マルチメディアコンテンツの特徴と活用方法について

1.教材のねらい
 「ビジネス基礎」商業の学習ガイダンスにおける教材コンテンツは、以下のようなコンセプトのもとに作成しました。
◆マルチメディアの特徴を活かし、動画や静止画を多く取り入れ、視覚に訴えることにより生徒がイメージしやすい教材とした。
◆地元佐賀県における題材を取り上げ、生徒達が学習内容を身近にとらえることができるような教材とした。
◆ビジネスに成功した経済人の経営理念等を紹介し、商業を学習する意義や目的について理解が深まるような教材とした。
◆新入生に対して、商業教科に興味・関心をもたせるような教材とした。 
◆卒業後の進路に対して夢と希望がもてるよう、進路意識を啓発し、3年間の学習に対する計画性や目的意識を身に付けさせるための教材とした。

2.ガイダンスの重要性
  平成15年度より学年進行で導入された新学習指導要領では,商業科の科目として「ビジネス基礎」が新設された。この科目は,「理科教育及び産業教育審議会」の答申において,原則履修科目として位置付けられており「各教科における基礎的・基本的な内容で構成され,より専門的な学習への動機付けや卒業後の進路について生徒の意識を深めることを目的とした科目」に対応するものとして設定された科目である。
  科目の目標として学習指導要領では,「ビジネスに関する基礎的な知識と技術を習得させ,経済社会の一員としての望ましい心構えを身に付けさせるとともに,ビジネスの諸活動に適切に対応する能力と態度を育てる」とあるように,商業教科を学ぶ意義や,将来の進路についてのガイダンスを行うとともに,生徒が将来の進路について意識をもって学習に取り組んでいくための方向付けを行うための科目であると言える。
  商業高校あるいは商業に関する学科における新入生にとって、「商業」という教科がどういった教科なのかはある程度は理解しているものの各科目の特性や、資格取得と進路との関係については、ほとんど理解できていないのが実情といえる。特に商業教科に属する科目は、現在17科目あり、学校設定科目などを合わせるとさらに広範囲にわたる。
  そこで、新入生に対して各科目の特性や資格取得・進路との関係などにおける効果的なガイダンスを実施すれば、それ以降の学習がスムーズに進められ、将来に対する目的観や計画性を持って学習活動に取り組むことができるのではないかと考えた。

3.コンテンツの特徴
  「ビジネス基礎」を指導する上での課題としては,他の商業科目と比較して,教科書の中身が従来の「流通経済」の教科書と比較すると内容的にかなり削減されたうえ,現代社会に即した例が不足している点が考えられる。これは,科目の特徴として,問題解決能力や自発的,創造的な学習態度を育てるための科目としての特徴の表れであるといってよいが,指導者側からは,かえって指導しにくいという印象がもたれているのが現状である。その要因としては,流通経済分野全体について共通することであるが,カラー写真入りの資料集(副教材)が発刊されていないことなどから,ビジネスの現状を視覚的に把握させ,興味・関心をもたせるための教材に乏しいといった点が考えられる。
  興味・関心をもたせるための手法としては,自分以外の人の経験を通して,擬似的に体験することやテーマに関連した出来事で,かつ聞き手にとって身近と思える事柄を話題とする方法がある。前者の表現手段としてはビデオ等の映像メディアが効果的であるということが実証されている。仮想的ではあるが,聞き手にとって臨場感(リアリティー)のある表現として受け入れられる。
 後者の場合も,これとほぼ同じ効果が得られ,話し手自身の経験談や聞き手の身近に起こりそうな話題を使うと聞き手を引き付けることが可能である。このような原理を応用して,具体的な企業名や商品名などの身近な話題(トピックス)や,ビジネスに関する資料・事例等を,静止画や動画などのデジタルコンテンツとして授業に活用すれば,ビジネスの動向をリアルに提示できるとともに,視覚に訴え,興味・関心をもたせることが可能であると考える。
  以上のことから,ビジネスの動向や将来の進路に関する資料等を収集し,それを基にマルチメディア教材を開発すれば,商業の各分野を視覚的にとらえ,生徒のビジネスに対する興味・関心や進路意識が高まり,「ビジネス基礎」の効果的な指導が可能であると考え,本研究テーマを設定した。

4.コンテンツの活用方法
 本研究においては、「ビジネス基礎」の商業の学習ガイダンスの単元に絞ってマルチメディア教材を開発したが、他の科目である「商品と流通」や「国際ビジネス」など「流通ビジネス分野」全体にわたっても活用できるコンテンツも含まれているといってよい。よって活用のメインとなるのは、新1年生の1学期の時点における「ビジネス基礎」の商業の学習ガイダンスの単元においてであるが、それ以外の科目や中学生の体験入学などにおける商業教育のPR等さまざまな機会をとらえて活用して頂ければ幸いです。