実践事例2

「干潟となかよし(第1学年)」
1 単元目標と評価規準の設定の実際 (1) 単元目標と評価規準
(2) 単元指導計画
2 学習の評価の実際 (1) 評価を位置付けた本時の展開
(2) 本時の学習活動における評価と教師のかかわり
(3) 単元を通しての評価と教師のかかわり
1 単元目標と評価規準の実際
(1)単元目標と評価規準<内容(5)「季節の変化と生活」・内容(6)「自然や物を使った遊び」>
 
ア 生活への
関心・意欲・態度
イ 活動や体験についての  
 思考・表現
ウ 身近な環境や自分
についての気付き
内容のまと
まりごとの
評価規準
(5)(6)
○身近な自然を観察したり季節や地域の行事にかかわる活動をしたりしようとしている。
○いろいろな遊びに関心をもち,楽しく遊ぼうとしている。
 
○四季の変化や季節に応じて,自分たちの生活を工夫したり楽しくしたりできる。
○身の回りの自然や身近にある物を使うなどして遊びを工夫し,みんなで楽しむとともに,それを表現できる。
○四季の変化や季節によって,生活の様子が変わることに気付いている。
○身の回りの自然や身近にある物を使うなどして遊べることや,みんなで遊ぶと楽しいことに気付いている。


単元の
評価規準
 
○干潟の自然に関心をもち,楽しく遊んだり観察したりしようとする。

 
○干潟の自然を生かした遊び方や観察の仕方を考えたり工夫したり,楽しかったことや気付いたことを自分などの方法で表現することができる。
○季節によって変化していく干潟の様子や自然にかかわって遊んだり観察したりする楽しさに気付いている。

 
単元におけ
る具体の
評価規準



(1)干潟の泥の感触を楽しみながら遊んだり生き物を見つけたりしようとしている。

 
(1)干潟で遊んで楽しかったこと,気付いたことを素直に表現することができる。

 
(1)干潟の自然のおもしろさやそこで遊ぶ楽しさに気付いている。

 
(2)秋の干潟の自然に関心をもち,意欲的に遊んだり観察したりしようとしている。


 
(2)ゲストティチャーとのかかわりを生かして,秋の干潟での遊び方や観察の仕方を考えたり工夫したりすることができる。

 
(2)秋の干潟の様子や夏から秋への変化に気付いている。


 
(3)冬の干潟の自然に関心をもち,意欲的に遊んだり観察したりしようとしている。


 
(3)ゲストティチャーとのかかわりを生かして,冬の干潟での遊び方や観察の仕方を考えたり工夫したりすることができる。

 
(3)冬の干潟の様子や秋から冬への変化に気付いている。



 
(4)今後も意欲的に干潟にかかわっていこうとしている。


 
(4)干潟で遊んで楽しかったこと,気付いたことなどを自分なりの方法で表現することができる。

 
(4)干潟の季節による変化の様子や干潟にかかわって遊んだり観察したりする楽しさに気付いている。

 

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 (2) 単元指導計画(全20時間)
学習過程 小単元
学習活動 

評価規準と評価方法
 
評価を生かした教師のかかわり
  ◇おおむね達成に向けて
であう
干潟で遊ぼう
1干潟で遊ぼう
(6h)
(1)計画を立てよう
(2)干潟で遊ぼう
(2) 干潟で遊んだこと、発見したことを紹介しよう
※交流1
○関・意・態<ア@>
(行動・つぶやき・発言・計画カード)
○気<ウ@>
(行動・つぶやき・カード・発表)
ふりかえりカード
◇教師も一緒に干潟に入り,遊びに誘うようにする。
◇対話しながら,干潟の泥の感触,生き物の動きのおもしろさや遊びの楽しさなどを引き出していく。
◇一緒に写真を見ながら,楽しかったことや発見したことを引き出していく。







干潟探検に出かけようT
2 秋の干潟へ行ってみよう 
(7h)
(1)秋の干潟探険の計画を立てよう
(2) 干潟の鳥名人さんに聞いてみよう
<野鳥保存会の方の劇>
<野鳥保存会の方と一緒に
ひみつを見つける>
(3) 秋の干潟へ行ってみよう
※本時
○夏の干潟体験を生かして
<干潟で思い切り遊ぶ>
○新しい発見
<色づいたシチメンソウに気付く>
○GTとのかかわりを生かして
<干潟にいる野鳥を観察する>
(4)秋の干潟で遊んで楽しかったこと,発見したことを紹介しよう
※交流2
○関・意・態<アA>
(行動・つぶやき・発言・計画カード)
○思・表<イ@>
(行動・つぶやき・発言・カード)
○気<ウA>
(行動・つぶやき・カード・発表)
※ふりかえりカード
◇計画カードを手掛かりに,干潟体験を想起させたり秋の干潟の様子を想像させたりしながら,活動への思いを引き出していく。
◇ゲストティチャーの劇を通して,野鳥への興味を高め,もっと知りたいこと,たずねたいことなどを引き出していく。
◇一緒に遊んだり観察したりしながら,体感したことを引き出すようにする。
◇野鳥に興味がある児童には,ゲストティチャーや観察が上手にできている児童とかかわりを促していく。
◇対話を通して,干潟での遊びについて想起させながら,泥の感触,生き物の様子,空の様子などについての気付きを引き出していく。
◇風,干潟の泥,生き物,シチメンソウの様子などについての発見を問いかけながら引き出していく。 

干潟探検に出かけようU
3 冬の干潟へ行ってみよう(5h)
(1)冬の干潟探険の計画を立てよう
(2)冬の干潟へ行ってみよう
(3)冬の干潟で発見したことを紹介しよ う
※交流3








○関・意・態<アB>
(行動・つぶやき・発表・カード)
○思・表<イA>
(行動・つぶやき・発言)
○気<ウB>
(行動・つぶやき・カード・発表) 








     
◇これまでの経験を想起させながら,自分なりの思いや活動の見通しについて問いかける。
◇秋探検での気付きを想起させたり,GTにかかわらせたりしながら,干潟で見られる渡り鳥にも目を向けさせる。
◇干潟の生き物の様子や泥の冷たさ,風の強さなど,体感したことについて問いかけることで,季節が冬に向かっていることに気付かせる。
◇シチメンソウの変化,野鳥の数や種類の変化などについて気付きをもっている児童との交流を促す。
◇干潟で活動したことや見つけたり感じたりしたことについて,引き出し価値付ける。


















大好き!干潟
4 干潟のためにできることを考えよう
(4h)










 
○思・表<イB>
(行動・つぶやき・手紙・発表)
○気<ウC>
(行動・つぶやき・カード・発表)
○関・意・態<アC>
(行動・つぶやき・発言・カード)
◇これまでの活動を写真やカードをもとに振り返りながら,干潟にかかわる楽しさや季節による変化についての気付きを引き出したい。
◇「干潟のために何かしたい」という気持ちを大切にし,1年生なりの思いや活動の工夫を認めていく。
◇きれいな干潟の様子を思い浮かべさせながら,シチメンソウの種まきをするなどの活動への思いを膨らませる。
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2 学習の評価の実際(8・9/20時)
(1)評価を位置付けた本時の展開
○本時の目標
秋の干潟での遊び方や観察の仕方を考えたり工夫したりすることができる。(思考・表現)
○前時までの評価を生かす視点
本時に向けての一人一人の児童の思いと予想される活動を明確にし,直接的に間接的に適切な指導を行えるようにするために,ゲストティチャーや引率協力者と共通理解を図る。
抽出児童A児の実態と本時におけるA児への指導計画
学習活動 教師のかかわりと評価の実際
1 活動のめあてについて話し合う。
秋のひがたの楽しさやひみつをはっけんしよう!

※めあての共有化
2 干潟で遊んだり秘密を見つけたりする。



※抽出児童A児の活動の様子と教師のかかわり
<評価規準:イ(2)>
秋の干潟での遊び方や観察の仕方を考えたり,工夫したりすることができる。(思考・表現)
<評価の視点(見取りの視点)>
@ゲストティチャーや友達とかかわりながら,活動している。
A道具をうまく使って観察している。
B学校周辺と干潟の様子を比べている。
C干潟体験(夏)の時の様子と比べている。
D友達とルールを守りながら遊んでいる。
Eルールや遊び方を工夫して遊んでいる。
F身近な物を生かしながら,遊びを考えたり試したりしている。
<評価方法>
行動・つぶやき・発言・カード

<不十分な状況と判断される児童への指導>
・学校周辺の様子,干潟体験の時の様子を問いかけ,季節による違いを意識付ける。
・ゲストティチャーとかかわりながら活動を工夫している児童との交流を促す。

<十分満足できる状況に向けての児童へのしてかかわり>
・評価の視点(見取りの視点)の姿を具体的に称賛し,価値付ける。
・遊びの工夫や発見したことについて,対話しながら引き出していく。
3 干潟の楽しさ発見,秘密発見について紹介し合い,次の学習に向けての思いを膨らませる。
※児童Aのふりかえりカード
※めあての共有化
活動を通しての自己のよさや成長について振り返らせる。



<ふりかえりカード>
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 (2)本時の学習活動の様子と教師のかかわり
抽出児童A児の実態
 

・町内の幼稚園から入学。何でも自分からやってみようとする。気付いたこともよく発表する。
・自己主張が強く,友達と衝突することがある。
・干潟については,関心が高いが,先行経験はない。
・初めての干潟での活動に対して少々不安もあるようだが,大好きな生き物がいっぱいの干潟はA児にとって魅力的な場所となるだろう。干潟で思い切り遊ぶ中で,友達とも十分かかわらせたい。


<本時に至る思い・様子>
関心・意欲・態度思考・表現気付き

<前時までの評価を生かす>
おそるおそる干潟に入る。不安がる
(新しい活動への不安)
「シオマネキを100匹捕りたい。」「海草も鳥も見たい。」「遊びたい。
(関心の高まり)
友達とかかわりながら準備する物を考える
(経験の活用)
鳥を観察したいという友達へ「双眼鏡で見ればいいんじゃない。」とアドバイス。
(友達とのかかわり・活動のアイデア)
「早く行きたい。」
(関心の高まり)

<計画カード>
・干潟への不安もやわらいだ。
・秋の干潟探検に向けて,意欲は十分。
・シオマネキ,鳥,海草などの生き物に興味を示している。主に,生き物を見つけたり,観察をしたりするなどの活動をするであろう。
・夏の干潟の写真やポケット図鑑,虫眼鏡,双眼鏡等を必要に応じて使えるように準備しておき,活用を促す。
・活動に必要な物について,自分なりに考え準備している。
・干潟の生き物の様子についての気付きを問いかけながら,五感を通して干潟とかかわることができるように支援していく。
・「鳥を観察したい。」という友達へのかかわりが期待できる。双眼鏡の使い方やGTから得た知識を生かしながら,支援していく。

本時の展開にもどる

<本時の活動の様子>

<その場で生かす>
(※関心・意欲・態度思考・表現気付き)
視点@・A・B
自分から干潟に入って生き物を捕まえたり,友達と遊んだりする。            
 (意欲の高まり)
・干潟の中で足をケガしたため,活動が停滞。
友達が捕まえたトビハゼを「 見せて見せて。」自分からかかわる
 (意欲の高まり)
進んで図鑑を広げて調べ始めた。
(意欲の高まり)(活動の工夫)
図鑑で調べたことを友達に教える。
「そうか!」
(気付きの広がり・深まり)
堤防から双眼鏡で鳥の観察する活動
GTから図鑑を借り,見つけた鳥のことを調べる。図鑑を指さしながら,友達に教えている
(活動の広がり・深まり)
       


・視点@・A・Bの姿を称賛する。
→自信を持たせる
・活動の中での発見を引き出し,称賛する。
→気付きを引き出す
・ケガの手当をする。
・干潟に入らずにできる活動を提案。
・生き物を見つけた児童とのかかわりを促す。
→新しい活動へと誘う
→友達との交流へと誘う
・観察したことと図鑑から得た情報をつなげながら発見したことを称賛し,見守っていく。
→価値付ける
→全体に広げる
ケガして思うように活動ができず残念だったこと,「また行きたい」という思いをすなおに発表した
(意欲の高まり)


<ふりかえりカード>
「そう言えば,前より少し泥が冷たくなったな。生き物も減ったみたいBちゃんが言うとおり,シチメンソウが赤くなっていたな
「秋なんだね。」
これからもっと赤くなるのかな冬になったらどうなるかな?
(気付きの広がり・深まり)(関心の高まり)
・ケガをして干潟に入れなくなってからも,友達とかかわったり,図鑑を上手に使ったりしながら,干潟の生き物の秘密を発見しようとがんばっていたことを称賛した。
→認める
・観察したことや図鑑で調べたことで,「なるほど」と思えたことについて紹介させる。活動の方法のよさ,気付きのよさを広げる。
→価値付ける
→全体に広げる
・季節による干潟の様子の変化について,A児が気付いたことを紹介させる。
→価値付ける
→全体に広げる












・発言,ふりかえりカードを基に対話し,思いや気付きを引き出す。
→認める
→価値付ける
本時の展開にもどる
     <評価を生かす〜次時以降へ>
○A児への今後の指導に生かす
・ケガしてできなかったことを冬の干潟探検でしたいと思いを膨らませている。干潟に入って活動する計画を立てると予想される。
・学校の周辺の様子の変化から,冬の干潟の様子を想像させ,自分なりに考えて計画を立てさせておく。
・実際に探険に行ってみると,風の強さ,冷たさ,渡り鳥の飛来など,季節による干潟の様子の変化に気付くだろう。これまでと同じ活動ではできないものもあることを実感させたい。対話しながら,渡り鳥の種類や動きを観察したり,秋に見られたたくさんの生き物たちをさがすことにより,季節の変化を実感できるようにかかわっていく。
○児童の活動の姿から,評価の視点(見取りの視点)を追加・修正
<単元指導計画における評価の視点> <本時展開案>
(見取りを生かした評価の視点の修正)
@秋の干潟でしたいことを考えている。
A干潟体験を生かして,必要な準備ができている。
B遊びや観察の工夫をしている。
Cゲストティチャーとかかわったことを生かして,生き物とかかわっている。
D友達と一緒に遊んだり観察したりしている。
E「今度は〜したい。」と見通しをもっている。
@ゲストティチャーや友達とのかかわりながら,活動している。
A道具をうまく使って,遊んだり観察したりしている。
B学校周辺と干潟の様子とを比べながら,観察している。
C干潟体験(夏)の時の様子と比べている。
D友達とルールを守りながら,遊んでいる。
Eルールや遊び方を工夫して,遊んでいる。
F身近な物を生かしながら,遊びを考えたり試したりしている。
G「今度は〜したい。」と見通しをもっている。
<実践後の修正>
@ゲストティチャーや友達とのかかわりながら,活動している。
A道具をうまく使って,遊んだり観察したりしている。
B学校周辺と干潟の様子とを比べながら,観察している。
C干潟体験(夏)の時の様子と比べている。
D友達とルールを守りながら,遊んでいる。
Eルールや遊び方を工夫して,遊んでいる。
F身近な物を生かしながら,遊びを考えたり試したりしている。
G工夫してかかわったことを話しに来る。
H友達のよさや気付きを生かしながら,秋の干潟で遊んだりひみつを見つけたりしている。
○単元指導計画の修正
・干潟体験の後,野鳥への関心が高まり,そのかかわり方のヒントを収集する時間が必要となった。
そこで,野鳥保存会の方をGTとして招き,野鳥やかかわり方についての疑問を解決したり,GTとかかわりながら野鳥を観察したりする場を設定した。そうすることで,児童の野鳥への関心がさらに高まり,冬の探険での感動的な出会いへとつながっていった。
○年間指導計画の修正
・干潟体験の時期を検討する。干潟探険の時期をもう少し早くして,春から干潟にかかわらせておくと,季節による干潟の変化への気付きも生まれやすくなるだろうと考える。
○干潟についての情報の追加
・児童が干潟で発見したこと,活動したことをマップの中に情報として加える。
以上のことから,本時間における抽出児童Aの姿は,評価の視点(見取りの視点)@ADを満たしており,「おおむね満足できる状況」と判断します。
自分なりに必要と思われる道具等を準備し,「もっと遊びたい」「もっと生き物を捕まえたい」「鳥も見たい」と名人や友達とかかわりながら,活動を工夫している姿が見られました。
この単元の学習に入った頃,干潟での活動に大きな不安を抱えていた姿と比較すると,はっきりと意欲の高まり,思考の広がりや深まりを見取ることができます。干潟での活動にも夢中になってかかわったり,自分なりの思いを実現するために工夫したりすることができるようになってきました。
前時までの評価や本時における評価を生かした細やかな言葉掛けが効果的であったと考えます。

この評価規準については,5時間程度継続して見取っていくべきのものです。次時以降も変容を見取っていくことになります。
また,本単元は帯単元となっており,引き続き冬の干潟探検等が予定されています。その活動の様子や工夫について,引き続き見取りながら,さらに伸ばしていくための適切な指導を行っていきます。そうすることで,さらなる成長が期待できると考えています。
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(3)単元を通しての評価と教師のかかわり〜「思考・表現」〜
単元や一単位時間の指導計画の中に,評価規準や評価の視点(見取りの視点),評価を生かした手立てを明確に位置付けることで,指導と評価の一体化を図る授業づくりに取り組んできました。
活動の様子や言葉、カードの記述等を手掛かりに,教師が積極的に問いかけたり対話をしたりしながら,児童の思いや気付きを引き出し,共感し,価値付けを行うことで,やる気と自信が生まれ,生き生きと対象とかかわる姿,自らかかわりを深めようとする姿が多く見られるようになってきました。
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