○ 学習指導案    小学校第5・6学年 「 英語活動 」

1 活動名 「世界の時刻と時差」(平成16年11月実施,6名)
          (タスクベース・コンテントベースの英語活動例)
                                          授業実践者:佐賀県教育センター
                                                   研修員 宗  誠

2 単元とその指導について
 本単元では,1から60までの数や時刻を尋ねる英語表現を取り扱う中で,時差という概念にも触れさせることにした。世界の都市で時刻がずれていることについては,何となく知っている児童が多いと思われるものの,東西に広い国では標準時が複数設定されていることや高緯度の国ではサマータイムが設定されていることなどについて知っている児童は少ないと思われる。時刻を表す英語表現に親しませるとともに,そのような文化の違いに気付かせ,異文化に対する興味・関心をかきたてることを主なねらいとする。また,英語での質問に聞き覚えのある英語表現を使って何とか答えようとする意欲を高めることもねらいのひとつである。
 本学級の児童は,入学当初からALTとのTTによる英語活動に取り組んでいるため,ある程度の語彙力,聞いて反応する力は育っている。数字についてもこれまでたびたび取り扱われているので,数字を聞いて理解したり,時刻や数を問われて答えたりするということには慣れている。しかし,外国との時差に関心をもっている児童は少ない。
ALTや他の外国人ゲストに対しては抵抗感が小さく,自分からかかわろうとする意欲もある。ただ,高学年という成長段階からくる恥ずかしさなどもあって,人前で英語を発話したり,大きなジェスチャーをしたりするようなことに抵抗を示す児童もいる。
 そこで,活動においては,最初に1から60までの数の言い方や時刻の尋ね方,答え方などに触れさせる。その際,単に数を表す英単語を言わせるだけでなく,ローマ数字の読み方を考えさせるような活動を取り入れ,児童の知的好奇心を刺激しながら進めていきたい。次に,それぞれの児童に英語による指示で世界の時差時計を作成させる。(タスクベース)
 それを利用し,"What time is it in (都市名)?"という質問を繰り返し投げかけながら,時差という概念に触れさせる。その中で,サマータイムという習慣や,それに込められた人々の願いなども紹介し,異文化への好奇心を高めさせたい。(コンテントベース)いずれの活動においても,賞賛や励ましの言葉かけを多くし,全員が楽しんで取り組めるように配慮したい。

 本時の指導
 (1) 目標
  ア

  イ

  ウ
 教師からの簡単な英語での問いかけに聞き慣れた英語表現を使って反応することで,英語によるコミュニケーションの楽しさを味わわせる。(関心・意欲・態度)
 クイズやゲームを通して,時刻を尋ねたり答えたりするときの英語表現に慣れさせる。(技能)
 
時差時計を作らせ,それを活用させることで,時差という概念やサマータイムに見られる習慣の違いなどに気付かせる。(知識・気付き) 
 (2) 準備
ローマ数字カード,時差時計作成の材料,パソコン,プロジェクター,時差教材ソフト
 (3) 展開
児童・生徒の活動 指導上の留意点と主な英語表現   ※評価
 あいさつをし,簡単な会話を楽しむ。
 全員とあいさつをしたあと,できるだけ多くの児童に質問を投げかける。
 Good morning, everyone. How are you?
 How's the weather, today?
 What's the date, today?
 歌を歌い,英語活動の楽しい雰囲気をつくるとともに,1から10までの数の言い方に慣れる。
 ♪ Seven Steps

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 はじめは1から7までの数字を使って歌詞の通りに歌わせ,2回目は数字をランダムに並び替えて歌わせる。
 How many クイズを楽しむ。 
 様々な動物の絵が描いてある紙を見て,動物の数に関する教師の質問に英語で答える。

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 テンポよく質問をする。
 How many (snakes) are there in this picture?
 ローマ数字の数え方に慣れる。

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  ローマ数字で書かれた時計盤を見せ,その仕組みを考えさせる。
 様々なローマ数字の読み方をクイズ形式で出題する。
 What number is this?
 私たちの身の回りで意外と使われていることに気付かせる。(コンテント)
 ローマ数字の仕組みに気付き,数字を答えることができる。(知識・気付き)
 教師の英語による指示で時差時計を作る。

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 教師の英語による指示に従って時差時計を作らせる。(タスク)
 Let's make a time disk.
 Please cut along these lines.
 Put the two disks together, like this.
 英語の指示に従って時差時計を作ることができる。(技能)
 世界の主な都市の今の時刻について考える。

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・ 東京の今の時刻を指定し,世界の様々な都市の時刻を尋ねる。
 It's 2:00 p.m. in Tokyo.
 What time is it in London?
 質問に積極的に答えようとする。(関・意・態)
 午前,午後を表すa.m./p.m.という記号を紹介し,それらの記号は数字の後ろにつけることを知らせる。
 高緯度地域で用いられているサマータイムについても軽く触れる。(コンテント)
 サマータイムに込められた思いに気付くことができる。(知識・気付き) 
(緯度・軽度の違いによる時刻,気候の違い,それに伴う生活風土,習慣の違いなどへ発展させることができます。)
 終わりのあいさつをする。
 この時間の活動の様子をほめ,楽しい雰囲気のまま終わ る。

本時の授業におけるタスクベース・コンテントベースの考え方
 授業の導入でローマ数字を使って数当てクイズをしました。子どもたちが,「えっ,何の数字?」と興味をもち,そしてその仕組みについて考える過程で知的好奇心を刺激されたようです。
 次に,時刻を尋ねたり答えたりする表現を利用して,数に慣れさせようと考えました。しかし,時計を持っている教師が,時計を持っていない子どもたちに今の時刻を尋ねるというのは,不自然な場面設定です。しかも,ほとんどの教室には時計が設置されていますから,逆に子どもたちが教師に時刻を尋ねる必要もありません。そこで,時差という概念と絡めた活動を仕組んでみました。これなら, "What time is it now in (都市名)? と尋ねても不自然ではありませんし,子どもたちも質問に答えようという気になるでしょう。今回は利用しませんでしたが,インターネット接続が可能な教室であれば,「世界の窓」というサイトで,現在の世界各地の時刻や天気が分かり,また,ライブカメラを通して街中の様子をリアルタイムで見ることができます。そのようなリアリティのある活動は高学年の子どもたちを惹きつけることでしょう。
 また,ひとつの国で複数の標準時の設定,高緯度地域でのサマータイムの設定など,異文化に気付く内容も含んでいます。これをきっかけとして,緯度・経度の違いに伴う,時差,気候,生活習慣の違いなどへと発展させることができるでしょう。
 タスクとしては,教師の英語による指示で時差時計を作るということを取り入れました。もちろん英語による説明だけで時差時計を作っているのではなく,見よう見まねで作っているとも言えるのですが,その作業に英語の説明をかぶせることで,子どもたちには具体的な場面の中でのインプットということができたと考えられます。
 ※時差時計盤は,こちらからダウンロードできます。(PDFファイル)