○ 学習指導案    中学校第2学年 「 技術・家庭科 」


1 単元名 「わたしの自慢の朝食をつくろう」 (平成20年9月実施,35名)        

授業実践者:大島 和子

2 題材とその指導について

毎日の食事は健康な生活を支えるために大切なものである。しかし近年,子ども達の食を取り巻く状況を見ると,食生活を取り巻く社会環境の変化などに伴い,食習慣の乱れが生じてきている。栄養の偏り,朝食の欠食などの不規則な食事,肥満や生活習慣病の増加などの問題に加え「食」の安全上の問題や,「食」の海外への依存の問題が生じており,望ましい食習慣の形成は国民的課題となっている。このような中で,平成17年に「食育基本法」が成立し,翌年の3月に食育推進基本計画が策定された。平成20年3月に公示された中学校学習指導要領(技術・家庭科)においても,食育の充実が求められている。そこで,これまでの食生活の学習で得た知識・技術を活用し,自分の食生活の課題を解決するための方法を考え,家庭において実践することで,食生活をよりよくすることができる生徒の育成をねらい,本題材を設定した。

生徒たちの食に対する関心は高く,学習に対して意欲的に取り組む生徒が多い。7月の事前アンケートによると,生徒の朝食の摂取率はほぼ100%であるが,食事内容を見ると,主食に飲み物という簡単なもので済ませる子どもが約60%という結果であった。また,家庭での食事の準備については約33%の生徒は全くしないと答えている。食品を購入する際に注意することとしては,「栄養」「原材料」「安全性」を挙げた生徒は約5%であった。このような実態から,「朝食づくり」の題材を通して,これまでの自分の食生活を振り返り,健康で安全な食生活にするために行動することができるようになることは大変重要であると考える。

本題材を,自己の食生活を見直し,栄養素の種類と働きを知ること,食品の品質を見分け,用途に応じて適切に選択することができること,日常食や地域の食材を生かした調理の工夫ができること等,中学校における食生活の学習のまとめとして位置付ける。また,家庭科における食に関する指導を明確にするために,食べ物への感謝や食文化などを「食育の視点」として指導計画の中に具体的に示す。
  指導にあたっては,まず,「ウェビング法」を用い既習内容を把握させ,心身の健康や栄養だけでなく,食品の選択や食環境や食文化なども想起させることにより,朝食の重要性を理解させる。その後,各自の朝食調べを基に,「栄養を考えた食品の組み合わせ」を共通テーマとし,グループ毎に「健康」「能率(加工食品の利用)」「旬の食材」「地産地消」等の中から更にテーマを選び,これまでに習得した知識・技術を活用し,テーマに沿った朝食の献立作成及び調理ができるようにする。その際,家の人から朝食づくりの情報を収集することで,家庭のよさや違いに気付くとともに,食事を作ってくれる人への感謝の気持ちや食文化に関する先人の知恵を学ぶことができると考える。本時においては,前時の調理実習を基にグループ毎の発表を行い,アドバイスを得ることで,「わたしの自慢の朝食」を考え,家庭における実践への手立てとしたい。

3 題材の目標

朝食について関心をもち,グループのテーマに沿った朝食作りを通して,既習の学習内容を活用し,食品の組み合わせを工夫し,栄養バランスのよい「わたしの自慢の朝食」を考えることができる。

4 学習活動における具体の評価規準

   
 観点     関心・意欲・態度   工夫創造     技 能

知識・理解

ア 朝食づくりに関心をもっている。

イ 安全と衛生に心がけて,調理実習に取り組んでいる。

ア 自分の食生活を振り返り,課題を設定することができる。

イ テーマに沿った朝食の献立をたてることできる。

ウ 各グループからのアドバイスを参考に「わたしの自慢の朝食」献立を考えることができる。

ア 基本的な調理操作ができる。

イ 実習を基に説明用資 料(レシピ)を作成する ことができる。

ア 朝食の大切さについて理解している。

イ 自分たちの朝食のポイントを,他グループへ説明ができる。

5 食育の視点

  • @ 朝食をとることの重要性を確認し,人と一緒に楽しく食べることができる。
  • A 自分の健康を考えて,安全な食べ物を栄養バランスよく食べることができる。
  • B 食べ物に感謝して大切に食べることができる。                                 C 日常の食事は,地域の農産物と関連していることや,地域の伝統と結び付き,先人によって培われた多様な食文化があることについてについて知り,自分の食事に取り入れようとする。
 

6 指導計画(全6時間)

学習過程
主な学習事項
時配
教師の主な支援
評価規準
食育の視点
気付く(課題設定)
自分の朝食から問題点を見付け,既習事項を基に課題を設定する。
・朝食調べやこれまでの既習事項のウェビングより,課題設定ができるようにする。
・グループ発表までの流れを確認することにより,学習の見通しをもたせる。
工夫創造ア
知識・理解ア
@
A
見通し・追求する テーマに沿った朝食の献立を考え,調理実習を行う。
 (計画を立てる)
・必要に応じて参考にさせるために,パンフレットや献立カード等を準備しておく。また,家庭での調査内容も参考とするように助言する。 関・意・態ア
工夫創造イ
C

(調理実習をする)

 


2
・実習計画表により,安全に留意して調理できるよう配慮する。 関・意・態イ
技能ア
技能イ

@

B

 (まとめる) ・デジカメの写真を用いた資料(レシピ)を作ることにより,他のグループが発表内容が視覚的にとらえられるようにする。
・工夫点をキーワード的にまとめさせることで,発表内容のポイントを把握させる。
まとめ・ ひろげる ・グループ発表会を行う。               ・わたしの自慢の朝食について考える。
1
・これまでの活動を共有化するために,調査を通して得られたことや実習の写真を示しながら,グループで考えた朝食について,他のグループに出向き発表させる。
・友人や家庭からアドバイスを伝えることで,実践への意欲を高めるようにする。
知識・理解イ

 

工夫創造ウ
A
見つめ・生かす

7 本時の学習指導 (6/6) 場所:教室 時間:2校時

 (1) 本時の目標

○ 自分たちが考えた朝食について,分かりやすく説明することができる。    (知識・理解)

○ 家庭での実践に向けて,各グループからのアドバイスを参考に,「わたしの自慢の朝食」を考える

 ことができる。                                       (工夫創造)

 (2) 本時の展開

生徒の学習活動
教師の指導・支援(※評価)

各グループのテーマを確認する。




前時までの活動を賞賛することにより,本時の学習への意欲を高めるようにする。
本時の課題を確認する。
学習のめあて
各グループからのアドバイスを参考に,「わたしの自慢の朝食」を考えよう。
1時間の流れを簡単に説明することにより、学習の見通しをもたせる。
グループのテーマを基に作成した朝食について発表する。
充実した発表会にするために,発表の方法やマナーについて確認する。

・発表時間は2分間とし,グループの中の一人が,他のグループに発表に出向く。
                 発表のようす

※各グループの発表順【PDF】

発表内容は,自分たちのテーマと,調査した内容・献立・工夫点などとし,資料(レシピ)を使って要領よく発表するように助言する。
 

※発表用資料(レシピ)

・聞く側は2色の付せん紙に(参考になった点:黄色,アドバイス:ピンク)記入し,発表者に渡す。
自分の朝食づくりに生かせることを見付けながら発表を聞くように促す。
発表者へのアドバイスは,前時までにグループで調べた内容を基にするとよいことを伝える。

<参考になった点>

・旬の食材がたくさんあったところ。

・しょうが焼きは難しそうなのに,簡単に作れたところ。

・エネルギーとカルシウムを効率よくとれるところ

・簡単でとても早くできそうで,栄養もしっかり取れているところ。

<アドバイス>

・旬の果物(柿など)を加えた方がよい。

・ヨーグルトのジャムを旬の果物にするともっとよい。

【技能(イ)】
実習を基に,他グループへの説明ができる。
〈観察〉
・支援−発表内容説明のための台本(枠のみ)【PDF】を準備する。
他グループからのアドバイスを参考に,各自で「わたしの自慢の朝食」を考える。 グループの献立を大幅に変更するのではなく,食材や調理法などを修正することにより,「わたしの自慢の朝食」を考えることを伝える。

・ 献立
  ・ おすすめポイント
  ・ 作るときに気を付けること

修正した献立については,食品群別摂取量のめやす(教科書p32,33) を用い,栄養のバランスを確認するよう指示する。
【工夫創造(ウ)】
食品の組み合わせや栄養バランスのよい「わたしの自慢の朝食」献立を考えることができる。
〈ワークシート〉
・支援−家庭での「朝食づくり調査」を参考にさせる。
「わたしの自慢の朝食」を発表する。 「朝食づくり調査」における家庭からの「わたしへのアドバイス」を紹介し,家族の思いに触れさせることにより,家庭での実践を促す。
ワークシートの「学んだこと」を記入する。 これまでの学習の成果を確認し,これからの食生活に生かすように意識付ける。
※ 資料等
指導案【PDF】         
ワークシート(1枚ポートフォリオ)【PDF】     
朝食づくり調査(家庭でのインタビュー課題)【PDF】

8 生徒の反応

  • ○何気なく朝食を食べていたので,いろいろなことを学べてよかった。
  • ○朝から料理をするのはめんどうだなあと思っていたけど,授業を受けてやってみようと思った。
  • ○健康や栄養のバランスに気をつけようと思った。
  • ○毎日朝食を作ってくれる親の気持ちが分かった。

9 授業を終えて

  • ○ 全員が他のグループに出向いて説明する形式を取り入れたが,生徒一人一人の基礎・基本の定着を図るために有効な手立てあったように思う。
  • ○ 家庭でのインタビュー内容を授業の中で扱ったため,家族の思いにも触れることができ,実践への意欲を高めることができた。
  • ○ アドバイスを与える視点(自分たちが調査した内容)を明確にしておく必要があった。