不登校についての基本的な理解のために

 私たち教師にとって、不登校の子どもに出会うことは特別なことではなくなりました。ふだんの学校生活の中で、多くの教師が対応を迫られている今、子どもと教師の関係をよりよいものにしていくためにも、まず「不登校」に対する基本的な理解が必要です。

 ここでは、不登校の子どもが一般的にどのような過程をたどるのかについて、子どもの「心のエネルギー曲線」から理解してみましょう。

 「心のエネルギー曲線」とは

 これまでの不登校の症例から、何らかの原因で学校を休みがちになり、不登校になった子どもが、また回復していく過程には特徴があることが知られています。この不登校の子どもがたどる一般的な過程を、「子どもの心のエネルギーの高低」で表したものが「心のエネルギー曲線」(1985年に佐賀県教育センターが作成したものを、近年の状況に応じて2005年に改訂したもの)です。

 「心のエネルギー曲線」ではこの過程を、時間的な経過に沿いながら、子どもの状態に応じて、前兆期、初期、中期、後期、復帰期という時期に分けています。

時期 子どもの主な状態 備考
前兆期 不登校傾向が見られる時期。学校への登校渋りや欠席が目立ちはじめる。保健室や相談室で過ごすことを好む子どももいる。

初期 子ども自身の気持ちも激しく揺れ動き、周囲もその対応にとまどうことが多い時期。登校に向かうエネルギーは急に落ちてくる。

初期、中期、後期は、不登校の状態(連続した欠席が見られる)をはっきり示す時期
中期 子どもの気持ちの動揺は治まり、状態としてはじっとして動きが見られなくなる。登校へのエネルギーとしては、最も低くなっている。
後期 中期の後半から後期になると、自分から動き出そうとする様子が見られるようになり、エネルギーの高まりが感じられるようになる。

復帰期 学校や社会、家庭外に向けて子どもが具体的に動き出す時期。エネルギーもぐっと高くなるが、時にはがんばりすぎて、状態としては少し逆戻りするように見えることもある。


 もちろん、これらの経過は、子どもによってエネルギーの量や回復に要する期間等に個人差があるので、一般的な曲線にならない場合もあります。しかし、不登校の子どもは、このような経過をたどってやがて回復していくものだという見通しをもちながら、その時々に応じた対応を考えていくことが大切だと思います。

 次に、「心のエネルギー曲線」に応じた、支援のねらい、具体的な手立てについても示していますので、子どもへのかかわり方の参考にしてください。

 「心のエネルギー曲線」

2005 佐賀県教育センター