2011年度 人同担者研 発表資料(小学校高学年)

きみの家にも 牛がいる
[ 作:小森香折  発行:解放出版社 ]( エルくらぶ  )

きみの家には 牛がいる?
牛を飼っていなくても
牛がいないわけじゃない。

ここは牧場。乳牛が、せっせと草を食べている。
牛も人間も、歯は32本。
でも人間が草を食べても、おなかがいたくなるだけ。
胃が一つしかないからね。
牛には胃が四つある。だから草を食べても、
きちんと消化することができる。

そして、牛の体のなか、栄養たっぷりのミルクができあがる。

人間は牛から牛乳をいただく。
そして牛乳から、いろいろな食べものもつくる。

こっちにいるのは、肉牛だ。
ライオンなら、よだれをたらしておそいかかるだろう。
だけど人間は、いきなり牛にかぶりつけない。
するどいつめやきばがないもの。
「きのどくに」と、ライオンは言うかしら。

でも、だいじょうぶ。  
牛を肉の形にしてくれる人が、いるからだ。

ここは食肉市場。牛を解体するところ。

運ばれてきた牛たちは、まずシャワーを浴びて、さっぱりとする。

間近に見る牛はとっても大きい。力も強いし、おまけに重い。

牛があばれたら、働いている人は大けがをしてしまう。

だから解体する前に気絶させて、牛が動けないようにしないといけない。
血もいっきに流しだす。
そうしないと肉に血がしみだして、おいしい肉にならないんだ。

頭と前足を切り落とし、
後ろ足でつるして、皮をむきはじめる。
ライオンは皮をずたずたにするけれど、
人間にとって皮は大切な品物だ。
穴をあけてしまったら、
使いものにならない。
だからナイフや機械を使って、
肉も皮も傷がつかないように、
ていねいに皮をはいでいく。
熱湯で器具を消毒するから、夏の作業場はむしむしする。
冬は冬で寒い。肉がいたむので、暖房を入れることができないんだ。
そんななか、働く人たちは70秒で自分の仕事をこなしていく。
作業は、手早い。
らくに切れるところ、つまり関節がどこにあるか、よくわかっているんだね。

しっぽをとり、皮をはいだら、つぎは内臓をとりはずす。
肉も内臓も食べものだから、安全にはとてもきびしい注意がされている。
内臓についているあぶらも、きれいにとって利用する。
マーガリンや石けんの材料になるんだよ。

そしてもちろん、新鮮なホルモンが食べられる。

最後は、背割りだ。背骨のまんなかで、牛を二つにわる。
一頭ごとに大きさがちがうから、機械は使えない。
牛の背骨だって、まっすぐとはかぎらない。
それでも肉を傷つけないように切るのが、腕の見せどころ。

よごれをとり、形をととのえて、枝肉のできあがり!
一頭の牛がこうして枝肉になるまで、35分くらいだ。

枝肉は冷凍庫に運ばれて、格づけされる。
「霜ふり肉」って聞いたことがあるかな? 
白い脂肪が霜のようにまじっている肉のことだ。
この白い脂肪を「さし」っていう。
さしの入り具合で1(少ない)から5(多い)の5段階、
肉づきのよさでA、B、Cに評価する。つまりC1からA5まで。
うーん、つばがわいてきた。

格づけされた枝肉は、つぎの日、せりにかけられる。
肉屋さんにならんで、やっと肉が食べられる。
ね、肉ははじめから「ある」ものじゃない。
いろいろな人の手をかりて「つくられる」ものなんだ。

「いただきまーす!」

「ごちそうさまでした」?
いやいや、話はこれで終わりじゃない。
牛は丸ごと一頭、どこもすてるところがない動物だ。
はいだ皮は、よぶんなあぶらをとり、くさらないように塩づけにする。

工場から運びだされた皮は、職人さんの手で、いろいろな皮革製品になる。

皮からとれたコラーゲンやゼラチンも、いろいろなものに使われる。
アイスクリームやゼリー、グミキャンディーにマシュマロ。
シンクロナイズドスイミングの選手も、
牛からとったゼラチンで、髪を固めているんだよ。

骨だって、犬がよろこぶだけじゃない。

毛も、脂肪も、角も、ひづめも。
みんな、のこさず使うんだ。
フンや尿だって、畑の肥やしになるんだよ。

人間は、牛の命をもらっている。
そして牛の命をいかすのも、人間。
ライオンは、なんと言うかしら。

さあ、もう一度、自分のまわりを見てみよう。
牛はけっこう、たくさんいるよ。
ここにも、ほらあそこにも。


人権・部落問題学習 指導案 (高学年)

1 主題名  職業について考えよう

2 教材名  「きみの家にも牛がいる」

[ 小森香折  エルくらぶ(解放出版社)]

3 教材について

 「牛は『鳴き声」以外は捨てるところがない」と言われるくらい、様々な部位が、そのままで、あるいは加工されて、私たちの生活の中に利用されている。しかし、生活の中で牛を意識することは、「牛乳」「焼肉」「ステーキ」などの食の場以外には少ないと思われる。絵本「きみの家にも牛がいる」では、牛の各部位が、様々な形になってわたしたちの生活の中に入っていることを紹介している。
 今回、職業を考えさせるときに、絵本「きみの家にも牛がいる」を読んだ後、牛から考えられる様々な職業をイメージさせることにした。その際、牛の各部位が様々に解体・加工されてできた製品をもとにし、イメージマップの形で考えることによって、多くの職業を考え出すことができると思われる。
 まずは、私たちの生活が成り立つためには、いろいろな職業があり、一つひとつの職業は、それぞれに関係し合っており、どれも欠かせないものであることに気づかせたい。そして、将来就きたい職業を選択する際に、それぞれの職業の持つ重要性を意識してほしいと思う。
 また、長い間、被差別部落の代表的な産業であった皮革産業などを扱うことにより、部落史・部落問題学習の中で「差別されてきた人々」の生き方や考え方について学習する際に、より深めることができると思う。

4 ねらい

○ 様々な職業によって、私たちの生活が成り立っていることに気づかせる。
○ 職業は、他の職業と密接にかかわり合っており、それぞれが重要な役割をもっていることを理解させる。

5 本時の計画

 絵本「きみの家にも牛がいる」を読み(聞き)、牛が様々なものに利用されていることを知る。
 牛から考えられる職業について出し合い、互いに密接にかかわり合っていることを知る。

6 本時の展開

学  習  活  動 主な発問と予想される児童の反応 指導上の留意点
1 牛から連想されるものを出し合う。 ○牛からどんなものが思いうかびますか。
 * 牛乳 ステーキ すきやき
絵本
「きみの家にも牛がいる」
2 「きみの家にも牛がいる」を読んで、牛のほとんどの部位が家の中にある食品や道具などに形を変えて存在していることを確認する ○牛の各部位がどんな所に使われているか調べましょう。
 * 皮………太鼓、靴、ボール
 * 肉………食肉
 * 内臓……食用(ホルモン)
 * 脂肪……石鹸、マーガリン
 * 骨………ボタン、接着剤
 * ミルク…チーズ、バター
 * 角………印鑑
 * 糞尿……肥料
 
ワークシート
3 牛から考えられる職業を見つける。 ○2で確認したことをもとに、どんな職業があるか考えましょう。
 
育てる 飼料作り 獣医 教育
  大学 研究所 薬剤師・・・
 
 皮づくり 皮の加工 製作
  製品の運送 販売 ・・・
 
 解体処理 機械・道具製作
  冷凍保存 精肉 加工 運送
  パック詰め 販売 ・・・ 

  搾乳 瓶詰 ガラス工場
  製紙工場 加工 運送 販売
 
 加工 運送 販売・・・
ワークシート
4 それぞれの仕事がかかわり合って、私たちの生活が成り立っていることを知る。 ○ある仕事を誰もしなかったらどうなるか考えてみましょう。
 * 解体処理
    → 肉が食べられない

    → 皮製品が作れない
 どれをとっても、人間の生活には欠くことのできない重要な仕事である。
ワークシート
5 今日の学習で考えたことをまとめる。 ○今日の学習で考えた事を書きましょう。  

  ワークシート(1)    ワークシート(2)

○ 他の学習との関連

 6年社会科 「平安時代の貴族のくらし」

       死・産に対する「けがれ」意識 → 斃れ牛馬の処理

       蘭学の広がり   → 「解体新書」  腑分けの技術 

       「四民平等と解放令」   → 職業選択の自由  

 5年社会科 産業について  農林水産業  製造業  運送業 

 4年音楽  和楽器に親しむ     → 和太鼓

○ 授業後の感想

*一つの牛でこんなに仕事が係わっていることを初めて知った。さばいたり皮をはいだりする仕事は、出来るならしたくないけど、生活の中では、なくしてはならない仕事だと思った。

*こんなに牛だけでも仕事があるんだなあと思いました。ただ加工されてスーパーに行くだけだと思っていました。

*私は、今まで、肉をふつうに食べてきたけれど、牛もいやな思いをして殺されているんだなあと思いました。私が牛だったら、ぜったいにいやです。私は人間でよかったなあと思いました。

*牛は、私たち人間のために命をなくしていたということをあらためて知りました。今度牛を食べるときは、感謝して食べたいと思います。

*肉を食べる前に、いろいろなことをして、私たちのところに来ているんだなと思いました。いろいろな仕事があるんだなと思いました。

*牛一つだけでもたくさんの仕事があったので、びっくりしました。私は、できればさばく・はぐ・なめすなどの仕事はしたくないなあと思いました。

*牛からこんなにいろんな職業が出るとは思いませんでした。わたしたちの生活に、牛はたくさんぎせいになっていると、あらためて感じました。そのためには、つらい仕事をしてくれている人もたくさんいると分かりました。牛には悪いけど、これからもまたお世話になろうと思います。

*牛から思ったよりたくさんの職業が出てきてびっくりしました。4人で考えると、1人で考えるよりたくさん思いつくことができました。