単元名・教材名・対象生徒・教材観   指導観・指導目標・評価規準・単元計画 

単元名

 古典作品の恋愛を読み取る 
 
教材名

(『電車男』),『好色五人女』−お七と吉三郎−,『源氏物語』−桐壺−
 

対象生徒(想定)

 1年で国語総合を学び古典の授業を受けてきている。文語文法や古語への抵抗に加え,古典を現代とは切り離された文化と考えることで,古典に興味をもてずにいる高校2年生を対象生徒にする。

【想定される特徴】
 受験や就職試験で古典が課されていないか,課されていても配点が少なく,進路の面からは古典学習に対する動機付けがあまり働いていない。
 流行のものには興味をもち,最近の純愛ブームに対しても,書籍の購入や映画・ドラマなどの視聴をするなど関心を抱き,友人間でも話題にしている。


教材観

 時代や登場人物の境遇も違う作品だが,それぞれ時代ごとに多くの読者を引きつけてきた。古典の2作品は現代まで魅力を失わずに読み継がれてきている。
 恋愛が物語の要素である。恋心自体が生徒たちの興味を引きつける題材となり,様々な時代のものの見方・感じ方を理解させることの助けとなるであろう。
 3作品ともそれぞれが,人物関係や心情をとらえやすい場面(話)である。現代から江戸,平安と順に時代をさかのぼって学習することで,時代ごとの文化の違いによる抵抗を軽減させたい。時代やジャンルを越えて,一つのテーマで古典が読み進めていけると思われる。


(『電車男』)…本文の提示はなし。

 インターネット掲示板への書き込みを基にして,映画化やドラマ化もされ,社会全体で流行した物語である。ネット掲示板によるコミュニケーション,匿名書き込みに助けられて恋愛を行う新しいスタイル,主人公がアキバ系オタクという意外性などが人気の要因として挙げられる。しかし,恋愛相手に対する一途な思いや周囲の無償の応援など,恋愛にまつわる従来の魅力も多く演出されている。
 高校生のほとんどが興味をもっている作品なので,生徒の活発な活動が期待できる。

 
『好色五人女』−お七と吉三郎−
 
 江戸時代に井原西鶴が,実際の事件を踏まえて書いた浮世草子である。社会の様々な制約に逆らい,恋愛に命をかける五人の女性の姿に,生徒の興味をもたせることができる。中でも,特に有名な八百屋お七の話は,同年代の登場人物が起こす悲劇的恋愛として,生徒に共感を覚えさせることができる。
 文法や語彙面でも,現代に近い近世の散文なので,生徒の抵抗は比較的小さい。
 心情や展開を問える短くまとまった場面が少ないため,授業で扱われることは少なかったが,冒頭のお七と吉三郎の出会いに限定し,二人の惹かれ合う場面としてまとめることで,教材として取り上げることができる。
 

『源氏物語』−桐壺−
 
 平安時代に紫式部によって書かれ,成立後は類似の作品も多く現れるなど,日本文学に大きな影響を与えた作品である。貴族社会の雅な世界が舞台となり,主人公光源氏の愛の遍歴を話の軸として物語が進行する。五十四帖にも及ぶ長編物語の中で,多数の個性的な人物が様々なドラマを生み出している。全編を読み通すのは高校生にとって難しいが,一部だけを抜き出して読んでも,物語としての魅力を十分に備えている。外国にも広く知られている日本を代表する作品なので,一般教養として作品の概略とある程度の内容は知っていてほしい。
 冒頭の「桐壺」は,展開が比較的つかみやすいこともあり,多くの教科書にも採用され,『源氏物語』の中でも特に親しまれている場面である。登場人物の人間模様や心情に目をやると,天皇は恋に一途なあまり社会的な常識を無視し,桐壺は周囲の理解を得られない恋愛に苦しむなど,現代の人間と同じような心の動きがうかがえる。恋愛とその魅力が時代を越えて普遍的に存在する点など,古典世界と現代の共通性に目を向けさせることで,古典に対する生徒の関心を深めさせられる作品である。

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