新学習指導要領で求められている中学校英語科学習指導を提案します!

1 研究の概要

(1) 研究テーマ
  4技能「聞く・話す・読む・書く」を関連付けた中学校英語科学習指導の工夫
(2) 研究の趣旨
ア 新学習指導要領で求められているもの
 現代の生徒たちは、新聞やテレビ、ラジオ、インターネットなどを通して日常的に英語に触れる時代に生きています。このような状況の中で、平成20年3月に示された新学習指導要領では、小学校に外国語活動が導入され、特に音声面を中心として英語を用いたコミュニケーション能力の素地を育成することが期待されています。これを受けて中学校においては、現行の学習指導要領で重視されている「聞くこと」、「話すこと」に加え、新たに「読むこと」、「書くこと」の指導の充実を図ることが求められています。
  このことは、小学校の外国語活動ではぐくまれた素地の上に、英語を聞いたり、話したり、読んだり、書いたりする基礎的な言語活動をバランスよく行うことを通して、これら4技能を統合的に活用できるコミュニケーション能力を育成することが、中学校の英語科学習指導において今まで以上に重要になったことを意味します。
イ 平成19・20・21年度佐賀県小・中学校学習状況調査より見えてきたもの
  佐賀県小・中学校学習状況調査における中学校英語科の結果は、平成19年度から3年間を通して、全体として県が示した「おおむね達成」の到達基準に達していました。しかしながら、領域別に見ると、「読むこと」、「書くこと」に課題が見られました。
  図1は平成20年度の第1学年英語の結果と平成21年度第2学年英語の結果を領域別にまとめ、同一生徒の到達度を経年比較したものです。「聞くこと」の領域では「十分達成」「おおむね達成」の割合がわずかに増えていますが、「読むこと」及び「書くこと」の領域については「要努力」の生徒の割合が増えています。特に「書くこと」の領域については「要努力」の生徒の割合が3領域の中で最も高く、学年が上がるにつれて、書くことを苦手にしている生徒が増えていることが分かります。
  また、データは示していませんが、「書くこと」についての出題の中で、自由英作文の解答は無解答率が平成20年度・21年度ともに約13%と高く、書く力や書く意欲に課題があることが分かります。
図1 平成20年度1年英語と平成21年度2年英語の経年比較
※ 本調査では、「話すこと」についての調査は行われていません。
  中学校第1学年・第2学年で英語科を担当している教師を対象にした意識調査も行われました。
  図2は平成20年度の調査において、「聞く・話す」活動と「書く」活動を、どの程度の単元で行っているかを比較したものです。「聞く・話す」活動は「書く」活動よりもよく取り組まれていることが分かります。学年別に見ても同じような傾向が見られます。従前の学習指導要領(平成10年12月)では、「聞くこと」、「話すこと」に重点を置いた指導をすることが求められていたので、当然の結果と言えます。その反面、授業において「書く」活動が行われている頻度が少ないことも、生徒の書く力が十分ではない原因の一つと考えられます。
               図2 平成20年度 教師意識調査
  また、同調査では生徒に対する意識調査も行われました。
  平成19年度の第1学年生徒と平成20年度の第2学年生徒の意識調査の結果を経年比較すると、学年が上がるにつれて、授業が「分かる」「だいたい分かる」と回答した生徒、授業が「楽しい」「どちらかといえば楽しい」と回答した生徒の割合はいずれも低くなっています(図3、図4参照)。また平成20年度の第1学年生徒も同様の傾向が見られます。
       図3 生徒意識調査(授業理解)の経年比較【平成19年度・20年度】
       図4 生徒意識調査(授業の楽しさ)の経年比較【平成19年度・20年度】
 
ウ 研究テーマ設定の理由

図1のグラフで示したように、佐賀県小・中学習状況調査の結果から、「書くこと」に課題があり、学年が上がるにつれてより深刻となることが分かりました。また、図3・4のグラフから、生徒の意識においても、学年が上がるにつれて、英語の授業が「分かる・楽しい」と回答した生徒の割合が低くなるということが分かりました。さらに、図2のグラフから、英語の授業において、「書く」活動が行われている頻度が他の活動に比べて、少ないということも分かりました。
  そこで、「書くこと」を日ごろの英語の授業の中に位置付け、「聞くこと」「話すこと」「読むこと」との関連を図りながら、4技能をバランスよく指導していけば、4技能が総合的に育成され、相手の意向を理解し自分の気持ちを正しく伝えることができる生徒を育成できるのではないかと考えました。

本研究の1年次では、 ライティングノートを用いて「書くこと」を日ごろの授業の中に位置付け、書くことに慣れることから取り組みました。生徒の「書くこと」に対する抵抗感を少なくし、短時間でできるだけ長い英文が書けるように量的な向上を目指しました。また、4技能の効果的な関連付けの方法について理論研究を行い、授業実践を通して検証を進めました。 具体的には「書くこと」から「話すこと」へ関連付ける言語活動を中心に授業提案をしました。

本研究の2年次では、生徒が書く英作文の量的な評価に加えて、質的な評価ができるような手立てを考えていきました。具体的には、英文特有の論理的な内容構成の仕方などを学習できるように、生徒が英作文を書く際の参考となるような「英作文のコツ」を作成しました。それによって、これまでのまとまりのある分量や文法の正確さに加え、内容の一貫性や、論理的な文章構成も指導することが可能になりました。
  また、ライティングノートの取り組みも継続的に行い、2年次は接続詞や代名詞などを使って、英文の質的な向上を目指しました。
  次に、4技能を関連付けた言語活動の有効性について、検証授業を通して明らかにしました。1年次の「書くこと」から「話すこと」等へ関連付ける言語活動に加え、「読むこと」から「書くこと」等、4技能が総合的に関連付けられる言語活動を実践し、検証しました。例えば、「受け取った電子メールに対して返事を書く」という言語活動を設定すれば、「読むこと」と「書くこと」を関連付けることができると考えました。このように、「書くこと」を中心として4技能を総合的に活用できる言語活動を行えば、コミュニケーション能力をはぐくむことが期待できると考えました。
  このようなことから、「書くこと」の充実を図り、4技能「聞く・話す・読む・書く」を関連付けた中学校英語科の効果的な学習指導の工夫について提案します。

(3)  研究の内容と方法
ア 研究の内容 
@ 「書くこと」を通して4技能を関連付けた言語活動の理論研究
A 「書くこと」を通して4技能を関連付けた言語活動の授業実践
B 研究の有効性の検証及び研究のまとめ
イ 研究の方法
@ 参考文献などを通して4技能を関連付けた言語活動に関しての理論研究を行う。
A 4技能の中でも「書くこと」についての指導法の研究を行うとともに、英作文の指導に役立つ実践アイディア集
  と手引きを作成する。
B 「書くこと」を中心として、4技能を関連付けた言語活動を取り入れた検証授業を行い、その有効性を分析す
  る。
参考資料
・ 佐賀県教育委員会 「平成21年度佐賀県小・中学校学習状況調査 Web報告書」2009年7月
・ 佐賀県教育委員会 「平成20年度佐賀県小・中学校学習状況調査 Web報告書」2009年3月
・ 佐賀県教育委員会 「平成19年度佐賀県小・中学校学習状況調査 Web報告書」2008年3月

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最終更新日: 2010-03-29