地理歴史科学習指導案  高等学校第3学年  「 日本史 」



1  単元名   大隈重信と「明治の立憲政治」     
                                         

授業実践者
 原口 正規
(佐賀県教育センター所員) 授業実践者へのメールはこちらから

2 単元とその指導について

内容は主に「明治時代」全般の政治史である。
1時間目は、立憲政治が生まれてきた世界史的背景に触れ、それがいかにして日本の立憲政治と結びつくかを説明するための背景となるものである。
2時間目が、研究授業(本時)となる。ここでは、明治の立憲政治の成立過程とその発展について学習を進める。
生徒は佐賀県立致遠館高校の3年生である。教科書はすでに一通り終わっており、従って今までの基礎のうえに、重要事項のよりよい定着をはかる必要がある。
通常の授業と違い、復習ならではのスピード感と、知識をより確実にするための幅広い歴史理解を心掛ける。
 単なる佐賀の郷土史に終わらせることなく、「致遠館」の設立者である大隈重信にスポットを当てながら、佐賀から日本へ、佐賀から世界へと視野を広げる。
単元におけるコンピュータの活用について
・1・2時間目とも、プロジェクターを使ってプレゼンテーションによって授業を進める。

3 単元の目標

大隈が佐賀藩の藩校弘道館を退学になったあと、自ら英学を学び、さらに長崎に英学塾「致遠館」を開いたことが大隈と世界との本格的な出会いの場であり、大隈を軸として日本がイギリス流議院内閣制の国家になっていくことを理解させる。

4 単元の計画 (全2時間)

  • 1 大隈重信と「明治の立憲政治」(前半)・・・・1時間
  • 2 大隈重信と「明治の立憲政治」(後半)・・・・1時間(本時

5 本時の学習指導 (2/2)   

 (1) 目標

大隈重信の業績を中心に、明治の立憲政治についての理解を深め、それが現在の議院内閣制に受け継がれていることを理解させる。

 (2) 利用環境<本校の環境>

○主なハードウエア

提示用コンピュータ、プロジェクター、スクリーン、
 赤外線ポインター付きリモコンマウス

○主なソフトウエア

Microsoft PowerPoint2003

 (3) 評価計画

観点 評価
関心・意欲・態度 郷土から日本へ、郷土から世界へとつながる我が国の立憲国家の展開に対する関心と課題意識を高め、意欲的に追求している。
思考・判断 日本が西洋をモデルとしながらも、西洋の模倣に終わらず、日本が独自に樹立した立憲体制の特徴を公正に判断している。
技能・表現 絵画・写真・図解などの有用な情報を通して、関連づけを行い、それを歴史的事象に結びつける方法を身につけている。
知識・理解 欧米の文化・思想の影響と関連づけて、歴史上の事項を正しく理解し、内閣の構造的変化を理解するとともに、その具体的知識を身につけている。

  (4) 展開(2/2)  ※はスクリーンイメージ(pptファイルは下からダウンロードできます
学習内容
指導上の留意点
評価
導入 前回の復習(末尾に前回の指導案
  大隈重信はアメリカ流をとらない → 模範としたのはイギリス流
                   20 21 22 23 24 25     授業の様子1 
展開 イギリス流歴史的権利   26
 1.マグナ=カルタ(大憲章)1215
                       授業の様子2 
 2.ピューリータン革命(1642〜49)
・伝統的権利の擁護が、
  イギリスに根付いている
知識
 理解
イギリス流立憲政治     27 28
 1.大隈重信 1882 立憲改進党・・・イギリス流
 2.私擬憲法【発問】
・自由党の変化の意味
第三の国・ドイツ       29 30 31 32
 1.伊藤博文のドイツ憲法調査 1882
 2.幕末の動乱             授業の様子3 
 3.法の歴史的正当性の重視
   1)天皇 → 憲法制定権力(欽定憲法)【絵】
   2)条件 → 君主権の制限(立憲君主制)
・法は民族と文化で違う
 ・尊王開国の説明
明治中期の思想       31 ・日本の伝統的思想の
  復活と関連
大日本帝国憲法の制定  33
 1.議会と憲法
 2.大日本帝国憲法発布
・内閣権限の抑制
 ・政党内閣を拒否せず
政治の推移          34
 藩閥 ←1→ 政党 ←2→ 軍部
1.19世紀の内閣と
 2.桂園時代に分ける
19世紀の内閣        35
 1代 伊藤博文@85〜 内閣制度【発問】
 2代 黒田清隆 88〜 大日本帝国憲法【発問】【写真】
 3代 山県有朋@89〜 第一回帝国議会【発問】
 4代 松方正義@91〜 蛮勇演説【発問】
・藩閥と政党の対立期
  (図解)
                  36
 5代 伊藤博文A92〜 日清戦争【発問】
 6代 松方正義A96〜 松隈内閣【発問】 
 7代 伊藤博文B98.1〜地租増徴案否決【発問】
・藩閥と政党の協調期
  (図解)
  (政党内閣の可能性)
                  37 38
 8代 大隈重信@98.6〜隈板内閣
     政党系図の提示【発問】
・政党内閣実現
  (英流議院内閣制)
 ・憲政党の党首として任命
思考
 判断
                  39
 9代 山県有朋A98.11〜治安警察法等【発問】
・軍部勢力
  (図解)
知識
 理解
                  40 41
 10代 伊藤博文C00〜 立憲政友会内閣【発問】
       【作業1】明治末の政治の構図を描かせる
                       授業の様子4 
・藩閥と政党の合体
  (図解)
 ・政友会の党首が任命
思考
 判断
桂園時代 1901〜1913 
                42 43 44 45 46
・軍部と政党の対立期
  (図解)
知識
 理解
昭和の一身多頭国家   47 48 49
    【作業2】昭和のイメージ図を描かせる
思考
 判断
 技能
 表現
結び 明治という時代の厳しさの中で続けられた議院内閣制への努力は、今に受け継がれている。
 「致遠館」は、その最大の功労者である大隈重信のイギリス流立憲政治の原点である。

前回の指導案はこちら


※資料等 PowerPointデータのダウンロード(2時間一括)

6 児童・生徒の反応

  • 日本史の授業の中でかなり世界史的要素を取り入れたが、分かりやすいように絵や写真などを取り入れたため、生徒たちもスムーズに理解できたようであった。発問に対する答えも的を得たものであった。

7 授業を終えて

  • 明治の全体像をいかにとらえるかをねらいとしつつも、まずは身近な郷土の偉人大隈重信を中心にすえ、生徒の関心を呼び込むという方法をとった。生徒の反応も良好であった。
  • イギリス流の大隈重信に対し、フランス流の板垣退助、さらにドイツ流の伊藤博文を対比することによって、うまく教科書の内容に添うことができた。この対比によって、三者それぞれが近代日本に与えた特質を議院内閣制という視点から明らかにさせることができた。
  • それと同時に、近代日本の背景に近代ヨーロッパがあることを意識させ、宗教と政治という一見無関係に見えるものが実は密接につながっていることを世界史的視野に立って理解させることができたと思う。