中学校での実践(学級で行う個人コラージュ・中学3年生)
<生徒の実態>
○ 本校は全校生徒200名程度の学校である。3年生は全体的に明るく,活動的でのびのびとした雰囲気がある。入学時から一人一人を仲間として大切にする学年にしようと取り組んでおり,一人一人が活躍の場をもち,友達の価値を認め合う雰囲気ができている。また良識的な判断力や素直さを持つ生徒が多く,周りからの指導やアドバイスを取り込み,さらに向上していこうとする力がある。 しかしその中にも,心が不安定な子どもなど,気になる子どもが数名いる。それでも全体の明るさがそのような子どもを救っているようにも思われる。
○ コラージュは今回が初めてということで,個人コラージュを実施。

<ねらい>
○ 中学3年生にとっては,大きな行事をやり遂げた充実感と自信を得て,進路選択に向かわなければいけない時期である。こういう時期に,自己を表現する機会を持つことにより,心を安定させ,自己と向き合うことは意義があると思われる。
○ またお互いの作品を鑑賞したり,話し合い(シェアリング)をさせることにより,友達のよさを認め,お互いの存在とその価値を認識しながら関係性を深めることが,もう一つの大きなねらいである。
事前 のり,はさみ,切り抜 いてもいい雑誌などを持ってくるように連絡
当日 ・場所・・・教室 
・準備・・・画用紙(四つ切り,八つ切り,淡い色の色画用紙数種類),
      (予備として)のり,はさみ,雑誌・カタログ・広告など
・授業者・・T1:研究者,T2:担任,T3:養護教諭(教育相談担当)
<実際の展開>*個人コラージュ
制作過程 内           容  時間       備考及び留意点
@雑誌を見る。
「何を切り抜こうかな?」
1.導入
(T1)【コラージュの説明】
 「今日はコラージュをしましょう。コラージュというのはこういうものです。」(作品例を見せる。)
 「みんな毎日忙しいよね。たまにはこういう時間を取ってゆったりとするのもいいんじゃないかなと思います。楽しくやって,ちょっとでもほーっとしたとか,すーっとしたとかいうふうになってくれたらうれしいです。」
 「ではやり方を言います。みんなが持ってきている雑誌の中から,好きな写真とか,ちょっと気になる写真とかを切り抜いて,画用紙に好きなようにのりで貼ります。字や絵もOKです。何をどんなふうに貼っても自由ですが,約束が3つだけあります。」
 「作る時間は60分間です。何か質問はありませんか。」
(S1) 「重ねて貼ったり,はみ出したりしてもいいですか?
(T1) 「そうしたいと思ったらかまいません。」
(T1) 「他にありませんか。では始めたいと思います。」
 「画用紙は,大きいのと小さいのを用意しています。色画用紙も何種類かあります。各自好きな物を選んで取ってください。
 のりやはさみを持ってきていない人はここにあるのを使っていいです。雑誌もいくらか用意してますので,自分の持ってきた物意外にも見たいと思う人は自由に見てください。では始めてください。」

 5分



















 












 

*あまり長く話さず,制作の時間を十分取りたい。
*用具類は前に置いておく。













3つの約束
@制作中はしゃべらない。
A台紙(画用紙)を破ったり切ったりしない。
B裏に貼らない。














A切り抜く。
「お,これいいな。」
B台紙(画用紙)に再構成して貼る。
C完成
「できました!」
2.制作・・・個人コラージュ
60分 *制作に入ったら基本的に声はかけない。できるだけじゃまにならないように観察する。見て回るのも1〜2回。教師も一緒に作るのもよい。
休憩 10分 *制作を続けたければ続ける。
Dふり返り
個人のふり返り(シート記入)
3.ふり返り・シェアリング 25分
(1)ふり返りシート記入
T1 「はい,ではそろそろ時間です。ふり返りシートの1番から3番を記入してください。」
 
*ふり返りシート配布
*ふり返りシート記入(個人のふり返り)
           
Eシェアリング
「ここが気に入ってます。テーマは・・・
(2)班(グループ)でのシェアリング
(T1) 「では班の友達と作品を鑑賞し合いましょう。1人ずつ自分の作品について説明してください。班のほかの人は感想を言ったり,自由に語り合ってみましょう。」 
(T1) 「終わった班はふり返りシートの4番を書いてください。」
*班でのシェアリング
@1人ずつ自分の作品について述べる。(題名やテーマ,自分が気に入ったところ,作品を見て感じたことなど)
Aほかのメンバーは感想などを述べる。(その際批判的なことは言わない。)
*隣同士で話し合わせたり,全員の前で数名発表させたりするやり方もある。
*ふり返りシート4番(シェアリング後の感想)記入
Fシェアリング後のふり返り
「みんな個性的!」
4.まとめ
(T1) 「初めてコラージュというのをしたという人がほとんどだったと思いますが,今日やってみてどうでしたか?」
(S) 「おもしろかったー!」「楽しかった。もっとしたい。」「ストレス解消!」「またしよう!」などの声
(T1) 「みんなが楽しかったと思ってくれたら今日はよかったと思います。また一緒にやりましょう。」
5分 *道具の後かたづけ,作品とふり返りシート回収
<2回の実践を終えての考察>
○ この学年ではこれまで2回実施した。ほとんどの子が「楽しかった」と感想に書いているが,1回目はものめずらしさによる楽しさという面を感じた子が多かったようだが,2回目は「ストレス解消」,「すっきりした」,「満足した」という子が増えた。時期的に将来のことを考えるうえで自分のこと,現実のことに向かい合わなければいけないというプレッシャーを感じている子も多い のだろうか。日頃あまり自分の気持ちを言葉に出さない子も同じような感想だった。また「自分の個性が見える」,「自分の好きなことや好きなものが作品をみてわかった」,「野球から離れられないんだなと思った」など,自己の内面に触れる感想を書いた生徒もいた。
○ シェアリングでは「個性,その人らしさが出ている」と感心したり,「意外な感じ」と友達の新しい面を発見したりしたことが述べられていた。
○ 作品にはその子らしさがよく表れているものもあれば,普段見せる姿とはかなり違うイメージのものもあった。先生方は「内面にこういうところを持っているのかなあ」と,これまで気づかなかった一面を発見し,「こんな形で表現させると,いつもと違う面が表れるね」と言われていた。
○ 1回目に否定的な感想を書いた子がいたが,その子は2回目には肯定的な感想を書いていた。「そのときそのときの心の状態が,作品だけでなく,つくる姿勢にも表れる」という感想を担任は持たれていた。
○ 制作中やシェアリングの様子,またふり返りシートに書かれた感想から,ねらいはある程度達成できたと思われる。この後も継続して実施していきたい。