・本研究においては,「指導」「評価」「一体化」を下の図のように考える。





 児童を変容させる(価値についての理解を更に深める)授業を行うために,本研究においては次のような「指導」の工夫を行った。 
 
(1)めあての明確化
 「親切とはいかなることか」「どうして親切にすることが大切なのか」など,まずは教師が価値について深く理解することが大切である。教師の価値についての深い理解によって「何が見えていて,何が見えていないのか」という価値についての児童の実態を明らかにすることができる。そこからめあてを作ることで,児童を変容させる授業づくりができると考える。
 
(2)資料開発
 道徳における価値の理解とは,「価値とはいかなることか」ということを言えるようにすることではない。「価値とはいかなることか」ということに気付き,それを大切にしていきたいという思いを育てることである。そのポイントとなるのは,資料である。児童を変容させるためには,児童の心に響き,価値についての理解を深めることのできる資料を見付けたり開発したりする必要がある。
 
(3)授業の単元化
 道徳の授業は1時間完結であることが多いが,1時間での児童の心の変容はわずかなものである。そこで,同一価値についての単元化(3時間程度)を行い,その過程で見取った児童のよさを生かし,価値についての理解を深めていくことで,児童を変容させることができると考える。
 
(4)オープンエンドの授業構成
 価値について考えることのできる場は授業中だけではない。授業以外の場の方が,異年齢の人をはじめ様々な価値観をもった人の考えを聞くことができる。また道徳においては,授業の中で体験をはじめとした実践は行わない場合がほとんどなので,授業以外が学んだことの体験や実践の場となる。
 そこで,授業の中で完結させるのではなく,授業後の生活の場に広げていくことで,子どもたちは多くの価値観に触れることができると考える。また,次の授業で再度価値ついて考える機会を設定することで,児童を変容させることができると考える。





 
 
 
児童の道徳性を伸ばすためには,一人一人をしっかりと見ていく必要がある。本研究においては,一人一人の児童のよさや変容を見付けることができるように,次のような工夫を行った。
 
(1)子どもを見る視点づくりについて
 めあてを立てただけでは児童がそれにせまれたかどうかを判断することはできにくい。そのためには,めあてを具体化する必要がある。めあてをもとに期待する児童の姿を明らかにし,それを「子どもを見る視点」として指導案上に示すことで,一人一人のよさを見ることができると考える。

(2)多様な評価の場の設定
 児童の道徳性のよさはどこで現れるか分からない。そこで,授業中をはじめ授業外でも意図的・計画的に児童を見る場を設定しておく。これにより,多面的に一人一人のよさを見付けることができると考える。

(3)評価方法の工夫
 児童の道徳性のよさは,いろいろな形で現れる。「書くことが得意な子」「発表することが得意な子」「身体で表現することが得意な子」「行動に表れる子」など様々である。そこで,できるだけ多様な評価方法を活用することで,子ども一人一人をしっかり見ていくことができると考える。




4.「一体化」の工夫について

 児童の「よさ」を見付け,それを生かしていくことで更に児童の道徳性を伸ばすことができると考える。
 そこで,「よさノート」に見付けた「よさ」やその生かし方を記録し,意図的・計画的に活用できるようにする。生かし方については,児童の実態や見付けた「よさ」の内容に合わせて「いつ」「だれに」「どのような方法で」ということを考えながら「よさ」を生かしていくようにする。
 例えば,クラス全体に広めたいような「よさ」であれば朝の会や帰りの会などで紹介したり学級通信に載せたりすることが考えられるし,その子なりの「よさ」であればノートにコメントを書いたり直接本人に言葉掛けをしたりすることが考えられる。