知識・技能の習得と数学的な思考力・判断力・表現力の育成を目指します!

2  研究の実際

 (7) 学習評価について

 
@ 学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の基本的な考え方
 
 平成24年度から、学習指導要領が全面実施となりました。学習指導要領の趣旨を反映した学習評価の考え方については、平成23年7月に「評価規準の作成、評価方法等の工夫改善のための参考資料」(以下、参考資料と表記)が、国立教育政策研究所教育課程研究センターから示されました。
 学習指導要領の下での学習評価については、生徒の「生きる力」の育成を目指し、生徒一人一人の資質や能力をより確かに育むようにするため、学習指導要領に示す目標に照らしてその実現状況をみる評価(目標に準拠した評価)を着実に実施し、生徒一人一人の進歩の状況や教科の目標の実現状況を的確に把握し、学習指導の改善に生かすことが重要です。併せて、学習指導要領に示す内容が確実に身に付いたかどうかの評価を行うことが求められています。
   
 
A 学習指導要領における学習評価の観点
 
従前の観点
関心・意欲・態度
思考・判断
技能・表現
知識・理解




新学習指導要領に
おける観点
数学科の観点
関心・意欲・態度
数学への関心・意欲・態度
思考・判断・表現
数学的な見方や考え方
技能
数学的な技能
知識・理解
数量や図形などについての
知識・理解
 
 
◎評価の観点で、これまでと変わったところは?         
 
「数学的な見方や考え方」
数学的な見方や考え方については、事象を数学的にとらえて論理的に考察するだけでなく、次のようなことが求められています。
●考察したことについて数や図形の性質などを的確に表すこと
●根拠を明らかにした筋道立てて説明すること
●自分の思いや考えを伝え合い、それらを共有して質的に高めること
●表現したことを振り返って考えを深めること
そのため、評価に当たっては、基礎的・基本的な知識・技能を活用しつつ、問題解決に向けて考えたり、判断したりしたことを、生徒の説明、論述、討論などの言語活動等を通じて評価することが大切です。
「数学的な技能」
「数学的な表現・処理」の観点が、「数学的な技能」と文言が改められました。「作図する」、「関数のグラフから式を求める」など、数学における基本的な「読みかき」に関わる事項を身に付けているかどうかを評価することになります。

 
B 学習評価の進め方と具体例
 
 評価規準を設定するに当たっては、国立教育政策研究所から公開されている参考資料に示されている評価規準の設定例を活用するなどして、単元の学習指導のねらい、教材、学習活動等に応じて、適切に評価規準を設定することが大切です。
 
    【第3学年「A 数と式」での具体例】
※「数学的な見方や考え方」の観点に絞って考えてみます。
 
〈単元の目標を設定する〉
学習指導要領に示された教科の目標と内容及び生徒の実態等を踏まえ、既習事項との関連等、指導内容の系統性に配慮して単元の目標を設定します。
〈単元の目標〉
文字を用いた式で数量及び数量の関係をとらえ説明することができる。
 
     
 
〈単元の評価規準を設定する〉
単元の目標と参考資料の第2編に示されている各領域の「評価規準に盛り込むべき事項」を参考にして、単元の評価規準を設定します。
【「A 数と式」の評価規準に盛り込むべき事項】
数の平方根、簡単な多項式、二次方程式などについての基礎的・基本的な知識及び技能を活用しながら、事象に潜む関係や法則を見いだしたり、数学的な推論の方法を用いて論理的に考察し表現したり、その過程を振り返って考えを深めたりするなど、数学的な見方や考え方を身に付けている。
                

〈単元の評価規準〉
簡単な多項式についての基礎的・基本的な知識及び技能を活用しながら、事象に潜む関係や法則を見いだしたり、数学的な推論の方法を用いて論理的に考察し表現したり、その過程を振り返って考えを深めたりするなど、数学的な見方や考え方を身に付けている。
 
     
 
〈学習指導に対応して評価規準を設定する〉
単元の目標と評価規準及び参考資料第2編に示された評価規準の設定例を基に、小単元や各授業時間の指導目標を設定し、それに対応させて評価規準を設定します。
【「A 数と式」の評価規準の設定例】
式の展開や因数分解の仕方を、式を一つの文字に置き換えたり、交換、結合や分配法則などを用いたりして、既習の計算に帰着させて考えることができる。

             
〈本時の評価規準〉
式の展開や因数分解を問題解決に利用し、説明することができる。 (指導計画17時間の中の15時目)
 
 
C 各観点における評価内容と評価を行うにあたっての留意点    
 
 生徒の学習状況を適切に評価するため、評価を行うにあたっては各観点の特性に配慮することが必要です。また、「関心・意欲・態度」以外の観点についての評価は、1単位時間の中で「おおむね満足できる」状況(B)にあるかどうかを判断し、「努力を要する」状況(C)になりそうな生徒に対して適切な指導を行うための形成的な評価(○)と、単元における総括の資料とするための評価(◎)を明確にして、評価を行います。 本研究で提案している詳細授業展開案の評価の(○)と(◎)についても、(○)・・・形成的な評価、(◎)・・・単元における総括の資料とするための評価を表しています。
 また、平成24年度に工夫改善を行う詳細授業展開案の中には、「十分満足できる」状況(A)、「おおむね満足できる」状況(B)と判断した生徒の具体的な状況の例を示し、「努力を要する」状況(C)と判断した生徒に対しては、具体的な指導例を示しています。これを参考に、指導のねらいと生徒の実態とを考え合わせた上で、具体的な状況を検討し、設定してださい。
 
「数学への関心・意欲・態度」
生徒が数学的に考え表現することに関心をもち、意欲的に数学を問題の解決に活用して考えたり判断したりしようとする態度を身に付けているかどうかを評価します。
評価の際は、ある程度長い区切りの中で適切な頻度で評価するために2、3時間のまとまり(小単元)で評価規準を設定します。この評価規準に基づき、どの生徒も小単元の中で少なくとも1回は評価対象になるようにします。また、単元前半から単元後半の高まりや伸びを積極的に評価し、単元後半の評価を重視する方法を取り入れることが考えられます。
「数学的な見方や考え方」
基礎的・基本的な知識・技能を活用しつつ、問題解決に向けて考えたり、判断したりしたことを表現することが身に付いているかどうかを評価します。
評価の際は、問題解決の結果だけでなく、その過程を含めて評価することが重要です。また、他の観点の評価よりも手間と時間が掛かるため、指導とのバランスに配慮し、評価を行う適切な場面を明確にする必要があります。
「数学的な技能」
数学における基本的な「読みかき」に関わる「作図する」、「関数のグラフから式を求める」など、技能としての表現ができているかどうかを評価します。
評価の際は、量的に評価するだけなく、問題の難易度を工夫などして質的にも評価する必要があります。
「数量や図形などについての知識・理解」
数量や図形などに関する基礎的な概念や原理・法則などについて理解し、知識を身に付けているかどうかを評価します。
評価の際は、用語や記号などの意味を理解しているかだけでなく、作図の方法や問題を解決する手順などの理解についても評価する必要があります。
 
 
佐賀県教育センター
「学習評価の進め方」
 
   

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