小学校・学級活動

特別活動実践例  (高等学校 第1学年で実施) 指導案はこちら(PDF)
題  材 「食の選択について討論を通して考えよう―家族や伝統とコンビニ―」 (2時間計画)
ねらい  食の選択について討論を行い,食を通した家族の結び付きや伝統的な食文化のよさに気付き,豊かな食生活を送ろうとする意識を高める。
授業の
ポイント
 今日コンビニエンスストア(コンビニ)の機能は多様化し,弁当など調理済み食品や日用品を買うばかりでなく,行事食の購入や交流の場,人によっては心のよりどころにもなっている。このことは,家庭や地域が持っていた機能を次第にコンビニが担うようになってきているとも言える。実態調査によると高校生の半数以上が週に3回以上コンビニを利用しており,待ち合わせ場所にする,何となく暇をつぶす,雑誌を読む,いろいろな情報を得るなどその目的は多様化しつつあるが,利用目的のほとんどは食品の購入である。
 本題材では,生徒がよく利用するコンビニや商品(食品)に着目させ,無意識に行っていた食の選択について,討論を通して振り返らせていく。高校生にとって討論の授業は機会が少ないが,1時間目では課題「コンビニが急成長した背景を考える」についてグループによる意見交換を十分行わせる。そして,2時間目は同じグループを活用して,論題「高校生は手作り弁当を毎日持参すべきである」を設定し,全体での討論を行わせることで活発な意見交換を期待したい。自分の意見を表現したり,他の意見を聞いて考えたりする中で,食の選択に伴う家族の結び付きや食文化(地域や伝統)の大切さに気付かせたい。
 この授業で活用したパワーポイント資料は,こちらからPP
ねらい
(1/2
時間)
 ―コンビニが急成長した背景を考える―(1時間目)
・食生活を中心にコンビニが急成長してきた背景について考え,そこには現代の生活課題があることに気付かせる。
授業の実際 段階 生徒の活動と生徒の反応 教師の指導・支援 資料など
活動の
開始
@高校生のコンビニ利用度について知る。
A「日本の食文化」の歴史について知る。
B本時の活動のねらいを知る。
 コンビニが急成長してきた背景について考えよう。
・高校生のコンビニ利用調査結果を提示する。


・食生活の年表を示し,日本の食事はこの30〜40年で急変したことに気付かせる。(PowerPoint資料)
・PP資料スライド1〜4






C「なぜ,コンビニをよく利用するのか」について考える。
〇個人で付せんに書く。  
楽しい,明るい,入りやすい雰囲気,本が読める,店員の対応が素早い,安全・安心, 商品が新しい,豊富,一人分ずつ買える (個別包装),待ち合わせ場所に最適, 駐車場が広い,いつでも開いている
 など


〇グループで分類しながら,用紙に 付せんを貼る。

【意見を出し合う】


D各班でまとめ,コンビニが急成長した背景を考える
〇グループで分類した根拠となったキーワードをまとめて発表する。

【グループでキーワードを考える】
活動の様子
(ビデオ)はこちら


〇人の生活から,背景を考える
・コンビニ利用度の高まりとともにコンビニが成長したことを確認し,コンビニが消費者のニーズに合わせて成り立っていることを気付かせる。
(商品開発や店内のレイアウト等)
・便利さを具体的に表現させる。
・いろいろな人の立場に立って考えさせる。


・グループでまとめる方法を示す。(PowerPoint資料)

【分類するときに,キーワードを考え,黄色の付せんに書くように・・】

・グループごとに発表させる際は,前のグループで出なかった意見を発表させ,キーワードを黒板の図にまとめていく。

【キーワード】
時間,場所,商品特徴,店の雰囲気, 多様性など

【全体で意見をまとめる】
 
 

・完成した図から,人々の生活がどう変化したからかを考えさせる。(食生活を例にまとめる)
・PP資料スライド5






・PP資料スライド6〜8



  【意見のまとめ方】










・PP資料スライド9〜14

 【まとめのスライドの一部】
活動



Eコンビニを利用する背景について自分のことを振り返る。

【自分はどうだろう?】
F次時の授業について知る。
・自分がコンビニを利用する理由と,そこに問題点がないか考えさせ,次の学習課題へとつなぐ。





・食の選択についての討論を行うことを説明する。

・PP資料スライド15
                                    
ねらい
(2/2
時間)
 ―食の選択について,討論をしよう―(2時間目)
〇ねらい
・食の選択について討論し,食の社会化が進む上での問題点に気付き,食を通した家族の結び付きや伝統的な食文化のよさを大切にしようという意識を高める。
〇事前の活動
・討論用の資料(教師が意図的に作成)を配布し,討論の準備シートを活用して準備(意見の記入)を行わせる。 (資料は多様な意見がでるように,コンビニ等に関する資料を切り抜き,否定派,肯定派共に使えるようなものをそろえる。)
授業の実際 段階 生徒の活動と生徒の反応 教師の指導・支援 資料など





@本時の活動のねらいと論題を知る。
 食の選択について討論を通して考えよう。
論題 『高校生は,毎日手作り弁当を持参すべきである』
・クラスを2つ「手作り弁当派」と「市販弁当派」に分け,討論の席を8グループ作らせ,討論ができるように準備をさせておく。
・論題は,クラスの実態に合わせて決める。
・定義を明らかに示す。
「手作り弁当とは家から作っていく弁当とする」
・学習課題
・論題の提示
・討論の準備シート
 【PDF】






A討論の進め方を知る。
 ・肯定派=手作り弁当派
 ・否定派=市販弁当派
 とする



B討論をする。
1 立論(10分)
・肯定側(手作り派)の主張
・否定側(市販派)の主張

【肯定派の立論を述べる】

◆作戦タイム(3分)

【各班で意見をまとめる】

2 質問または反論(10分)
・否定側から肯定側へ
・肯定側から否定側へ

◆作戦タイム(3分)

【最終の回答を考える】


3 最終回答(10分)
・否定側からの回答
・肯定側からの回答

C討論全体を振り返る。

 
 
【視点】
時間や手間,家族,伝統(地域性),費用,環境,健康(安全性)

・討論の進め方(順序や時間)を黒板に掲示しておき,確認する。
・両チームの生徒は向かい合って座らせる。
・司会は教師が行う。

・意見発表用シートを活用して発表させ,発表への抵抗感をなくす。

【立論の後,論点を確認をする】


・向かい合う班について,意見を必ず出すように責任をもたせることで,活発な意見交換ができるようにする。

【向かい合う班へ反論を考える】

【資料活用等について助言する】
・板書形式を工夫して,争点を意識させ,言い放しにならないようにする。(板書を生徒にさせる場合は,内容や書き方について事前打合せをしておく。)

【板書は意見をつなげて書き示す】



・否定側,肯定側ともに主張,質問,回答を踏まえて,出てきた意見から,食を選択する上での視点を整理する。

・「作る」と「買う」の選択があるがどちらの場合もありうることを確認し,市販弁当(側)への批判にならないように配慮する。

・討論の進め方

【黒板に掲示する】

・意見発表用シート
【PDF】


討論の様子
(ビデオ)はこちら




































・視点を記したカード
 







Dこれからの食を選択について自分の考えをまとめる。
 (感想を書く)
【問題点】
家族の結びつきの希薄化,調理技能の低下,画一化(家庭の伝統や地域性の欠如),環境の悪化,自給率の低下など

・食の社会化が進むことの問題点について討論を基にまとめる。
・生徒の発言を生かしながら,弁当を作る人の思い(愛情)や家庭の味は買えないことに触れ,買おうとしても買えない大切なものがあることをおさえたい。


・ワークシート(自己評価を含む)【PDF】
授業を
振り返って
○ 生徒の感想より
・毎日手作り弁当だとマンネリ化し,感謝の気持ちが薄れていくのではないかと思います。市販弁当を食べて,初めて作ってもらえる日常のありがたさを感じることができると思うのです。市販弁当は間に合わせだけではなく,そういう側面ももっていると思います。
・どちらの意見も納得できる所がありました。今は,母が毎日弁当を作ってくれていますが,時間がない時や,作れなかった時は,栄養やカロリーを考えてコンビニ弁当を利用することもいいことだと思いました。
・いつも母に作ってもらっているので,たまには自分で作って母の大変さを知ることも必要だなと思いました。
・手作り弁当には,その家庭の味(例えばお母さんが作った卵焼き)があると思います。討論会をして,伝統の味・環境・安全性などを考えると,やっぱり手作り弁当のほうがいいと思いました。
・様々な意見を聞くことができ,食についての見方や考え方が深まりました。私は場所や場合に応じてどっちの弁当かを決めればいいと思っていますが,これからは普段の食生活についてしっかり考えて行動しようと思いました。討論会では友達の意見から色々なことを学べました。

○ 授業者より
 日ごろ,グループ学習や討論の機会が少ないので,意見交換がスムーズに進むように,準備シート・意見発表用シートを工夫した。討論を中心とした授業での教師の役目は,様々な生徒の意見を焦点化し,対立の争点を整理していくことである。また,終末では授業のねらいとしている視点(価値)について,生徒の意見を基にまとめる必要がある。この授業では討論で勝敗を決めることはあえて行わず,討論を通してどのような視点に気付くことができたかを重視した。
 また,対象クラスは77.8%が手作り弁当を毎日持って来ていたので,論題を『高校生は,毎日,手作り弁当を持参すべきである。』と設定したが,生徒の実態に合わせて条件(論題の日数)を変化させるとよい。
 討論会を通しての評価カードでは,自分の意見が「よく深まった」は33.3%,「少し深まった」は50.0%,「混乱した」は11.1%,「変わらなかった」は5.6%であった。「弁当に愛情が込められるとは,どういうことですか(質問)」「お母さんの卵焼きの味は,市販弁当にはありません(反論)」など意表を突く一言でクラス全体が和みながらも,考えさせられる場面があった。全体的には論点に沿った論争が進み,活発な意見交換ができたと思う。
 この討論会を通し,生徒は,無意識に行っていた食の選択について様々な意見を出し合いながら,家族や伝統,健康,安全,環境の視点から自分の食生活を見つめ,食の選択に対する認識を深めることができたと言えるだろう。
 
 授業当日の板書  (討論の様子:写真は最終回答の途中です。
(立論の様子) (質問や反論の様子) (最終の回答・途中)

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