同様でした。 小学校6年生の男子が4.0%,女子が1.8%であったのに対し,中学校1年生の男子が7.2%,女子が4.1%でとそれぞれ上昇しています。 |
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【本研究委員会の考察】 集団に適応することが難しいと思われる児童生徒の在籍率は,小学校では学年が上がるにつれて減少し,6年生で最も低くなりました。ところが,中学校1年生になると再び大きく上がっています。 これは,中学校に入ると,学習や生活全般にわたって教科担任制や部活動など中学校独自の環境に慣れていかなければならないためではないかと考えられます。 また,学習内容が難しくなるため授業についていけなくなったり,複数の小学校から集まってくる場合対人関係上の問題が起こりやすくなったりすることも考えられそうです。さらに,校則など小学校より細かな集団生活のルールがある場合が多いため,小学校に比べ高い水準の適応の在り方が求められていること等も要因としてあるでしょう。 ※考察については,「集団に適応することが難しいと思われる児童生徒の様子についてアンケート調査(調査2)」のデータを参考にしています。 |