○ 学習指導案    中学校第2学年 「 理科(選択授業) 」


1  単元名 「回路と電流」 (平成19年11月実施,37名)

授業実践者:塩田 洋己

2 単元とその指導について

 電気は毎日利用しており身近に存在しており、現代の人間の生活と切り離せないものになっている。しかし、電流や電圧を直接体験することがないことや家庭の電気器具もコンセントを入れて、スイッチを押せば簡単に動くものが多いため実感しにくいものである。そのために、小学校3年の「豆電球にあかりをつけよう」と小学校4年生の「電池のはたらき」の学習での体験は貴重なものである。本単元では、小学校での体験を基に、電流や電圧の性質を理解させ、観察・実験を通しその2つの規則性を見いださせるように構成されている。
 また、3年生では、「くらしとエネルギー」「科学技術とわたしたちのくらし」「エネルギーとはなにか」では、生活に役立つ電気をエネルギーとして取り扱っている。つまり、他のエネルギーへの変換も容易で、変換効率のよい使いやすい電気エネルギーの基礎知識の習得を本単元の学習の目的として捉えておく必要がある。
 一般的に生徒は,電気製品を利用していても、動いている仕組み等について考えることは少なく当たり前のこととして受け止めていることが多い。また、H17年度佐賀県児童・生徒学習状況調査の結果を見ても、観察・実験を行うときに実験の条件を制御することが苦手であると指摘されている。さらに、教師は、観察・実験結果は出たけれど考察やまとめが生徒たち自身でうまくできていないと感じているものが多い現状がある。
 選択授業での学力向上として、イベント的なものではなく必修授業で学習したことを使って考えさせる授業を計画した。また、興味・関心を高めるために、また、活用できる知識とするために身近なもの(電球)を教材とした。
 さらに、身近な電球のフィラメントを観察させ、その観察させたものを基に、自分たちの実験の条件を制御させることで、実験、観察の技能を身に付けさせたいと考えている。また、実験結果を考察する際に、過去に学習したもの(オームの法則、電力)を使って説明させることで、理解を深いものにさせたいと考えている。
 また、実験を計画する段階と考察する段階で小グループでの話し合い活動を取り入れることで、発表するために自分の考えを整理させたり、他の考えを聞き自分のものを修正させたりし、生徒主体の学習を行わせる。
 そして、実験を行うときに、生徒は、回路を組み間違えショートさせたり、電熱線や作成したフィラメントによって熱を発生させ火傷をしたりする恐れがあるので、実験前に各実験での注意点を確認させ、安全についても意識をもたせる。

3 単元の目標

(1) 電熱線を使って、電球が明るくなるための条件(長さ、太さ)の各性質を見付けることが
  でき
る。
(2) (1)で得た実験結果を既習事項のオームの法則と電力で説明することができる。
(3) とても明るい電球を作るためにどうすればよいかを学習したことを使って考えることがで
  きる。
(4) 学習したことを使って、エジソン電球を作ることができる。

4 単元の計画 (全4時間)

  • (1) 電球の仕組みについて調べよう・・・・本時2/2時間
  • (2) エジソン電球を作ってみよう・・・・・・・・・・・・・・2時間

5 本時の学習指導 (2/2) 場所:第2理科室 時間:2校時

 (1) 目標

○ ニクロム線の長さを変えながら、流れる電流と明るさの関係を見いだすことができ
 る。
【観察、実験の技能、表現】
○ 実験結果を学習したことを基に、説明することができる。【科学的な思考】

 (3) 展開

生徒の学習活動
教師の指導・支援(※評価)
課題の確認
明るさの違う電球のつくりはどう違うのだろうか?
 



2種類の電球を並列回路で点灯させてみせる。
本時の学習の見通しをもつ
・ 2種類の電球のフィラメント違いを観察する。


2種類の電球のフィラメントの長さと太さが違うことに気付かせる。
太さの違いは、フィラメントを比較させることで分かるため、演示実験を行う。
課題の解決
・ フィラメントの長さを変えるという条件を確認し、実験を計画する。
・ 実験の前に実験結果を予想する。
 実験前に安全のポイントを確認する。
 自分たちの班の実験計画に従って実験を行う。




抵抗と電流を意識させて実験結果の予想を行わせる。
電圧を少しずつ上げていくことや電熱線が熱くなること、更に、回路の組み方(+、−の極など)に注意することを指示しておく。
観察、実験の技能、表現】
 ニクロム線の長さを変えながら、流れる電流と明るさの関係を見いだすことができる。
B:長さが短いと電流が多く流れ、ニクロム線が明るくなるのを指摘できる。
A:長さが短いと抵抗が小さくなり電流が多く流れ、ニクロム線が明るくなるのを指摘できる。(学習カード)
〈支援〉電流計に注目させる。
情報の整理
・ 明るく付くための条件を実験結果より導き出す。

・ 過去の学習を使って、実験結果を説明する。

・ 自分の考えを他の班で発表する。
【科学的な思考】実験結果を説明する。
B:太さや長さの変化によって、抵抗が変化することに気付いたか。
A:前時に復習した電力やオームの法則を使って考察をすることができたか。(学習カード)
〈支援〉長さや太さと抵抗の関係について、着目させる。また、電力とオームの法則を確認させる。








自分の考えを班で発表させるとともに、他のよい意見を参考にさせながら、自分の説明内容の修正を行わせる。
まとめ
・ 同じ電圧のとき、明るい電球にするために、どのようにすればよいかを考える。


同じ電圧のとき「フィラメントを短く(長さ)、太く(太さ)したものにする」というように2つの条件で説明させる。
次時の予告
・ シャープペンシルの芯に電流を流し、光ることを確認する。

・ エジソン電球の話を聞く。






























エジソン電球の話をすることで、エジソン電球を作りたいという意欲を高める。
※ 資料等
指導案【PDF】
        
本時ワークシート
     
前時ワークシート【PDF】

6 生徒の反応

  • ○ 目の前で電力(ワット数)の違う電球の光り方の違いを見せ、その後、電球をわりフィラメントの違いを確認させたことで、本時の課題が明確になったばかりか学習意欲の高まりが見られた。
  • ○ ニクロム線の長さを変えて明るさの違いを確認することや電流の大きさを測定する実験は多くの生徒ができているようであった。
  • ○ 電力を求める式とオームの法則の式の2つを使って現象を説明させようとしたが,過去そのようなことを行ったことがなく,最初は戸惑っているようであった。
  • ○ まとめの明るい電球をつくるためには,フィラメントをどのようにすればよいのかについては,多くの生徒がワークシートに書けていた。

7 授業を終えて

  • ○ 必修での理科の授業をベースとして選択授業を行わなければならないという部分に関しては,受講者の先生方に伝わり,各先生方の選択授業の改善の視点として活用してもらえるのではないかと思った。
  • ○ 電流の単元の授業が終わってしばらくしてからの今回の授業となったため,電流計の使い方や回路の組み方を忘れている生徒が多く,受講者の先生方と一緒に指導を行った。
  • ○ 説明する活動が重視されてきているが,今回授業を行ってみて,1回の授業では説明する力を育成することは難しいと感じた。実験・観察で得た情報を基にをもとに思考し,その思考したものを人に分かりやすく説明(表現)させるためには,何度も説明活動を行うことをさせるとともに,他教科との連携も必要になってくると思われる。