実践例:係活動を見直そう  〜話合い活動〜 (4年生)
 
10月下旬〜11月上旬 題材の目標
児童数  36名 「係活動を見直そう」という議題についての話合いに課題意識をもって参加し,友だちと協力して実践活動に取り組む喜びを味わうことができる。
学級生活を楽しく充実させるために,これまでの係活動をふり返り,工夫して活動しようとする態度を育てる。
指導過程 子どもの意識の流れ 教師の働きかけ及び考察
○議題の収集  計 画 委 員 会@
メンバーの確認
学級会までの活動計画の作成 ,仕事分担
「計画委員会って何をするのかな?」
「初めてだからうまくやれるかな?」
教師が資料を準備して,自分たちの仕事に対する意欲と見通しを持たせる。
準備した資料
 ・第1回計画委員会用資料
 (学級会までのスケジュール表など)
 ・学級会活動計画
学級会の議題について
 集まっている議題案
 議題箱から
・昼休み体育館を使って遊びたい
 生活上の諸問題から
 (朝や帰りの会で問題になったこと  から)
・みんなで遊ぶ日に来ない人がいる
 年間計画から (教師より)
・係活動の見直しをしよう 
(議題箱)
「『昼休み体育館を使って遊びたい』は,自分たちだけでは決められないから議題にはできないね。これは先生にお願いしよう。」
(帰りの会)
「『みんなで遊ぶ日に来ない人がいる』は係から出されていることだから係活動とも関係があるね。」
(年間計画)
「先生が提案している『係活動の見直し』もいいと思うよ。」    
集まっている議題案を確認させる。
集まった議題案の処理の仕方を教える。
議題案の中で,学級にとって必要性のあるものや緊急性のあるものを選ぶことや議題化されなかったものの処理の仕方について教える。どの議題案をミニ学級会に提案するかは計画委員会に任せる。
第1回ミニ学級会 の計画,準備
「ミニ学級会でみんなの意見を聞いてみよう。」
「ミニ学級会では,意見がたくさん出ればいいな」

第1回ミニ学級会で説明することと提案することを整理させる。
計画委員会からの説明
 ・学級会までのスケジュール
 ・集まっている議題案について
計画委員会からの提案 
 ・今度の議題は,「係活動を見直そう」にしてはどうか。
○議題の検討 第1回 ミ ニ 学 級 会
計画委員会より議題の提案

事前に議題を考えるように呼びかけておく。
第1回ミニ学級会資料
提案された議題でいいのか,他に話し合うことはないか,みんなの意見を聞く。
帰りの会での
ミニ学級会の風景
計画委員会の提案でいいと思うよ。
「係のことについては今まで話し合ったことがないから,係のことについてみんなで考えたほうがいいと思う。」
「がんばっている係があるから,お礼を言いたいなあ。」
「あまり仕事をしていない係もあるからみんなで話し合いたい。」
学級の問題を自分たちで解決していこうとする意識が低い場合,安易に計画委員会の提案に賛成することも考えられるので,教師が計画委員会の提案を補強しながら指導をする。
学級の目標に照らして自分たちの学級の今をとらえさせる。
「困っていること」などの問題点ばかりではなく,「みんなでやりたいこと」「〜するともっとよくなること」の視点を与えて全員に考えさせる。
話合いのまとめをする。
「係のことについては,いろいろ問題がありそうなので議題は係活動のことにしよう。」 <ミニ学級会終了後>
係活動
について話合うことは決まったが,議題にするためには更に何について話し合うのかをしぼる必要がある。教師が,問題をしぼる方法として,アンケートをとることを提案し,作成する。帰りの会でそのアンケートをとり,計画委員会が集約する。
準備した資料
 ・
議題案アンケート
○議題の決定  計 画 委 員 会 A
第2回ミニ学級会の計画,準備
 ・議題についての提案
 ・ミニ学級会までの仕事と分担
計画委員会の話合いの様子
「第1回ミニ学級会で出た意見を整理しよう。」
「一番意見が多かった『ありがとう集会』がいいよ。がんばっている係にお礼を言いたいという人が多かったよ。」
「『ありがとう集会』に決めて,プログラムに係のことで知りたいことや係へのお願いを盛り込めば,みんなの考えが生かされるんじゃないかな。」
「だけど,仕事をしていない係があるということについては解決できないんじゃないかな?」
「このアンケートの結果をみんなに見せて決定しよう。」
ミニ学級会の計画,準備を進めさせる。
アンケートを集計した結果を資料として教師がまとめておく。
準備した資料

 ・アンケート集計結果
計画委員会の経験のない子どもたちにとって,議題を1〜2つにしぼることはなかなか難しい。教師の指導性を発揮して,活動をさせながらやり方を教えていくようにする。内容については,教師の意見で左右されることのないように配慮する。学級のみんなが納得のいく議題の決定のためには,どういう形でミニ学級会に提案した方がいいかを計画委員会の子どもと教師が一緒に考える。
○議題の決定 第2回 ミ ニ 学 級 会
アンケート集計結果の説明 「係ががんばっているから,ありがとう集会がいいと思うよ。そして,クラスがもっと楽しくなると,係ももっと仕事をすると思うよ。」
「あまり仕事をしていない係もほめてもらうともっとがんばると思うから『ありがとう集会をしよう』がいいな。」

※みんなで理由を言い合いながら,「ありがとう集会を開こう」に決まった。
「出し物をしたいな。係のことを劇で紹介したい。」
「係にお礼を言うコーナーをつくりたいし,プレゼントもあったほうがいいなあ。」
※集会だからお菓子があった方がいいという意見をもっている子どもがいたが,反対意見が出て「持ってこない」に決まった。
※意見がたくさん出て,出し物をプログラムに入れること,他は,計画委員会が提案することに決まった。
黒板に掲示する資料を準備させる。
全員の納得した結論が得られるように進行を見守り,助言する。
話合いのまとめをきちんとさせておく。
第2回ミニ学級会資料
議題決めの話合いをする。
議題案
「係さん,ありがとう集会」を開こう
係の発表会をしよう
係活動をふり返ろう
係を決め直そう
話合いのまとめをする。
○討議化 第3回 計 画 委 員 会
第3・4回計画委員会資料(第3回用)
学級会の準備@ 
学級会の役割決め
議題・提案理由・めあて・柱の決定
話合いカードの準備
作成した学級会計画
議題
「係さん,ありがとう集会を開こう」
提案理由
がんばっている係にお礼を言ったり,これからも係の仕事をもっとがんばろうという気持ちになったりするような集会をしたい
@係の出し物は,どんなものがいいか。
A集会の準備は,だれがどんなことをするか。
学級会の準備を進めさせる。
第2回ミニ学級会で決まったことや出された意見を整理させる。
教師も一緒に議題・提案理由・柱をどうするかについて今までの話合いをもとにまとめ,話合いカードを作成し配布の準備をさせる。
学級活動コーナーへの書き込みをさせる。
出し物を入れたプログラムについては,朝の会などで全員に知らせておくようにアドバイスをする。
レポート活動
「他のクラスの人はありがとう集会をしたことがあるかな。聞いてみよう。」
「係が,なかよく仕事をするようにどんな出し物をしたらいいか,縦割りの上級生に聞いてみよう。」
休み時間などを利用して進んで情報を集めるように声かけをする。
話合いカードに目をとおし,アドバイスを書いたり個別に指導を行ったりする。
話合う内容,目的の理解が不十分な子どもや自分の考えを話合いカードに書けない子どもには教師が助言する。
○討議化 第4回 計 画 委 員 会
第3・4回計画委員会資料(第4回用)
学級会の準備A
学級会の進行計画を立てる
時間配分・決議の仕方など
話合いカードから意見を予想して板書計画を立てる
(意見を書いた短冊を作る)
「柱1については,劇や紙芝居などという意見が多いね。」
「劇や紙芝居などでどんなことをするのかな。」
「中味についての話を深めたいね。」
「柱2は,『たくさん型』で決めていこう。」
学級会の進め方マニュアルを参考に進め方を考えさせる。
「出し物を係に任せて自由にする」ということでは,話合いが深まらない。劇や紙芝居などでどんな内容にしたらいいかについての話合いができるようにする。
ミニ話合い
ミニ話合いの風景
「○○さんに聞いてもらいたいな。」
「友だちは,どう考えているのかな?」
「早く,学級会で話し合いたいな。」
「今度の学級会では,発表しよう。」
発表に自信が持てない子どももいるので,仲のよい友だちとペアを作らせ,帰りの会で自分の意見を発表する練習をさせる。
発表に対して消極的になりがちな子どもに励ましや声かけを行う。
学 級 会
計画委員会(4名)の仕事分担
議長 1名
副議長  
(めあて,よかったことの反省)
1名
黒板書記 1名
ノート書記(計時) 1名
学級会の始めの「先生から」の際に,提案理由を補強する話をする。
司会や書記の子どもたちは経験が少ないので,意見を整理して進め方を助言する。教師の意見に左右されることもあるので話合いの内容には口を出さないで見守るようにする。
 ミニ学級会実践後の子どもの変容!
3名の抽出児の変容
<A児>
自分なりの意見をもってはいるが,話合い活動に対しては消極的である。
毎回話合いカードには,めあてや自分の考えなどきちんと書いている。学級会に対するアンケートには「発表を必ずするなどのきまりがあるから好きではない」と答えている。
「どの係も計画どおりに仕事をするようにしたい」という願いをもっていた。ミニ学級会で,議題が「係さん,ありがとう集会をしよう」,更に出し物をすることに決まったときには,「それでは解決しない」ということで,反対意見をもっていたが発表しなかった。レポート活動やミニ話合いを通して,少しずつ「ありがとう集会」の仕方を工夫すればみんなが係活動をがんばろうという気持ちになるという意見をもつようになった。
学級会で,「出し物は,係が仲良くなると思うのでマジックでもいい」という意見が出たときに,「提案理由に合わないと思うので反対です」という意見を発表した。また,「がんばっている係にプレゼントをあげたい」という意見に対しては「お礼を言う方が,もっとがんばる気持ちになると思う」という発表をした。
その後数回,自分の意見を発表し,全体の話合いが深まった。
学級会の自分のめあては「自分の考えを伝える」だった。
学級会後,「めあても守れて,発表もたくさんできてとても楽しくがんばれたと思う」と感想を書いていた。
<B児>
自己中心的な言動が多く,話合いに大きな影響を与える存在である。
前回の学級会の決議の際,自分の意見の時は大きな声で「手を挙げて」と呼びかけて多数の賛成を得ていた。学級会は「意見がいっぱい言えるから楽しい」とアンケートに答えている。
係のことでの集会は経験がなく楽しそうなので「係さん,ありがとう集会をしよう」がいいというような意見を意欲的に発表していた。
 学級会の柱1に対しては「劇がしたい」と書いていたが,提案理由やめあてから考えたものではなかったのでミニ話合いやレポート活動の際に励ましの声かけをした。
「マジックをしたい」という意見に対して初め賛成していたが,数名の反対意見を熱心に聞いて意見を変えた。いろいろな場面で,友だちの意見に途中で口を出すこともあるが,今回の学級会では,友だちの意見をよく聞いて発表していた。学級会後,友だちがよく考えて発表していたことを感想に書いていた。
学級会では「5回以上発表する」という自分のめあてが達成できたことや,友だちからも「「いい意見を言ってくれた」という評価を受けて喜んでいた。
<C児>学級会の議長
黒板書記の経験はあるが,今回のような計画委員会の仕事や議長の役をするのは今回が初めてで,不安をもっている。事前のアンケートでは「学級会は好きではない」と答えている。
議題を考えるときに「係のことで話し合うことはない」と答えていたが,計画通り進めるために記録をとったり係で相談したりして進んで活動をしていた。計画委員会でも進行役になり,少しずつ自信をもつようになった。
 計画委員会で役割分担した際,議長が決まらず,仕方なく引き受けた。学級会の進行マニュアルを何回も見て準備をしていた。
柱1の話合いの時に「がんばっている係にプレゼントをあげたい」という横道にそれた意見が出たのでどう進めていいかわからず困っていたので,教師が助言した。
 どんな出し物にするかについては,内容の深まりがなかったので,出た意見を教師が整理して進行を助けた。
学級会後は,「最初は緊張したけど,やってみたらできたのでうれしい。みんながたくさん発表してくれてよかった。」という満足感を得ることができたようである。友だちからも「よくがんばっていた」という評価を得ていた。

 ミニ学級会実践後の子どもの変容!
意識調査から見た子どもの変容
☆ アンケートより
「学級会は好きですか?」
実践前   ・・・50%
実践後(2学期末) ・・・76%
「話合いをしてよかったと思ったことが,今までにありましたか?」
実践前   ・・・50%
実践後(2学期末) ・・・72%
☆ 子どもたちの日記より
「自分たちで話し合うようになってから,けんかが減りました」
H.Sくん
「学級会で意見が言えるようになりました。」
Y.Uさん
「私は,まだ計画委員になったことはないけれど早くやってみたいなあと思いました。」
Y.Nさん
「『係さん,ありがとう集会をしよう』」の学級会をしてよかったです。ぼくは,2回発表をしてとてもうれしかったです。」
K.Sさん
☆ 生活の中から
 朝の会や帰りの会で,学級会の前にミニ学級会とは別に,学級の中で起こった問題を解決しようと自分たちで「ミニ学級会をしてください。」という声が聞かれるようになりました。


   「どうしたらいいかな?」

例)昼休みに集まった子どもたちで行っているラインサッカー中にトラブルが起こりました。その日の帰りの会でその問題が出され,学級が2つに分かれて大騒ぎになりました。
「何でちゃんとボールばとらんとっ!しっかり守ってよ!」
「だって,どうしたらいいかわからんもん!」
「自分だって,いつでんふざけて,ルール守らんやん!」
「私が失敗したら怒るやんねっ!楽しくなかね!」

「ぼくたちで話合ってルールを決めればいいと思うよ!」
「先生!今から学級会をしま〜す!」
「私が司会するゥ。いいですか?」
こうやって,ミニ学級会が始まりました。みんなで新しい約束を作りました。
「私は,キックベースのルール決めの話合いをしてよかった。あのルールを作ってからいいことが増
えた。みんなで考えた末,よくできたなあ,と思うくらいのルールになった。よかった。」

「ぼくは,キックベースのことでこわれそうな感じで教室で話し合いをしました。ぼくが,ルールをつく ろう,と言ったので意見がまとまり,学級会をしました。ルール決めをして,うまくキックベースをして みんなと遊べるようになりました。」
全体の考察
 本時の学級会の際に意見を発表したのは72%の子どもたちだったが,全員がミニ学級会やミニ話合いを通して自分の意見を発表することができていた。また,学級会の際に発表していない子どもたちの感想の中には「いろいろな意見が出て楽しかった」「友だちの意見がしっかり聞けた」などの意見が見られ,話合いに満足していたようである。自分の考えと比べながら一生懸命聞くことも,「よりよい学級をつくりたい」という気持ちを共有し活動したと考えていいと思う。つまり,議題の収集から決定までをミニ学級会をとおして全員で行うことで,課題意識の共有化を図ることができたと考える。子どもたちが自分たちの力で進めていけるよう,子どもたちに何ができて何ができないかを見きわめ,教師が事前の手立てをしっかり行うことが,自発的・自治的な活動を育てていくことになると考える。その実践の積み重ねが,いつかきっと全員参加,更には,全員発表の話合い活動を実現することにつながると思う。
 ちょっと一言
            学級活動で育てたい自発的,自治的な活動とは!
子どもに任せるためには!
 子どもに何ができて,何ができないかの教師の見極めが大切です。自分たちで,自分たちの課題を見つけ協力して解決できるようにするためには,段階的な手立てが必要です。そのためには,まず,自分たちの生活の問題に気付かせることが大事です。経験のない子どもたちにとってどういうことが自分たちで解決していかなくてはいけない問題か,どういうことをみんなで話し合うと学級がよりよくなるのかがよくわかりません。教師が,自分たちの手で解決させていきたい学級の問題をしっかり捉え,どう子どもたちに手渡していくかが問われているのだと思います。教師が意図して育てて行かなくては,子どもの力を育てることはできません。学級の実態に応じて,少しずつ子どもたちの手で活動が進めていけるように指導していきたいものです。
教師が学級の諸問題を子どもと一緒になって考え,一緒に解決に向けて行動を起こすことが,児童自らが解決していく姿勢を育てていくためにも大事なことです。
学級全体で協力しながら活動することで満足感や充実感を味わい,次の活動への意欲につながっていきます。その活動の積み重ねの中で,少しずつ自分たちでできることが増え,一人一人の子どもや学級集団を質的に高めていくことになると思います。