小学校・学級活動

道徳の授業実践例  (小学校第6学年で実施) 指導案等はこちら
主題名  「いただきますを考えよう」  3−(2)生命の尊さ 
ねらい  自分の命がたくさんの命のうえに成り立っていることに気付かせ,大切な命を残さずいただこうとする態度を育てる。
資料名  「大漁」 金子みすゞ  
児童の実態
と「ねらい」
 高学年の子どもは,育ち盛りということもあり給食をよく食べ,食缶に残すことはあまりしない。しかし,一人一人を見ると,野菜や魚など好き嫌いがある子どもや少食の子どももいて,全員が何でも残さずに食べているとはいえない。また,食事を楽しんでいる子どもは多いが,動物や植物の命をいただいていることを意識して食事している子どもは少ない。 
資料の
取り扱い
 金子みすゞの詩「大漁」は,喜びと悲しみを対比させるところに特徴がある。大漁の喜びについて深く考えることによって,いわしの気持ちについても自然に思いをめぐらすことができる。「浜は祭り」と「海の中はとむらい」。この二つを対比させることで,大漁の喜びの裏にいわしの悲しみがあることを気付かせていく。いつもおいしく食べている食事は,実は,たくさんの命をいただいているのだということを意識させたい。「いただきます」の重みに気付かせるとともに,大切な命だからこそ残さずに食べようという態度を育てたい。 
授業の実際 段階 学習活動 主な発問と児童の反応 指導上の留意点
導入 1 食事の食べ残しについて考える。
○給食や家での食事のとき,嫌いな食べ物があるとどうしますか。
 ・我慢して食べる
 ・半分だけ食べる
 ・食べずに残す
・事前アンケートから,意見をまとめたものを提示する。

【家で嫌いなもが出たら,どう?】

2 資料「大漁」の詩を読む。


3 漁師の仕事の大変さや大漁のときの漁師の気持ちを考える。










4 いわしの気持ちを考える。






5 「漁」といわしの命について考える。








6 いただいた命と自分について考える。

 【命についてどう思う?】




○漁師が大変なことはどんなことだと思いますか。
 ・危険なことがある
 ・魚が獲れる量が一定ではない
 ・天候に左右される


○大漁のときの漁師の気持ちはどうだろう。
 ・きたきた,大漁だ,嬉しい
 ・商売になるぞ
 ・明日もとれたらいいなあ  
 ・家族も喜ぶぞ




○いわしたちはどんなことを考えているのだろう。
 ・どんどん仲間が減っていく
 ・仲間が獲られて悲しい
 ・もっと泳いでいたかったのに
 ・うらんでやる・・
 ・獲られた魚がかわいそう


○漁をすることについて,どう思いますか。
 ・漁師も生活があるから,仕方な
  い

 ・人はいろいろなものを食べない
  と生きていけない,仕方ない
 ・魚がかわいそう・・・
 ・人だけがいろんな命を食べて,
  いけないのではないか
 ・生きていくためには,いわしも他
  の命を食べているから,仕方ない

◎自分の命について,どんなことに気付きましたか。
 ・自分の命には,他の命が取り
  込まれて,成り立っている。
 ・命をいただいていることを感謝し,
  無駄にしない
 ・他の命の分まで,一生懸命生き
  ることが大事
・漁をしているところの写真や大漁旗の写真,魚がたくさん水揚げされている写真を提示する。
・漁師の苦労が分かるように具体的な場面について話し合わせる。
・「大漁」の詩の中にある浜の祭りの様子を想像させ,大漁のときの漁師の気持ちを考えさせる。

・いわしの悲しさ,ただ食べられていくいわしの命,もっと生きたかったいわしの命があることに気付かせたい。




・いわしの気持ちと命を考えながら,自然界の「食べる」「食べられる」の関係に気付かせる。
・命をいただくことへの心の葛藤があることをおさえておく。



・すべての命がつながり合って,支えられていることに気付かせる。
・自分の命の中に,他の命が取り込まれて,一緒に生きていることを基に,命を大切にしたいと思う気持ちを高める。


7 これからの自分について考える。


【ワークシートに記入】

○今までの食生活を振り返らせ,これからの生活で心掛けたいことを考えさせる。
 ・作ってくれた人にもいただきま
  す,そして材料の命にもいただ
  きますと言いたい
 ・食べ物に感謝して,残さずに食
  べたい
 ・命をもらったものだから,その命
  の分まで,大切にしたい


・動物や野菜を食べるということは,その命をいただいて,そのおかげで生きているということを最後に伝える。
 資料「いのちはめぐる」
(参考文献:『食の総合学習  1 
   食といのち』)


【今まで,自分はどうだった?】
 
授業を
振り返って
○児童の感想(ワークシート)より
・ 今までは,あまり食べ物をありがたいと思って食べていなかったけれど,これからは食べ物に「ありがとう」と思って,なるべく残さず食べたいと思いました。
・ 自分の命もいろいろな命のおかげであるんだと思った。大事にしないといけない。
・ 作ってくれた人にもちゃんと「いただきます」と言わないといけないけど,その料理に使われた動物や植物などにも,「ごめんね,いただきます」と言わないといけないなと思いました。
○授業参観された保護者からの意見
・ 授業参観の次の日から,「いただきます」ときちんと言って食べるようになりました。「いただきます」「ごちそうさま」の言葉一つで心が穏やかになってきます。これからも気持ちよく食事をしたいものです。そして,「おいしかったよ」の一言がとても嬉しいです。
・ 道徳の授業を受けてからは,肉,魚,野菜,それぞれの大切な「命」をいただいて自分が生きていけていることをしっかり学んでくれたと思います。

○授業者より
 学習前に給食と家庭での食事についてアンケートを行ったところ,給食で嫌いな食べ物があると答えた子どもは32人中26人,家庭の食事では32人中21人であった。また,嫌いな食べ物が出たとき,給食では「我慢して食べる」と答えたが,家庭では「少し食べる,残す」と答えた子どもも少なくなかった。
 授業後の子どもの感想や様子を見ると,この学習を通し,子どもたちは命をいただいていることを意識することができたと思う。学習後,「いただきます」「ごちそうさま」が以前より丁寧に言えるようになった。給食後に食缶が空になっていると「全部なくなったね」と笑顔で話しかけてくれた子どももいた。今後も子どもたちの意識が薄くなったり途切れたりしないよう継続して,様々な場で「食」についての学習や指導を行いたい。

○授業で活用した掲示資料について
・ 給食の食べ残しが多い場合は,写真をとっておき提示するのも有効と考える。本時では,事前アンケートの結果を導入段階で掲示し,終末段階では,今までの生活を振り返る際に考えやすいようにした。
・ 漁業が子どもにとって身近でない場合は,漁業の苦労や大漁のときの喜びが考えやすいように写真を用意するなどの手立てが必要である。
・ 終末では資料を読み聞かせ,動物や植物の命をいただいて生きていることを伝えるが,「食物連鎖」という言葉には,触れないようにした。

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