発達段階に応じたねらいと配慮(小学校)

@低学年(1〜3年) A高学年(4〜6年)
【ねらい  この時期の子どもは,言葉による表現が未成熟で,自分の思いを言葉で十分に表現したり他の人に伝えたりすることが苦手です。そんな子どもたちに,言葉によらない,遊び的な感覚で自己を表現する場を与えることができます。一方教師は,作品を通して子どもの内面(今興味のあること,その子を取り巻く環境など)を感じ取ることができるでしょう。

◎ この時期は比較的限られた友達と遊ぶことが多く,自己中心的な面も見られる時期なので,他の友達との交流の促進も大きなねらいとなるでしょう。シェアリングを通して,友達の作品を見て感じ取ったり,友達の気持ちを聞いたりする機会にもなり,他者理解につながります。
◎ 身体的には第2次性徴の時期をむかえ,体の成長に心の成長が追いつかず,アンバランスな状態の子どもがいます。また,大人に対して反抗的な態度をとってしまうことがあります。友達関係が重要になってきますが,一方学習面や運動面でも個人差が広がり,自信をなくして自己肯定感が低くなってしまう子どももいます。そんな子ども達に,言葉によらない方法で自己表現させることは,不安やストレスの解消につながります。教師にとっては,話したがらない子どもの内面を理解する手がかりになるでしょう。

 初めは個人コラージュでしっかり自己表現させます。心のリラックスをはかり,シェアリングを通して他者とのコミュニケーションを促進することになります。友達作りのきっかけにもなる,グループコラージュを取り入れてもよいでしょう。2〜4人ぐらい(ねらいによってはもっと多数)のグループで1つの作品を作ることで,制作・シェアリングを通して心の交流が促進されます。体育大会や修学旅行など行事に関するものや総合的な学習に関するものなど,テーマを与えて制作することもできます。
【留意点】 事前
◎ 子どもが自分で雑誌を選べないこともあるので,保護者に事前に雑誌やカタログなどの準備をお願いしたり,教師間で協力して低学年に適当な雑誌を集めたりすることもよい方法です。

作成にあたって
◎ 切る作業が苦手な子どもがいるので,コラージュ・ボックス法がお勧めです。そのために,事前に低学年の子どもが使いそうな切り抜きをたくさん準備して,内容ごとに箱に分けておくと便利です。
◎ 手の汚れを少なくするためにスティックのりがお勧めです。はさみは,けが防止のため,先の丸い物がよいでしょう。
◎ 台紙を配ったらすぐ記名をさせます。
◎ 「切り方や貼り方」には丁寧さや,切ったものの枚数,貼る場所などの個人差が見られると思いますが,それを指導するのではなく,個性として認めます。
◎ 作業する場所は,汚してもよいように新聞紙やビニールシートを敷いておくなどの場所作りをします。床など広い場所で制作するのもリラックスしやすい環境になります。
◎ シェアリングの際は,「好きなところはどこか,今の気持ち」などを子ども達から引き出すように進めたいものです。まず教師がモデルとして話してみせると,子ども達は話しやすくなるでしょう。話したがらない子や話すことに抵抗がある子には,無理に話させなくてもよいでしょう。
事前
◎ 自分で雑誌を選ぶことはできると思うので,早めに連絡し,雑誌を集めさせておきます。切り抜くものに個性や性差が顕著に表れるので,学校で雑誌を準備するときは広い内容の本を集めた方がよいでしょう。

作成にあたって
                             ◎ 時間が足りなかったときは,宿題法にすることもできます。
◎ シェアリングでは他の人の作品についてちゃかしたり,批判的なことを言ったりしないようにします。作品の上手下手は関係なく,制作やシェアリングを通して,感じたことや心の変化を受けとめることが大切であることを話すとよいでしょう。