損益分岐点売上高    工業簿記とは?


利益がでるかどうかの、境界線となる売上のことです。簿記の基本用語で、実際の売上がこの水準を上回れば黒字、下回れば赤字になります。
実際の売上高を分母に損益分岐点売上高と比較したものを損益分岐点比率といいます。
 同比率が低いほど利益を上げやすい収益体質といえます。
 日本経済新聞の調べによりますと、上場企業1620社の2004年度損益分岐点比率は前年度比で2.4%下がり82.9%になったということです。
これは過去25年間で最低水準だそうです。
 例えば売り上げが100億円の企業の場合、損益分岐点売上高は82.9億円で、売り上げから引いた17.1億円が利益になるわけです。
売り上げの20%近くが利益という会社は、かなりもうかっている感覚になるでしょう。
損益分岐点比率は、経費を「変動費」と「固定費」に分けて求めます。具体的には売上高に占める変動費の比率で固定費を割ったものです。
 変動費は売上高につれて変化する経費で、原材料費や外注費用のほかリベート、運送費などが含まれます。一般に売り上げとともに増えますが、
最低レベルは決まっているのが普通です。
 一方固定費は売り上げにかかわらず、ほぼ決まって計上される経費のことです。人件費や減価償却費、長期借入金にともなう支払金利、家賃などに
なります。ちなみに固定費に含まれる人件費は正社員や契約社員などの給与や保険料、交通費などで、パートタイマーなどの営業の繁忙によって変化する
物は変動費に入れる傾向が強いようです。
上場企業の損益分岐点比率が、大きく低下した一つの要因は、固定費の削減効果が表面化したことです。過去数年のデフレや不良債権処理に対応するために
、企業はリストラを実施しました。中でも大ナタを振るったのが、最大の固定費項目である人件費です。退職者不補充をはじめ、早期退職制度や実績主義の
賃金制度を取り入れたり、大規模な人材カットなど、人件費を抑えるためにできる限りの手段を講じました。
 メーカーでは生産コストを下げるために、中国をはじめ東南アジアなどに生産シフトした効果も大きかったようです。海外生産比率の上昇は、人件費
のみではなく減価償却費などの低下にもつながりました。固定費の削減効果の一方で、売り上げの回復も損益分岐点比率の低下に寄与しました。
04年度における大手企業の売上高前期比で6%強の伸びとなりました。
 固定費は下がったとはいえ0.4%のの低下にとどまっています。また原油価格や鋼材価格などの上昇で変動費は0.4ポイントあがっていますので
実は売り上げの回復が、損益分岐点を下げる最大の牽引力だったと言えるでしょう。
今年度は石油製品や鋼材など、変動費部分の上昇が見込まれるほか、人材リストラ効果も一巡し、固定費のさらなる低下は期待できない状況です。
中国・人民元の引き上げもコストアップ要因になりそうで、損益分岐点がさらに下がるためには、売り上げの拡大しかない状況です。
 こういう中では、売れる商品を持っているかどうかで、企業の収益力が違います。これから本当の意味での企業の実力が試される時代が来ると言えるでしょう。