小学校・学級活動

道徳の授業実践例  (小学校第3学年で実施) 指導案等はこちら
主題名  「いただきます」「ごちそうさま」 2−(4)
ねらい  自分たちが食べている食事には,たくさんの人がかかわっていることやその人たちの思いに気付き,食べ物に感謝して食べようとする気持ちを育てる。
資料名  「いただきま〜す」(絵本) 二宮 由紀・文,荒川 良二・絵(解放出版社)
児童の実態
と「ねらい」
 児童は,自分たちが日ごろ口にしている料理について,だれが調理してくれたのかは分かっているが,その前には,多くの人の手を経ていることを考えることは少ない。また,そこで使われている食材は,元をたどれば動物や植物の生命であることまで考えて食べることはない。生命をいただいて生きている人間として「いただきます」「ごちそうさま」の意味について考えることは,飽食の時代といわれる現代ではとても大切なことである。
資料の
取り扱い
 資料「いただきま〜す」(絵本)は,児童が大好きなハンバーグを前にしたところから始まる。このハンバーグがこんなだったら…と次の場面では,皿の上に牛や鶏,野菜がそのままのっている。文は少ないが,食材が料理として食卓に上がるまでには,たくさんの人の手を経ていること,その過程でいろいろな命が巡っていることが分かりやすくまとめられており,小さい児童にも理解しやすい内容である。授業では,この絵本をペープサートにして掲示し,食べ物がたどってきた道筋を理解させながら,そこで登場する人々について考えさせていく。
授業の実際 段階 学習活動 主な発問と児童の反応 指導上の留意点





1 様々な料理の写真を見る。


2 どんな気持ちで「いただきます」を言っているかを考える。

 【名前カードをはる児童】
○写真を見て,どう思いますか。
・食べたい
・おいしそう
・おなかがすいてきた
・これは食べたくないな






○食べ物を前に,どんな気持ちで「いただきます」と言っていますか。
・はやく食べたい
・食べたくないけど,食べなくちゃ
・あまり食べたいくないなあ


・前もって児童の好きな料理や苦手な料理を調べておき,容易に感想が出せるように,いろいろな料理の写真を掲示する。





・多様な考えを引き出すために,嫌いな食べ物を前にしたときの気持ちにも触れさせる。

・名前カード(水色)を用いて,普段の自分の思いを明らかにさせておく。








3 絵本「いただきま〜す」を読み,料理ができるまでについて考える。

【授業の様子】



4 作っている人の思いについて考える。



5 「いただきます」の意味を考える。
○料理がわたしたちの目の前に来るまでには,だれが,どのようなことをしているのでしょう。
・料理をつくる 
・お店で売る  
・野菜を育てる 
・料理する  
・お肉を解体する



○どんな気持ちで,一生懸命作っているのでしょう。
・おいしいものを作ろう
・人の口に入るから安全なものを
・命をいただいている,ありがとう
・大切にして使います

・みんなが健康になるように,栄養
 のあるものを作りたい






◎これから,どんな気持ちで「いただきます」を言いたいですか。
・作ってくれる人にありがとう  
・命をありがとう
・そまつにしません

・大きな声でありがとうと言いたい
・ありがたく食べます



・絵本は,見やすいようにプロジェクターで投影しながら,ゆっくりと読み聞かせる。
・ペープサートや文字カードを用い料理が来る行程を作りながら,それに携わっている人々がたくさんいることに気付かせる。

・食べ物に携わる人の部分に,児童の意見を吹き出しにして張り出すことで,視覚的にもとらえやすくする。
・全体を振り返り,途中には「植物や動物の命をもらっているから大切に扱いたい」と思いながら働く人がいることにも触れる。

 

・児童の考えを分類しながら「わたし」の部分に板書し,名前カード(ピンク色)を再度,貼らせることで,気持ちの変容を見取る。
・はじめの気持ちとどう変わったか,これまでどんな気持ちが足りなかったかをとらえさせたい。


6 「ごちそうさま」の意味について,教師の説話を聞く。
【授業の様子】

○「ごちそうさま」には,どんな意味があるかを話します。



・「御馳走様」を漢字1つ1つに分け,なるべく児童にも分かりやすい言葉に直して説明をする。

授業を
振り返って
〇児童の感想より
・食べ物の命や作ってくれる人などが,人が生きる大切なことをしている。今までの「いただきます」もちゃんと言っているときと言っていないときがあったけど,ちゃんとしているときが多かったということもないと思います。これからはいつも,育てている人,作ってくれている人,生き物の命をそまつに思わないで,大切に思います。
・べん強して分かったことは,作ってくれた人や野さいをうえた人がいるからごちそうが食べられるんだなと思いました。今まできらいなものをのこしたりしていたので,こんどからはのこさずに食べたいなと思います。ごちそうのはじめとさいごには「いただきます」や「ごちそうさま」はわすれずにしなくちゃダメだなと思いました。
・いままで「いただきます」というのがなんのためにいわれていたのかがわからなかったけど,今日のべんきょうでわかってよかったです。これからも「いただきます」といっていきたいです。
・ぼくはいつもありがとうという気もちで食べていましたけど,それをもっといろいろな気もちでぼくは今日からそういう気もちをこめて「いただきます」をいいたいです。
○授業者より
 授業前の児童は「感謝」という言葉は知っているものの,児童の思う感謝は目の前の食事を準備してくれた母親や給食センターの人にとどまっていた。絵本をプロジェクターで提示し,ペープサートを用いて「食べ物の来る道」を振り返ったことは,多くのもの,人のおかげで自分たちの命が支えられていることを視覚的にとらえることができたと思われる。
 本時の学習では,自分が考えていなかった多くの人の手を経ていることに気付き,さらに,食材である植物や動物の命をいただいているということにも気付くことができた。学習後,多くの児童が「命をもらっている」「大切にしたい」「感謝して食べる」という感想を書いていた。
 「作ってくれた人に感謝して食べる」12名。「命に感謝する」12名。「好き嫌いせずに何でも食べる」7名。「いただきますの意味が分かった」4名。「感謝して食べる」7名であった。まだまだ,実践に結び付いたとは言いがたいが,日ごろの給食指導や食指導で更に意識の定着を図っていきたいと考える。
○本時で活用した資料について
・ プロジェクターを用いた読み聞かせは,画面が大きくなって見やすく,児童の関心を引き,理解させやすい。
・ 作っている人の思いについては時間をとり,なるべく多様な意見を引き出させる。その際,ワークシートを児童の実態に応じて用いる。
・ 類型化する際の名前カードを2色準備しておくと,始めと終わりの児童の意識の変容を見取りやすくなる。
    授業後の板書の様子      (この時間の学習のまとめができるように工夫しました)
 展開部分の板書 終末部分の板書 導入の部分の板書

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