○ 学習指導案     小学校第5学年「国語科」


1 単元名 「好きな本を読んでポップで紹介しよう」 (平成21年10月15日実施、33名)
        教材 「大造じいさんとがん」(光村図書5年下、東京書籍5年上)

授業実践者:長尾 真司 

2 単元について

本学級の児童は、「夏のわすれもの」(4年上)で物語の盛り上がりについて考える学習を、「世界一美しいぼくの村」(4年下)では、出来事の流れから、人物の心情を読み取る学習をそれぞれ行ってきた。さらに、「ちかい」(5年上)では、出来事の流れや人物の心情の変化を読み取り、自分なりにまとめる学習も行ってきている。しかし、物語を読むときの中心となる登場人物について、その相互関係をとらえそれらに基づいて心情や場面の描写をとらえる力は不十分である。
本学級の児童は、国語に対する苦手意識をもつ児童が多い。特に、漢字や作文等の反復的、継続的な活動への抵抗が見られる。これは、学習の進め方が身に付いていないことと、活動に目的や価値をもたないまま行っている結果であり、学習の進め方を身に付けさせ、主体的に取り組める工夫を行うことで改善されていくと考える。また、交流活動の面では、個々に思いのまま発言することはできるが、相手の意見や考えを受けて発言することができる児童は少ない。形態や方法など、交流の仕方を工夫していく必要がある。
本単元は、一人一人の登場人物の気持ちの変化だけではなく、登場人物の相互関係から人物像やその役割をとらえ、内面にある深い心情も合わせてとらえることができるようにするために設定する。教材文「大造じいさんとがん」は、起承転結の場面構成がわかりやすく、会話文や地の文の中にじいさんの気持ちを直接表現している言葉が多く見られる。また、情景描写を通してじいさんの気持ちを暗示している表現もある。このような作者の表現の工夫は、中心人物の気持ちの変化を読み取る力を付けたり、直接文章に表現されていない内面にある深い心情を想像を広げながら読み取る力を付けたりするために、適した教材文であるといえる。

指導にあたっては、本を読んで推薦の文章を書く言語活動として、ポップ作りを取り入れる(「読むこと」(2)エ)。ポップ(広告カード)で本を紹介するには、文章をよく読み込み、作者の伝えたい事をできるだけ短い文章で表したり、推薦するための言葉などを自分の言葉で表現したりする力が必要である。本単元では、図書館にある本の中で自分の気に入った本を多くの児童に読んでもらうため、ポップを作って紹介する活動を仕組む。ポップには、本の題名、作者の名前、主題を一文で表したキャッチコピー、おすすめの場面の紹介の4つの内容を書かせることにする。児童には、教材文「大造じいさんとがん」でのポップ作りを通した学習で、登場人物の相互関係から人物像やその役割をとらえる力や、情景描写を通して暗示された登場人物の内面にある心情を想像を広げながら読み取る力を付けたい。登場人物の相互関係から人物像やその役割をとらえさせることについては、大造じいさんの残雪に対する「たかが鳥」という気持ちの大きさを線の太さで表現させることで、その気持ちの変化を読み取らせていきたい。この学習で付いた力を使う場として、図書館にある本を紹介する活動へと広げていくことで学習を通して付いた力が定着していくと考える。
学習の進め方を身に付けさせるために、単元を通して、「めあてをもつ」、「見通す」、「自分の考えをもつ」、「考えを交流する」、「まとめる」、「振り返る」の一時間の流れを意識しながら進めていきたい。

3 単元の指導目標

ポップ作りを通して、登場人物の相互関係や心情、場面についての描写をとらえ、優れた叙述について自分の考えをまとめることができる。

 

4 単元の評価規準

ア 国語への関心・ 意欲・態度 1 本を紹介するためのポップ作りに関心をもち、意欲的に教材文や選んだ 本を読もうとする。
イ 読む能力 1 がんの頭領残雪に対する大造じいさんの心情の変化を、心情を暗示する 情景描写とともに読み取り、優れた叙述に対して自分の考えをまとめてい る。 【C読むこと(1)エ】
ウ 言語についての知識・理解・技能 1 登場人物の心情を暗示するような優れた情景描写に関心をもつことがで きる。【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項イ(カ)】


5 指導と評価の計画 (全9時間)  本時は6/9 

学習内容及び学習活動

教師の指導・支援
□ 評価とその方法













読んだ本をポップにして紹介することを知る。




作品を一読して、初発の感想を書き、学習課題を決める。



ポップに載せる内容について確認し、学習計を立てる。


場面分けをする。

・ポップとはどんなものかを紹介し読み取ったことをポップにまとめることを知らせ、学習に目的意識 と相手意識をもたせる。
□ア―1読んだ本の紹介をポップにして紹介することに関心をもっている。 (観察)
・初発の感想は、〜が…して(…によって)‥する話という形の一文にまとめさせる。
□ア―1ポップを作るために意欲的に教材文を読もうとしている。 (観察)

・児童の初発の一文を分類・整理させることで、それぞれの読み方の違いに気付かせ、学習課題をもたせる。
・ポップには、主題、おすすめポイントなどが必要であることに気付かせ、学習計画を立てさせる。
・大造じいさんの行った計略に着目させることで、場面分けをさせる。





場面の名前を考え、冒頭の場面の内容を読みとる。 ・前時に分けた場面に名前を付けさせることで、文章の大体をとらえさせる。
□イ―1各場面を読み、場面の名前を付けることができる。 (ワークシート)
□イ―1叙述を基に大造じいさんと残雪について読み取ることができる。 (ワークシート)







大造じいさんががんをつかまえるために行った計略について読み取る。 ・つりばりの計略とたにしの計略の場面を比べて読ませ、その共通点と相違点を見付けさせることで、残雪の行動と大造じいさんの気持ちを読み取らせる。
□イ―1残雪の行動と大造じいさんの気持ちを読み取ることができる。 (ワークシート)
作者の表現の工夫を考えながら、大造じいさんの気持ちを読み取る。 ・新たな計略を始める時、大造じいさんの心を決意を暗示するように表現されている情景描写に気付かせる。
□ウ―1作者の表現の工夫に関心をもっている。
(観察・ワークシート)
はやぶさと残雪の死闘の場面を中心に読み、大造じいさんの心の変化を読み取る。


・大造じいさんの心はどこで変わったのか、なぜ、変わったのかを文章全体に読みを広げながら読み取らせる。
□イ―1大造じいさんの心の変化を読み取ることができる。 (ワークシート)
大造じいさんが残雪を見送る場面を読み、主題について考え、大造じいさんとがんを紹介するポップを完成させる。
・大造じいさんと残雪の関係を想像させ、その関係に対する自分の考えをまとめさせる。
・主題とおすすめの場面の紹介をポップにまとめさせる。
□イ―1大造じいさんと残雪の関係について、自分の考えをもつことができる。(ワークシート)
□ア―1意欲的にポップ作りに取り組んでいる。 (観察)
好きな本を選んで読み、ポップを作って紹介する。

・大造じいさんとがんを通して学習した読み方を使って、自分の選んだ本の紹介をポップにまとめさせる。
□ア―1自分が紹介したい本を選び、意欲的にポップ作りに取り組んでいる。 (観察)
□イ―1主題について、自分の考えをまとめることができる。 (ワークシート)

6 本時の計画 (6/9) 

 (1) 目標

残雪の行動とそれに対する大造じいさんの言動や行動から、大造じいさんの心の変化を文中の 叙述を基に読み取ることができる。
 
  (2) 展 開
児童の学習活動
指導上の留意点及び評価
前時までの学習を振り返る。

これまでの学習で読み取った残雪の行動に対する大造じいさんの気持ちをおさえる。
まとめの場面を読み、大造じいさんの心が変わったことに気付き、本時のめあてをもつ。

本時の学習目標
大造じいさんの心はどうしてかわったのか考えよう




残雪に対する大造じいさんの心が、はやぶさとの死闘の前までと残雪を見送る時とでは違っていることに気付かせる。

「さあ、今日こそ、あの残雪めにひとあわふかせてやるぞ。」と「大造じいさんは、強く心を打たれて、ただの鳥に対しているような気がしませんでした。」の2文を比較させ、大造じいさんの心が大きく変わったことに気付かせ、本時のめあてをもたせる。
 
学習の見通しをもつ。
(変わった理由)
・残雪の行動や様子を表す言葉を探す。





前時までの読み取りで、行動を表す言葉や気持ちを表す言葉を探したことを想起させ、文中のどんな言葉を探せば、変わった理由が分かるか考えさせる。

じいさんの心を動かす要因になったのは、残雪の行動や様子であることに気付かせ、見通しをもたせる。

一人調べをして大造じいさんの心はどうして変わったのか自分の考えをもつ。
[何によって]
・いきなり、敵にぶつかっていったところ。
・力いっぱい相手をなぐりつけたところ。
・残りの力をふりしぼって、ぐっと長い首を持ち上げたところ。
・正面からにらみつけたところ。
・いかにも、頭領らしい、堂々たる態度。
・最期の時を感じて、せめて頭領たるいげんを きずつけまいと努力しているところ。


大造じいさんの心を動かす要因になった残雪の行動や様子を探し、その理由も合わせてワークシートに書かせる。

【評価@】
  大造じいさんの心を動かした残雪の行動や様子を文中から探すことができる。(ワークシート)

大造じいさんの心を変えた残雪の行動や様子について、考えを交流する。
・グループで交流する。
・全体で交流する。
・いきなり、敵にぶつかっていった残雪の 勇気に感心したから。
・人間もはやぶさもなく戦っていた残雪に 感動したから。
・最期の時を感じているのに、努力してい る残雪がただの鳥に思えなかったから。



















大造じいさんの心を変えた残雪の行動について考えていくことで、他の場面の出来事や大造じいさん の気持ちを振り返らせたい。

交流の形態は、グループでの交流から全体での交流へ広げていくことで、より深い読みへとつなげていきたい。


大造じいさんの心はどうして変わったのか、自分の考えをまとめさせる。


本時の学習のまとめをする。
本時は、残雪のとった行動からと大造じいさんの気持ちを考えていったことを確認させ、大造じいさんの気持ちを人物関係図に矢印で表現させ、その理由も書かせる。

【評価A】
  大造じいさんと残雪をつないだ線の理由を、叙述を基に書くことができる。

学習を振り返り、次時の活動を確認する。

児童自身の学習の進め方等について振り返らせる。
学習計画から、次時の活動を確認する。


 
項目
 
評価基準
評価規準  


C (手立て)
評価
@
大造じいさんの心を動かした残雪の行動や様子を文中から探すことができる。 残雪の行動や様子を一つ以上抜き出し、理由も書くことができる。 残雪の行動や様子を文中から一つ抜き出すことができる。 主語に着目させて、残雪の行動や様子を表す言葉に目を向けさせる。
評価
A
大造じいさんと残雪をつないだ線の理由を、叙述を基に書くことができる。 本時の場面だけではなく、既習の場面の言葉も使って、つないだ線の理由を書くことができる。 おとりの計略の場面の言葉を基に、つないだ線の理由を書くことができる。 大造じいさんの心を変えた残雪の行動などを振り返らせる。


*今回の実践を基に、作成した全時間分の指導略案、ワークシートはこちらから。