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パナソニック教育財団 第37回実践研究助成 

  Ⅱ ICT活用の利点  
  1.  通常学級におけるICT活用の効果  
      ICTを活用した授業の有用性については、文部科学省が授業における効果的なICT活用の一層の促進を図るために作成した、『学力向上 ICT活用指導ハンドブック』(委嘱:財団法人コンピュータ教育開発センター)において広く伝えられている。その中で述べられている主な利点は以下の通りである。
  ①写真や図表を大きく提示して指示を明確にすることができる
  ②見せながら話して、分かりやすく説明やまとめをすることができる
  ③身近に感じる教材を使って関心や意欲を高めることができる
  ④学習教材やソフトウェアで知識や技能を定着することができる
  ⑤インターネットを使って最新情報を収集したり、その便利な機能を利用したりすることができる
 このように、授業にICTを活用することで「わかる授業」を実現し「確かな学力」の育成を図ることができると考えられる。ここで述べられているICTを活用する効果としては、主に「見ること」から「学ぶこと」である。これまでの授業における指導法を省みると、音声や言葉による情報や知識の伝達を主とし、それに関連するわずかな視覚的資料を提示し、理解を図ろうとしていた。そのため、具体的なイメージを思い描くことができなかった児童生徒にとっては、不十分な理解のまま、学習が進んでいっていた。しかし、ICTを活用することで、視覚的な情報を全ての児童生徒に見えるように提示することが可能となり、これまで以上に「見ること」を生かして、多くの視覚的情報で補いながら学習に取り組むことができるようになると考える。また、これまで視覚的な情報の収集に多くの時間を割き教材研究を行っていたことが、インターネットを介して、短時間で情報を集めることが可能となると思われる。さらに、これからは、情報の提示、発信にとどまらず、指導者と児童生徒、あるいは児童生徒同士が互いに情報をリアルタイムで共有、交流し合いながら、学習を進めていくことができる授業づくりを行うことができるようになっていくと考えられる。
 
       
   2.  障害のある(苦手さのある)児童生徒へのICT活用の効果  
      前述のような通常学級におけるICTの効果的な活用を行うことで、「聞くこと」に苦手さがあった児童生徒にとっては、授業の理解度が高まると考えられる。また、それ以外においても、様々な苦手さのある児童生徒への効果的な支援を行うことができる。具体例を「教育の情報化に関する手引」(文部科学省、2010)の中から挙げてみると、一斉指導の中では、注意集中が続きにくい児童生徒や、聞き取りが苦手な児童生徒に対しては、長い話言葉での指示よりも、短い言葉による指示と併せて、視覚的な指示と教材提示を行うことでよりよい支援ができるようになる。また、客観的な状況把握や場面認識が苦手なため、トラブルの原因が理解できなかったり、原因と結果が一見してつながっていなかったりするような児童生徒に対しては、自分や他人の言動を振り返ったり、予測したりする活動にコンピュータを活用してフローチャートを作成することで、原因と結果や行動手順等を視覚的に提示することができるようになる。
 学校生活の中で最も必要とされる「書くこと」の苦手さを抱える児童生徒も多く見られる。このような児童生徒の学習意欲を引き出すためには、文章を書くことへの抵抗感を減らし、楽しんで記録したり大切なことをメモしたりできる情報機器の活用が考えられる。例えば、小型で携帯でき、スイッチを入れると同時に起動するキーボード型の文章入力装置がある。この機器は、スイッチを切っても文章が保存されており、軽くてバッテリー駆動時間も相当長いため、文章を手軽に入力できるキーボードとしてどこでも手軽に使うことができる。また、書字のトレーニングに使用できる機器としては、ペン入力のできるタブレット型コンピュータ(以下タブレットPC)がある。この中にある書字のトレーニングソフトなどを活用することで、興味や注意を持続させながら、通常の書字とは違うインタラクティブな反応を得たり、書字のスピードや形状、書き順の記録を取ったりすることでトレーニング効果を自己評価することもできる。さらに、指先の微細なコントロールのトレーニングや、漢字や英単語等の記憶のトレーニングとしても活用することができる。また、書字の困難さがある児童生徒は、教員の板書にノート筆記のスピードがついていけないことが多いため、書くことが苦痛であったりやめてしまったりする場合もある。そのような場合には、デジタルカメラで撮影して板書の記録を残しておくことで、ノート筆記の補完をすることも考えられる。
 このように、児童生徒の苦手さに寄り添ったICTの効果的な活用をすることで、児童生徒の学習意欲を喚起し、確かな学力の定着にもつながると考えられる。
 
       
   3.  不登校児童生徒へのICT活用の効果  
     「しいの木」への通級児童生徒の多くが、長期にわたり学校での授業を受けていないため、学習への集中時間が非常に短く、学習に向かうための気持ちの切り替えが難しい。また、家族以外の人とかかわることも少ないため、人との付き合いに対しても後ろ向きな姿勢である。そこで、学習面においては、操作が簡単で、携帯性がよく、たくさんのアプリケーション(以下アプリ)を有するタブレットPCが効果的であると考える。このタブレットPCには、漢字や簡単な計算のアプリがあり、児童生徒それぞれが集中できるタイミングで、意欲がある時に、できる課題から徐々に学習活動を取り入れることが可能である。さらに、タブレットPCは、指で簡単に入力できるため、キーボードのキーを一つ一つ探して入力するような手間や周囲の人の手を借りて入力するといった心理的な負荷がかからず、自分のペースで学習の時間を調節することもできる。
 また、人とかかわることへの関心も喚起することができると考える。人とかかわることが少なかったり、苦手さがあったりする児童生徒の中には、言葉でのやりとりに自信のなさがうかがえる。そのため、今までうまく自分の思いを伝えられなかったり、話すこと自体を嫌がったりしていることが考えられる。
 このような児童生徒とのかかわりを築くための第1のステップとしては、言語を用いないかかわりが効果的とされている。また、児童生徒の興味関心に訴えかけるようなかかわりが、その後のかかわりの意欲にもつながる。そこで、不登校児童生徒が興味関心あるインターネットやゲーム等を活用することがかかわりの糸口になると考える。これらの機能は、最近のタブレットPCには付属している。さらに、様々なアプリを取り入れることもできるため、児童生徒の多様な興味関心に応じることもできる。児童生徒と関係者が一つの画面やそれに関する話題を共有することを通して、少しずつかかわる人との距離を縮めることができるようになる。
 第2のステップとしては、タブレットPCには標準装備されているインターネット機能とカメラ機能を使った通信がある。家庭訪問や相談面接において関係性が少しずつ図れても、次の機会までには時間的な間隔が生じてしまう。その合間に、メールやチャット等を介したかかわりも可能となる。対面して言葉では伝えることができないことでも、文字を介したやりとりでは、自分の思いを相手に伝えられることもある。メールでは、自分が送った内容に対する反応を楽しみにしたり、チャットでは、即時性のあるやりとりで話題を深めたりすることができる。このようなかかわりを重ねることで、お互いの理解にもつながる。
 第3のステップとしては、カメラ機能を活用したビデオ通話がある。ここでは、インターネットを介したかかわりとなるが、リアルタイムに映像と音声でつながることができる。このようなかかわりを経ることで、「会いたいなあ」「一緒に過ごしたいなあ」という思いが高まってくると思われる。そして、家庭以外の場所で心許せる人とのかかわりを楽しみにするようになると考える。
 このような考えを基にして取り組んだ実践について、「かかわり編」と「学習編」に分けて紹介をする。
 
     
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