○ 学習指導案    中学校第3学年 「 数学科 」


1 単元名 「課題学習」 (平成20年10月16日実施,38名)
         〜ジュースを平等に分けよう!〜

導入の場面です 授業実践者:渕上 純

2 単元とその指導について

教育課程実施状況調査や国際的な学力調査の結果から,「身に付けた知識・技能を実生活や学習等で活用することが十分にできていない。」などの課題が見られた。
   このような背景から,学習指導要領解説数学編には,授業において,数学的活動を通して,獲得した知識を実際に活用できる力に高めたり,数学が日常と結びついた生きた学習であることを生徒に実感させたりすることが重要であると示されている。
  本単元にかかわって,小学6年生の「B量と測定」の領域では,「概形とおよその面積」において,身近にある図形について,その概形をとらえ,およその面積などを求めることを学習し,「体積」において,立方体及び直方体の体積の求め方を考え,それらを用いることを学習している。
  中学1年生の「図形」の領域では,基本的な柱体,錐体の表面積と体積の求め方を学習している。また,中学2年生の「図形」の領域では,図形を観察したり,作図したりする操作や実験を通して,推論の過程を的確に表現できるようにすることも学習している。
   本単元は,弁当箱を理想化・単純化した直方体の容器を使って量を量るという活動を行う。生徒にとって身近なものを考察の対象とし,量を測定するという活動を通して,思考力,判断力,表現力を育成するとともに,日常生活で数学を利用することが実感できる内容である。


本学級の生徒は,男女の仲が良く,授業に意欲的に取り組むことができる学級である。また,教師の発問に対しても反応がよく,質問も積極的に行う。H20年度全国学力・学習状況調査(数学)の結果では,全体的には全国通過率を上回っているが,活用に関する問題において通過率がやや低く課題が見られる。
  課題学習については,1学期に,数学的活動を通して,獲得した知識を実際に活用できる力に高める授業を行っている。今回は,数学的活動を通して,数学が日常と結びついた生きた学習であることを生徒に実感させる授業に取り組む。

指導にあたっては,容量1800mlの弁当箱を使って300mlを量るという課題に取り組み,数学的活動を通して,獲得した数学の知識を実際に活用できる力を高めていきたい。また,数学的活動を下記のように細分化し,その活動が行われているか学習の過程で意識をしながら指導していきたい。
   ア 観察,操作などの具体的な活動
  イ 生徒が自ら取り組む活動
  ウ 数理的に考察する活動
   エ 自分の考えを人に伝える活動,人の考えを理解する活動
  オ 発展的に考える活動
  カ 目の前の課題から,物事の本質を見抜こうとする活動
  キ 自分が行った活動を振り返る活動
   このような数学的活動に主体的に取り組ませることで,思考力,判断力,表現力を育成するとともに,数学を学ぶことの面白さや考えることの楽しさ,数学の必要性や有用性を感じさせたい。

3 単元の目標

   観察や操作を通し,工夫して図形の計量ができるようにする。また,その方法を数理的な根拠 を用いて説明できるようにする。

4 単元の計画 1/1(本時)

 

5 評価規準

6 本時の学習指導 1/1  場所:3年学習室 時間:2校時

 (1) 目標

○   300mlを量るという課題に関心をもち,既習の学習内容を用いて解決しようとする。
  ○   300mlを量る方法を既習の学習内容から考え,説明することができる。

 (2) 利用環境<本校の環境>

○  主なハードウエア

パソコン プロジェクター

○  主なソフトウエア

パワーポイント 

 (3) 展開

児童・生徒の学習活動
教師の指導・支援(※評価)
本時の課題を知る。
導入の場面です





吉野ヶ里歴史公園のイメージキャラクターや風景の写真を見せ場面を設定する。
公園に家族でピクニックに行ったときの課題を説明し,日常生活のできごとと数学を結び付けられるようにする。
プレゼンテーションソフトによるプレゼンで行う。
 
量り方を予想する。

【生徒の予想】
  ・ 縦横高さの測定から求める。
  ・ 重さから求める。
  ・ 立体の体積の求め方を利用して求める。

【数学的活動】
  ウ 数理的に考察する活動


道具を提示している場面です




実際の弁当箱を見せ,意欲的に量り方の予想ができるようにする。
物差し,量り,メジャー,マジック,てんびんを見せ,長さ,重さ,図形の性質などに着目させ,既習の学習を基にして,考察するように促す。
考えた予想を発表する。
生徒の予想を簡単にまとめながら板書する。
 
















班で具体的な観察や操作を通して,課題を考える。

【数学的活動】
  ア  観察,操作など具体的な活動

【数学的活動】
  イ 生徒が自ら取り組む活動
生徒が実際に操作している場面です


















生徒の予想を全体で確認した後,長さなどを測らずに,300mlを量るために弁当箱を理想化・単純化し,直方体と見なして考察することを伝える。
直方体の容器(1800ml)を提示し,容器を使って300mlを量る方法を考えるように促す。
各班に直方体の容器と2?の水が入っているペットボトル,500mlの計量カップ,バケツ,おぼんを配る。
観察や操作を通して,意欲的に300mlを量る方法を考えられるようにする。
300mlの量は,ビーカーを使って確認させるようにする。

各班の質問のレベルに応じて,適切なヒントを与える。
高さを半分にするなど目分量で考えている生徒には,数理的な根拠に基づくように促す。
解決の糸口が見つけきれない班には,図形の性質や立体の体積の求め方を思い出させるように,立体の模型を与える。

※ 300mlを量るという課題に関心をもち 既習の学習内容を用いて解決しようとしているか。
【興味・関心】(観察)
活動が進まない班はヒントを聞く。
【ヒント】
1800mlの半分の900mlを量る方法を考えてみよう。
直方体・三角柱・三角錐の体積の求め方を思 い出してみよう。
立体模型を使って考えてみよう。
300mlを量る方法がわかった班は,その方法を教師に説明する。 各班が示した方法でなぜ300mlになるのか図形の性質を使って説明を考える。
 
 
【数学的活動】  
自分の考えを人に伝える活動,人の考えを理解する活動





どの生徒が,指名されても答えることができるように各班で理解を深めさせるようにする。

根拠がわからない班には,立体の模型を使い,直方体と三角柱の体積や三角柱と三角錐の体積など,どこに着目するのかをアドバイスする。
300mlになる理由を発表する。 実際に操作を行いながら,根拠を明らかにし発表させるようにする。 
 
生徒が説明している場面です
 
※300mlを量る方法を既習の学習内容から考え,説明することができる。
【数学的な見方や考え方】(発表・観察)
単元の目標をまとめる。
これまでの活動をまとめる。
【数学的活動】  
 カ 目の前の課題から,物事の本質を見抜こうとする活動


図形の性質を使って,図形の計量を行うことができることと,説明の際には根拠を明確にすることが大切だということをまとめる。
発展的な課題を考える。
【数学的活動】
  オ 発展的に考える活動





容器(900ml)の模型を示し,頭の中でイメージしやすいようにする。

容器に水は入れないが,模型を操作しながら発表させるようにする。
 
 
発展的な問題の場面です


解答後,どういう操作でその量が量れたのかを確認する。
プレゼンテーションソフトで示す。
10 本時の学習について振り返る
【数学的活動】
  キ 自分が行った活動を振り返る活動
一升升を使って説明している場面です





日本では,一升瓶を使って米やお酒などを計量していたことを紹介する。
実際に一升升に米一升を入れ,米五合を図形の性質を使って量る方法を考え,本時に学習した内容を振り返させるようにする。
図形の性質を基にした考え方が日常生活で使われていたことに気づかせるようにする。
     
        

7 児童・生徒の反応





「どこを底面にしようか?」「つまりどうにかして錐にすればいいんじゃない?」など各班において,意欲的に観察,操作活動が行われていた。
量った水の量が生徒の予想と違った結果になり,なぜそうなるのか生徒同士で数理的に考察する活動が見られた。
一升升に米一升を入れ,米五合を図形の性質を使って量る方法を考えさせる,学習した数学を日常生活に戻す場面では,とても印象に残ったようだった。

8 授業を終えて

 

思考力,判断力,表現力を育成するとともに,数学を学ぶことの面白さや考えることの楽しさ,数学の必要性や有用性を感じさせるために,数学的活動を細分化し,その活動が行われているか学習の過程を意識しながら指導を行った。
ア:観察,操作などの具体的な活動,イ:生徒が自ら取り組む活動,エ:自分の考えを人に伝える活動,人の考えを理解する活動については,生徒同士の活発な活動が見られた。しかし,カ:目の前の課題から,物事の本質を見抜こうとする活動やオ:発展的に考える活動の場面において,生徒の誤答を用いて授業を深めていくチャンスがあったにもかかわらず,観察,操作の時間に押され授業を深めていくことができなかった。
全体的には生徒の反応もよく,数学が日常と結びついた生きた学習であることを生徒に実感させる一つの機会になったと思われる。