○ 学習指導案    小学校第4学年 「 算数科 」


1  単元名 「変わり方」 (平成16年10月実施)
                                             

小学校第4学年算数科「変わり方」 授業実践者:古川 敏博授業実践者へのメールはこちらから

2 単元とその指導について

本単元では、伴って変わる二つの数量について知り、それらの関係を、図や表、グラフ等に表したり、それらの関係を明らかにしたりする活動を通して、「関数の考え」の基礎を身につけさせることが主なねらいとしている。

伴って変わる二つの数量についての学習は、児童が「関数の考え」と出会う初めての単元である。したがって、数的事象との出会わせ方を工夫し、伴って変わる二つの数量が身のまわりに実際に存在することに気づかせていきながら、関数に対する意識を高めていくことが大切である。このことが、高学年の関数的な見方、考え方の基盤となり、中学校での本格的な関数学習につながっていく。

伴って変わる二つの数量についての初めての学習であるが、数量の1対1の対応、一つの数を他の数の積として見ること、乗数が1ずつ増減したときの積の変化など、「関数の考え」につながる内容については学習している。(前提・事前調査を含む詳細な指導案を参照)

1 身の回りにある伴って変わる2つの数量の存在を意識づけるための指導について

2つの数量見付け活動の位置付け

この時期、伴って変わる二つの数量が身の回りに存在することを意識したり、二つの数量の関係を変数の意識をもってとらえさせたりすることを、難しく感じる児童も多い。これまでの指導では、1時間に1つの事象を取り上げ問題解決に取り組む既成の問題解決学習のパターンで学習を行ってきた。しかし、単元の数時間の学習では、幾つかの事象との出会いしか保障できず、身の回りの伴って変わる二つの数量の存在を意識できるようになるまでには至らなかった。

そこで、これまで行ってきたような単元の導入時に事象にじっくりふれさせるばかりでなく、問題解決学習に取り組む前に、伴って変わる二つの数量を発見させる活動を取り入れたい。身の回りにある具体例や、これまで学習してきたものの中に含まれるものの例など、いろいろな事象を子どもたちに提示し、その中に含まれる変数を発見させる活動を通して、伴って変わる二つの数量をより身近なものに感じ取らせたい。

2 変数の関係から決まりをみつけるよさを感じ取らせるための指導について

負荷のある課題の提示

初めて本格的な関数的な見方、考え方の学習に取り組むことを考慮して、二つの数量の間にある関係、易しい対応の関係(和が一定、差が一定)から、高度な対応(積の関係)へと学習を展開していきたい。簡単に解が導き出せる課題ではなく、表などにまとめる必要性を感じとらせるような負荷のある課題を提示したい。

解決段階に応じた児童への支援

具体的操作等から導いた値の組を表に整理させる際は、初めの幾つかの場合を全体で取り扱い、解の見通しを立てさせたい。また、解を求めることができた児童には、「問題を発展させた場合の解を予想することができないか、できるのであればなぜか」など決まりの存在に気づかせるような支援を行いたい。

解決方法の吟味

考えを出し合う際には、「数が増えたり、形が変わったりした場合でも、すぐ使える考えはどれか」などの観点をもとに整理する活動を位置づけたい。さらに、いつでも使えそうな解決方法をもとに発展的な課題を解決させる活動を取り入れることで、決まりを見付けるよさを感じとらせたい。

 単元における情報通信ネットワークの活用について

・自作教材「変わり方」

 

3 単元の目標

○身の回りの伴って変わる二つの数量について、進んで調べようとする。

○対応させる数量を考えたり、値の組を表などに表したりして、2つの数量の関係や変化のようすをとらえることができる。

○伴って変わる二つの数量について、値の組を図や表、グラフ等にあらわすことができる。

4 単元の計画 (全3時間)

出会う・つかむ
  • 和が一定の場合の2量の対応関係や変わり方の理解
  • (2つのサイコロの目の上の和と下の和)
ふかめる
  • 差が一定の場合の2量の対応関係や変わり方の理解   本時2/3
  • (三角形を1列につなげた時の三角形の数とまわりの長さ) 
まとめる・ひろげる
  • 積の関係で表される2量の対応関係や変わり方の理解
  • (三角形をピラミッド状に積み上げていく時の段数と周りの長さ)

5 本時の学習指導 (2/3) 場所:4年教室 時間:2校時

 (1) 目標

○ 身のまわりの事象から、伴って変わる二つの数量を見付けることができる。

○ 対応する組の値を整理した表などから、共通したきまりを見付けることができる。

 (2) 利用環境<本校の環境>

○主なハードウエア

ノートパソコン,プロジェクター

○主なソフトウエア

Microsoft Powerpoint

 (3) 展開

児童・生徒の活動 教師の指導と支援(※評価)

伴って変わる二つの数量見付けをする。

本時の問題を知る。

学習課題

正三角形を1れつにならべていきます。
  1辺は1cmです。
  30こならべます。
  まわりの長さは何cmになるでしょう。


解決の見通しを立てる。

<引き出したい反応例>
ア 図に表し辺の数を数えて長さを求める
イ 図から決まりを見付け計算で求める
ウ 表から決まりを見付け計算で求める
エ 見付けた決まりを言葉の式に表し求める

10個までの対応する値の変化をもとに、周りの長さの求め方を考える。




それぞれの考えと結果を発表する。

<話し合いの観点(例)>

  • 答が確かめられる。
  • 数が増えても求められる。
  • 計算で求められる。

みつけた決まりを使って問題を解く。

身の回りの減少を想起させ、変化しているものは何か、どのような関係になっているかを考えさせる。

● 資料から伴って変わる二つの数量を見付けることができる。(知識・理解)

本時の問題につながる映像を見せ、伴って変わる2つの数量は何かをつかませる。






1個、2個、3個の場合を取り扱い、10個では、どれくらいになりそうか予想させる。

調べ方を取り上げ、解決方法の見通しを立てさせる。

10個までの対応する値の組を、整理しながら、表や図にまとめるよう促す。

10個までの調べた結果をもとに、きまりを見付けさせ、30個の場合のまわりの長さを求めさせる。

解決ができた児童には、下記のような支援を行い、三角形の数と周りの長さとの間にある決まりの存在に着目させる。

・図にかいて答えが出せたね。結果を表にまとめてみよう。ふえ方に決まりがないかな。

・整理した表から、20個、30個の時のまわりの長さが出せないかな。

・まわりの長さを求める式がつくれないかな。


● 見付けた決まりを使って、まわりの長さを求めることができる。(数学的な考え方)

それぞれの良さを取り上げ認める。

・図や表を使って説明させ、定数が2であること、まわりの長さが1つずつ増えることなどの根拠をはっきりとさせる。

・三角形の数が増えた場合でも、簡単に出せる方法、すぐ出せる方法はどれかなど考えさせる。

それぞれの考え方で100個つなげたときの周りの長さを求めさせることで、式で表すよさを感じ取らせる。

※ 資料等 指導案【一太郎】 指導案【PDF】        
学習プリント【一太郎】 学習プリント【PDF】     

6 児童の反応

○ スクリーンに投影された映像の動きを集中して見ることができた。伴って変わる2つの数量をたくさん発見することができた。

○ 正三角形の数とまわりの長さとの関係を調べる際は、図に表したり、数え棒で三角形を作りながら調べたり、結果を表にまとめたりと多様な活動に取り組むことができた。

○ 調べたことをもとに、2つの数量関係についてのきまりを見付けることができた。

7 授業を終えて

○ プロジェクターを使って資料を写しだし、伴って変わる2つの数量をに動的にとらえさせることは、単に文章や図を用いたものよりも、多くの情報を提示することができるため、1つの事象からたくさんの数量関係を発見させることにつながった。

○ 1つの事象から発見した数量関係にも、伴って増える関係、1方が増えると1方が減る関係など違いがあることにも気付かせることができた。

○ 児童の気付きを発表する時間が十分にとれなかったこと、児童の気付きを指導者が十分に拾い上げることができなかったことが残念であった。

○ 伴って変わる2つの数量見付けの時間を、学習の最初の部分に取り入れたが、本時の課題とは違う事象を取り扱ったために、児童の思考を途切れさせる結果になった。単元の導入時に、たくさんの伴って変わる2つの数量に気付かせる時間を1時間設定したほうがより効果的ではないかと思われる。