○ 学習指導案    小学校第5学年 「英語活動」


1  単元名 「オリジナルコースターを作ろう」 (平成18年10月実施,40名)
        

授業の様子
授業実践者:JTE 宗 誠     
         ALT Sarah Busche
授業実践者へのメールはこちらから
     
       

2 単元とその指導について

 平成13年4月に文部科学省から出された「小学校英語活動実践の手引」には,小学校における英語活動のねらいについて,「言語習得を主な目的とするのではなく,興味・関心や意欲の育成をねらうことが重要である」と記されている。また,平成18年3月にまとめられた「中央教育審議会外国語専門部会における審議の状況」では,小学校段階では「英語のスキルをより重視する考え方」よりも「国際コミュニケーションをより重視する考え方」を基本とすることが適当であるとも述べられている。
そのような考えに基づき,本単元では,ALTの英語による指示や説明を一生懸命に聞こうとする態度や,異言語の壁を乗り越えて何とかして自分の意思を伝えようとする意欲を育てることを主なねらいとする。2時間構成の単元とし,色を表す英語表現に親しませるためのゲームのほか,三原色(赤・青・黄)と白,黒の5色を使った色作りや,作った色を使ってコースターに絵をかくオリジナルコースター作りなどの活動に取り組ませる。その中で,ALTやJTEの英語を聞いたり,それに対して言葉や動作で反応したりする場面を組み込むことにより,英語によるコミュニケーションに必然性をもたせ,人とかかわることの楽しさを味わわせたい。また,5つの色を混ぜ合わせることにより別の色を作るため,同じ色を作らせても,その色合いは微妙に違ってくると思われる。そこから,「肌色」という色について考えさせ,いろんな肌の色があっても当然だということに気付かせることもねらいの一つである。

 本校では,今年度から英語活動がスタートした。本学級においては,1学期に7時間の授業を行い,数をテーマに時差の概念やインチという単位に触れさせる活動と,ALTのサラ先生との出会いをテーマに英語の指示でドリームキャッチャーというマスコットを作る活動などに取り組んだ。児童にとって英語活動は初めての体験なので,授業では「聞く」ということに重点を置き,「英語の指示が分かる」「指示や質問に様々な方法で反応する」という活動を中心に計画してきた。ドリームキャッチャー作りでは,サラ先生との初めての授業であったにもかかわらず,サラ先生自身への関心が,サラ先生の持っている文化への関心に広がり,ドリームキャッチャーを一生懸命に作ろうとする姿が見られた。多くの児童は,英語活動の経験が浅いため,聞き覚えのある英語表現はまだ少ない。したがって,ALTの英語だけの説明を理解したり,自分の考えを英語で表現したりということはほとんどできない。しかしながら,ALTに積極的にかかわろうとする意欲はあり,ALTが発する言語以外のメッセージ(ジェスチャー,絵カードなど)をキャッチし,言っていることを分かろうと努力をする児童は多い。同じように,自分の考えも,知っている英単語やジェスチャーなどを駆使して伝えようとする児童が多く,異言語コミュニケーションへの積極的な態度は育っていると言える。

 そこで,第1時の活動では,色の表現に慣れ親しむようなゲームや虹の色をトピックとしたやりとりなどを導入とし,楽しい英語活動の雰囲気づくりをする。虹の色は,日本やアメリカでは7色とされているが,国によっては7色と決まっていない場合もあり,ALTのコメントから文化の違いに気付かせることができると考える。それから,5つの色を混ぜることでどんな色ができるか,あるいは指定された色を作るためにはどんな色を混ぜればいいのかといった質問を英語で行い,意味のあるやりとりを楽しませる。英語のメッセージだけを理解することは難しいと思われるが,そこにスライドの写真やジェスチャーを効果的に織り交ぜることで,「何となく分かる」「いろんな方法で反応する」ということが期待できるであろう。また,実際に絵の具を混ぜさせながら色作りや塗り絵を楽しませることで,次のオリジナルコースター作りへの意欲付けとする。第2時は,混ぜて作った色を使い,コースターにオリジナルの「えいごリアン」をかかせる。その際に,作業をする中で意味のある英語表現をインプットすることを心掛けたい。英語を聞いて反応するということを中心にするので,英語を発話しなければならないという児童の心理的な負担を軽減することができるであろう。また,教師の英語が理解できた結果として塗り絵やオリジナルコースターが完成するので,児童に達成感や満足感を味わわせることができると思われる。いずれの活動においても,賞賛や励ましの言葉掛けを多くし,全員が楽しんで取り組めるように配慮したい。

 単元におけるコンピュータの活用について

・ここに単元の指導におけるコンピュータ活用の視点を書いてください


3 単元の目標

(1) 塗り絵やオリジナルコースター作りなどの活動を楽しみながら,ALTやJTEの英語の指示や説明を一生懸命聞こうとしたり,それに対して適切な反応を返したりしようとする。
 (コミュニケーションへの関心・意欲・態度)
(2) ALTやJTEの指示や説明にしたがって色作りや塗り絵などの作業をしたり,色に関する質問に言語やジェスチャーなどで適切な反応をしたりすることができる。
 (コミュニケーションの技能)
(3) ALTの話などから,文化によって,色から受けるイメージに違いがあることに気付くことができる。
 (文化・言語に対する気付き)

4 単元の計画 (全2時間)

  • 1 色作りを楽しもう(本時)・・・・・・・・・1時間
  • 2 オリジナルコースターを作ろう・・・・・1時間

5 本時の学習指導 (1/2) 場所:体育館 時間:2校時

 (1) 目標

ア 教師からの簡単な英語の指示で塗り絵などの作業をしたり,色作りに関する問い掛けに知っている言葉を使って答えたりする中で,英語によるコミュニケーションの楽しさを味わう。
 (コミュニケーションへの関心・意欲・態度)
イ 英語による指示に従って三原色と白,黒の5色を使った色作りなどができる。
 (コミュニケーションの技能)

 (2) 利用環境<本校の環境>

○主なハードウエア

コンピュータ,プロジェクタ,スクリーン

○主なソフトウエア

塗り絵ゲーム(えいごリアンホームページより)
スライド

 (3) 展開

児童の主な活動 指導・支援上の留意点と主な英語表現
JTEの指導・支援 ALTの指導・支援
あいさつをし,簡単な会話を楽しむ。  ALTと明るくあいさつを交わし,授業の楽しい雰囲気づくりができるように心掛ける。
Good morning, Sarah.
Good morning, everyone.
How are you?
 全員にあいさつをしたあと,個別に話し掛ける。
Good morning, So-sensei.
Good morning, everyone.
How are you?
Webを利用した塗り絵ゲームを楽しむ。  えいごリアンHPから塗り絵ゲームを出し,プロジェクタで投影する。
What's this?
Yes, it's a sunflower.
 画面を見ながら児童に質問する。
What color does he want?
Can you guess?
Are you sure?
虹の塗り絵を楽しむ。  日本で虹の色と考えられている赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色を指示された番号のところに塗らせる。本時は1つの虹だけを塗る作業をさせる。  塗り絵の方法を英語で説明する。
red/orange/yellow/green/blue/
indigo/purple…
Now, you have a picture of two rainbows.
Please color number 1 red.
◎ 指示どおりの作業ができたか。(技能/作品)
虹の写真を見てどんな色が見えるか考える。  ALTに質問したり,ALTの説明を繰り返したりすることで児童の理解を助ける。
What is purple?
 虹の写真を見せながら,どんな色が見えるか尋ねたり,色を表す英語表現に触れさせたりする。
How many colors can you see in this rainbow?
red/orange/yellow/green/blue/
indigo/purple…
 日本やアメリカでは,虹の色は7色とされているが,ほかの国ではそうでない場合もあることに気付かせる。
(To the ALT) How many colors can you see in this rainbow?
What are they?
三原色と白黒を混ぜることで様々な色ができることを知る。  ペットボトルに入れた5色の色水を混ぜながら,別の色を作るというデモンストレーションをする。
What color is this?
 英語で質問をする。 
If you mix blue and red, what color can you see?
How do you make green?
What colors do you mix to make light blue?
◎ ALTの質問に答えようとしているか。(関・意・態/観察)
色作りと塗り絵を楽しむ。  えいごリアンの頭をピンク,オレンジ,黄緑のいずれかの色に,また,体を肌色に塗らせる。
 方法を英語で説明し,どの色を混ぜればよいかを尋ねる。
Please paint Eigorian's head pink, orange, or light green.
Please paint Eigorian's body "Hada-iro".
What color did you choose for Eigorian's head.
Please squeeze the paints and pour some water.
How did you make the color?
What colors did you mix?
 児童が作業をしている途中で,個別に話し掛ける。
How do you make the color?
What colors do you mix?
◎ ALTの指示を一生懸命聞きながら意欲的に取り組んでいるか。(関・意・態/観察)
お互いの作品を鑑賞する。  お互いの作品を鑑賞させながら,同じ色を作ったつもりでも,色合いの違いが出ることに触れる。  児童の絵に対するコメントをする。
Oh, this color is beautiful.
Whose picture is this?
 肌色という色の表現が適切であるかどうか考えさせる。
終わりのあいさつをする。  この時間の様子をほめ,楽し い雰囲気で終わる。  You all did very good job.
See you next time!
 次時はオリジナルコースターを作ることを伝える。
※ 資料等
ぬり絵シート【一太郎】 スライド資料【PowerPoint】 

6 児童・生徒の反応

  • ○ 色に関する英語表現は,日常生活の中でも耳にしたことがあるものが多いため,子どもたちの抵抗は小さいようであった。
  • ○ 子どもたちはALTの英語を聞き取り,虹の絵やちびまる子ちゃんのイラストを指示通りに塗るという作業ができていた。英語の一言一句にこだわりすぎず,大まかな内容をとらえるということができるようになった。

7 授業を終えて

  • ○ 今年度から英語活動に取り組んでいる子どもたちが対象であるので,まずは人とかかわることの楽しさを味わわせることからスタートした。ALTのサラ先生に興味をもたせ,話されている言葉が英語であってもまずは聞いてみようという態度を育て,言っていることが何となく分かるという達成感をもたせることを心掛けた。
  • ○ 英語のインプット量が少ない子どもたちなので,英語を話すということよりも聞いて反応できる,指示通りに作業ができるということを目標に授業を計画した。このような活動は,人前で英語を発話することに抵抗を感じ始める高学年の児童にふさわしいと考える。
  • ○ 授業の最後に,作った色がそれぞれ微妙に異なることから,「肌色」という色が本当に全ての人の肌の色を表すものかということについて考えさせた。このような国際理解的な内容については,無理に英語で説明するのではなく,日本語で話し,きちんと意図が伝わるように心掛けなければならないと思う。