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実践事例 中学校第1学年 「物質の状態変化〜エタノールと水の混合液」
単元名
水とエタノールの混合液からエタノールを取り出す。
本時の目標
水とエタノールの混合液からエタノールを分離する実験を通して、2種類の液体の混合液を加熱して出てきた気体を液体に変えて集めると、沸点の違いを利用して物質を分離することができることを理解することができる。
本時の展開の概要(6/6)
水の沸点は100℃、エタノールの沸点は78℃である。本時では、この沸点の違いを利用して、水とエタノールの混合液からエタノールを取り出す実験を行う。また、この方法を利用して、身近にあるワインからエタノールを取り出すことができることについても理解させる。
導入の事象提示のA事象、B事象の比較の視点
(エ)異なる物質に同じ操作を加えて比較させる事象提示
展開
過程
主な学習活動(○)と主な児童の意識(・)
教師の手立て(○)



○事象提示を見る

@A(エタノール)とB(エタノールと水の混合液)を熱湯でしばらく加熱する。
A加熱後の液体を脱脂綿にしみ込ませ、火をつけ、燃え方を比べる。
 


 
試験管
液体の物質名 エタノール 水とエタノール
加熱前の燃え方 よく燃える 燃える
加熱後の燃え方 よく燃える 燃えない
○A、Bについて、理由も含めながらワークシートに説明を書かせる。




○事象を説明し、考えを話し合う
・Aは、沸騰して気体になって逃げたが、エタノールに変わりはないから加熱前も加熱後も燃えた。
・Bは、加熱で沸点が低いエタノールが先に空気中に逃げて水だけが残ったから加熱後は燃えなかった。
 
<キーワード>
・混合液 ・加熱 ・沸騰

・戸惑っている生徒に対しては、エタノールやアセトンの液体に熱湯をかけたときのことを思い出させる。
・生徒の説明の交流を行いながら、共通点と相違点を考えながら、キーワードを挙げさせる。互いに相談してよいことを伝える。



○学習問題を立てる
 
水とエタノールの混合を加熱するとエタノールが先に沸騰して気体になることを調べる。

○学級全体で事象とキーワードを確認し、生徒とやりとりをしながら、学習問題を立てさせる。

○計画を立てる ・沸騰石の使用など、安全上の注意点の確認させる。

○実験を行う
 
・液が冷めた段階で、集めた液のにおいはどうか、手に付けたときの感触はどうか、火はつくかの確認はグループで進めさせる。

○結果を交流する
 
○グループごとの結果を確認しながら、共通理解を図らせる。

○結果から言えることをまとめる
・水とエタノールの混合液を加熱すると、沸点が低いエタノールが先に沸騰して気体となることが分かった。
・水とエタノールの混合液が加熱後に燃えなかったのは、エタノールが先に沸点に達し、気体となってなくなったからである。
・なぜこのようなことが起きたのかを考えさせ、“沸点”に目を向けさせ考察をさせる。
・つまずいている生徒に対しては、他の生徒と相談してよいことを伝える。
 
授業を振り返って
 事象提示から入る一連の学習の流れ{学習問題の設定→実験→結果確認→考察(最初の事象の再説明)}を取り入れることで、生徒の理解を深めることができました。また、事象の再説明では、結果から分析して考えられることを自分の言葉で説明することができました。分かったようでいても、いざ言葉で表現してみるとうまくまとめられないことが多かったのですが、本時は、十分に表現することができました。
 今回の学習の形態は、事象や結果を分析して解釈し、表現することに効果的でした。また、日頃書くことを苦手としている生徒Hにおいても、空欄をつくらず自分の言葉を文字で表現することができたのは、分かりやすさにつながっていたと考えられます。この授業の流れのパターンを生徒の中にもたせることで、より事象についての考察や課題の作り方、説明の仕方が向上できるものと考えます。
 
 

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