佐賀県に伝承されてきた祭りや民俗芸能を紹介します。
素朴な先祖の祈りにあなたもふれてみませんか?
コラムトップへ戻る
地域おこしとしての伝承芸能

蛇浮立杵島郡山内町では毎年秋に「産業祭」というまつりが行われています。町民が地元の特産品を味わい楽しみながら一日を過ごすイベントです。

その中に「鎮守の祭」というプログラムがあり、町内に伝承されている伝統芸能「浮立」の上演が各地区交代で行われています。

山内町には、各地区に「浮立」の保存団体があり、伝承活動がさかんです。しかし町民がこぞって一つの地区の芸能を目にする機会はありません。なぜならどの地区も同一日にそれぞれの氏神社に集い、「浮立」を奉納するためです。

地元のよさというものはそこにいる住民にとってはなかなか見えにくいものです。経済的な問題や住民の職種の多様化もあって、県内の多くの地域でも伝承活動そのものに対する考え方はさまざまです。

「浮立」に用いる太鼓や笛や鉦などの楽器、出演者の衣装などをそろえるためにはやはり経費がかかりますし、仕事の都合で練習に人が集まらないなどといったことはよく聞かれます。

戦時中、金属の供出が強いられたとき、多くの地区では「鉦」を失いました。それを機に途絶えてしまった芸能も少なくありません。しかし今日では道具も人も揃っているのに、失われていく伝統芸能が後を絶ちません。

何百年もの長い間、こうした民俗芸能が受け継がれてきたのはなぜでしょうか。そしてそれが今、存亡の危機に立たされているという現実をどうとらえたらよいのでしょうか。

人々の生活の糧が自然の恵みによって得られていることへの感謝や祈りの気持ちが、祭りや民俗芸能となって表現されているのではないでしょうか


一度失われたものを元に戻すことはなかなか容易ではありません。何百年もその土地に根付き伝えられてきた文化は、人々の「残したい」という気持ちに支えられて守り受け継がれてきたものです。

現在では民俗芸能などの伝統文化が町おこしの依りどころとしてとらえられる面がありますが、地元の伝統芸能を通して先祖の信仰の原点を見つめ直すことは価値あることだといえるのではないでしょうか。